2012.05.22 / 2017.04.17update Back
すぎやま へいいち【杉山平一】(1914.11.2 〜 2012.5.19)
その神の黒板を前にして ――杉山平一私論 矢野 敏行
杉山平一先生のこと 中嶋康博
悼詩 中嶋康博
わが師田中克己は ハリー彗星を見ないで死ぬだらうと予言して
晩年に小さな小さな再来を天文台で確認した
杉山平一先生は
年ぶりにやってくるといふ金環日蝕を
来週どんな感慨を以て迎ふるべきか 考へてをられたにちがひない
人生は予測できない――ひとは自分が主人公だと思って生きちゃゐるが
死んでく時には みな誰かの脇役として死んでゆく
いつか命日となるその日を うかうかと過ごしてゐる私は
訃報のあとに訪れた「凶兆」の意味を探しあぐねてゐる
先生が体験した忘れられない惨事と 先生が語ったささやかな希望
新しい主人公たちに 暗喩や直喩のレンズで指し示されたクラリティは
木漏れ陽に笑まふ 地上の不思議な翳かたち
直接は見ることができないもの
みなが空を仰いでゐるときに 俯くことのできる人だけが知ってゐる
希望を語ることの 本当の意味を そよいで諷する一篇の詩
(2012年5月21日作 のち改稿)
旧制高校時代をすごした地、松江の宍道湖畔に平成17年、同窓有志によって建立された詩碑 (撮影:手皮小四郎氏 2012.11.10)
【参考】 中原中也賞