(2002.11.25up / 2022.06.29update)Back

たかぎ ひさお【高木斐瑳雄】『天道祭』1929 【全文テキスト】


詩集 天道祭

詩集 天道祭

高木斐瑳雄 第三詩集

昭和4年11月17日 東文堂書店(名古屋)刊

上製函 19.1cm×14.0cm 130p \1.20

装幀:横山葩生 限定200部刊行


国会図書館所蔵

書影  別に背の金文字版が存在する。


見返し

見返し


あそび紙 

献呈用あそび紙                        扉



詩集 天道祭

詩集 西暦一九二九年版

昨日の花

1.

渡り鳥

雨あがりの青い朝の空を
一群の渡り鳥がゆくのをみた
その陣形を美しく保ちながら
霜の光つた細枝をすかして………。

新しい世界へ


新しい生活をめつけに
新しい目的、希望に悦び勇んで
しかも驚くべき敬虔さと靭(つよ)い精神の気魄をもつて
そうそうといそぎゆく彼等の羽音をきいた。

──それは昨夜、最夜中に幾度かきいた声だつた
晴れをいそぐ雲脚のあはひを
月の光りをうけながら
彼等のいく群かが通りすぎていつたことであらう………。

季節の流れは一つの運命のやうに
彼等を呼びよせるのであらう
憧憬の南の空へ、瑠璃紺の海へ……
遥かに消えゆく彼等の方へ
私眼は釘づけにせられてしまつた。



2.

冬へ

それは夕暮の花々である
すがれたポプラの枝々の梢の幾枚かの葉つぱである
けふ一日の疲れも、そして破れた魂も
はしたなく 私自身も消ゆるか
このくれる秋のなつかしさ、なつかしさ
ああ そのしたひよる影か
去りゆく光りへの名残りの手か
ああ しばし翩翻と風にまかせよ
冬への踏切場の一本のポプラよ!



3.

野霧よ

野霧よ
青い稲田の隅々からのべた その優しい手
やがて豆腐屋の喇叭や おでん屋の煙りに
あるひは 散歩者の会話や 月の出の町に
たのしいBonsoirをするもの。

野霧よ
古びた城塞のやうな工場町をすりぬけ
喧燥な踏切を越え
まばらな星屑を身につけてやつてきたもの
ああ ここでも起こる Bonsoir(今晩は)!


盲ひの野霧よ
親一人 子一人の野霧よ
辻占売りの娘の拍子木に
あるひは 夕刊売りの少年の鈴の音に
侘しい風景のBonsoir!

野霧よ
戸締りした商人宿の掛行燈の下で
または墓石のやうに冷たい石造りの家の扉口(とぐち)で
野良犬のやうにうずくまつて
いくたびもいふBonsoir  Bonsoir!


4.

落葉


水車の唄をきく朝である
影のやうに五六枚の落葉が
空中をすべつてゆくのをみた。

無数の細い水脈(みを)のある空です
光りのなさけ深い眼が彼等を見送り
そして見知らぬ小鳥達は
美しい言葉で彼等と呼び交したことであらう。

すつかり裸になつたポプラ並木をとほく
市外通ひの青バスのやうに
たのしいドライブをつづけていつた落葉よ
流れゆくものよ、美しいその影を私は空にもとめる。


5.


孤り者の唄

冬の空よ
枝々をはらはれたアカシヤが歩いてゐる
さびしい うす曇りのカドラン!

独りものの口笛にあはせて通りすぎてゆくもの
吹雪の日を、霙ふる日を、空(から)つ風の日を
しきりなく しきりなく見まもつてゆくもの……

ふところ手した私までが
いつまでもどこまでも アカシヤと共に
歩いてゆくのではなからうか
さびしい うす曇りのカドラン!


6.

竹林

竹林は静かに朝の空気を喰べてゐます
微風は 時折 氷雨(ひさめ)の跫音で忍びこみます
鶏は世紀(とき)を無数の竹の葉によつて晴天にまで伝へます
まことに竹林は静かに朝の空気を喰べてゐます。



7.

ポプラ

野分けは荒つ削りな男だ
十一月の原つぱをむじんに馳せる馭者だ
彼に逆つて歩いてゐるポプラを私は見た、
銀の酒盃(さかづき)のやうな小さい月がさえかへつてゐる下で。

かつて 海霧のなかで
夢おほい初春の唄をうたつてゐた散歩道のポプラ
また、真夏 その美はしい明暗のうちに
多くの疲れたものを憩め、勇気づけたもの、
秋の夕暮の空を飾つたのも束の間、いまは
名残の幾枚かの葉つぱをうちふりながら
怱忙としてゆきすぎる虚無への風にひとり闘ふ。


地上に刻む彼のいり乱れた影像よ
青銅の上に腐蝕せられた古代の風景のやう
彼は砂埃と落葉の騒音を遠く
天心の月とあゆんでゐる、あるいてゐる。


8.

散つた木の葉の集団

散つた木の葉の集団は
夕暮の踏切の傷々しい展景だ。
誰も彼も生きの日の繊(ほそいと)を
ここで くつろがせ、或は絶ちきつてしまふ

散つた木の葉の集団は
夜業への洋燈(かんてら)をもつた鉱夫の影か、


星はまことに冷たく遠く
生活は、労働は、運命は、限りもない。


9.

回想

冬枯の木立の間を歩くのは好きだ
落葉をふみながら
残んの木の葉がいまにも散りそうに
物珍らしそうに眺めてゐる下を、
夏でも寒いところだつたのに
細技の網目模様を透した茶畑には白い花
のぢこの夫婦者のま昼の唄!


冬枯の木立の間を歩くのは好きだ
ここでは堤防の一線にまで逐はれた
野霧を感ずることが出来るから、
藁束の鋲によつて祝はれた野の安心が
また更に私の展望のたのしみとなるから、
落葉の中に埋もれた木の実よ! 烏瓜のたぐひよ!
新鮮な草の芽立の挨拶よ!

冬枯の木立の間を歩くのは好きだ
落葉をふみながら
(これがどうして自分の跫音だと信じられやう)
回想よ、卿は木洩れの空の寂(さ)びのある風の音
私の心に落ちて、やがて遠く去りゆくもの
ああ 私の影よ
私の壊しい過去よ、冬枯の木立よ!



10.

霧雨

霧雨のふつてゐる落葉樹林
ぼうつと気流の波はうちつけ
たちまち眼界を髣茫(ほうぼう)たる海原に化(す)る
彼は海底の藻の類であるか。

野鳩がないてゐる
誰もこの落葉樹林からだとは気付かない
そんなに彼は忘れられてゐる
ただ 美しく並んだ麦の芽生えのほかは。

霧雨はふりつづけてゐる
すぶ濡れの落葉樹林の上に


かぼそい灯の生活(くらし)の上に
不思議に明るい世界が
そこから燃え上ってくるのを感じる。

霧雨は幾日もふりつyいた
樹皮と樹皮の部厚な沈黙
そこで季節の戦闘準備は出来上つた
貧窮と苦錬は発芽の一勢射撃だ
晴天を向へるのも明日だ、待ち遠しいのも明日だ。


11.

風笛


風笛だ
それは孤児の笛だ
金星の落ちやうとする日没時なんです
松の太い幹、そして高い潮騒(しほざ)いのする
海の海の洪水の前。

風笛だ
たれも死んだもののやうに聞いてゐる
霊と懐疑の魔性、天国と地獄の唄、
巧みなる 巧みなる颶風の先触れ。


12.

一時よ

一時はさみしい時のしらせだ
歓楽のあとの妙にしらじらしい一瞬(ひととき)よ
今日は昨日と豹変し、明日は今日となつてしまつた。


一時はさみしい時のしらせだ
家出した息子を あてどなく待つ母におろされる
失望と、あきらめの やるせない臍(ほぞ)だ。

一時は墓場へいそいでいつたよ。
うつろな姿で 街のなかの森のくろ 海辺の墓へ
尻尾をうしなつた犬のやうに………。

一時よ!
だが おまへは絶望の谷からすつくと身をおこし
その健気な出発の合図を告げたのではあるまいか
人々よ 耳かたむけ給へ
やがて二時となり三時ともなる あの輝かしい反響に
のぞみと栄光を齎す 純粋なる一つの言葉に。



13.

昨日の花

雪解の野つ原はかけてゆく陽射(ひざし)の斑点か。
夏に別れた秋のやつれた面影か。
林や、広場(ぽうち)、また竹薮の径などに
匂ひなつかしみ嗅ぐ昨日の花だ。

雪のさかんなストラツグル
笞うつやうなホイツスル
彼等のはけしい行進歌
いま、彼等は大地の無名戦士の墓に眠る。



14.

冬眠

終日 雪解の点滴の音をきく
たのしい彼女達の唄が
円い光りの礫(つぶて)にのつて
障子に虹彩(にじ)を描くのを。
どこか遠い紬車の音をきく
「母上のをしへ給ひし歌」か
消えぬかに縫ふてゆく
情愛ふかいメロデーを。

忘れたやうにたたくトロンポン
小石をころがしてゆく細い流れのささやき
井戸車か 谷間を通る空車(からぐるま)の音か
そして そのあとに続くのは点滴の音だ


終日 私の仕事場は彼女達でみたされた
私には深い冬眠の一日だつた
私は私を充分にいたはることが出来た
さあ、障子を放けて外気をいれやう。


15.

宝石

降りやんだばかりの雪
その雪のなかに
無数の宝石の輝くのをみた。
──いまこそ容易に
私はそれらを手にいれるここが出来る──


彼女達はあこがれの地上へきたのだ
彼女達が悦びで どんなに有頂天で
どんなに鷹揚であつたか………
だが もはやきらびやかな自己陶酔のうちに
翼を忘れた彼女達だ。

星は素晴らしい感激のうちに輝いてゐるが
風は もはや遠くへゆきすぎてしまつた
私の仕事場のあかりのみが
彼女達をみまもつてゐるのだ。

無数の宝石だ
無数の色彩の厳粛な征矢(そや)だ
(啜り泣きがきこえるのはうそか)
凄いほど清い ひんやりする生命だつた。



16.

枯草

屋根の上に草は枯れたまま
北風はつらく
この細身の男を吹いてゐたよ、
すけすけにあらされた庭の木立をすかして
雪もよひの空のアラベスクの中に。

愚痴ひとつこぼさず、ずいぶんがんこに
ふみとどまつてゐるとしかみえない彼
雪の中からでも首をさしのばして
紫色の地平線を
いちはやくみつけだそうとしてゐた彼、


(とある川縁の夕暮につつまれ
 来ぬひとを待つもののやうに)
彼は氷雨の中で
ああ なんとしよんぼりと立つてゐたことであらう。

屋根の上の一本の枯草よ!
途方もない孤独の指針よ!
土蔵は考へをまとめやうとしてゐた
風景は彼をとりまいて生きてゐた
そして、私は明日を
彼の根もとに新らしい芽立ちを信じたくなつた。


17.

残んの雪

村のどの小径にも
容易にとけない残んの雪があつた
虐(むごた)らしい乱れた足跡が、トラツクやサーべルの影が
ああ それらがそのまま凍てついてゐる。


善良な農民達の上に下(おろ)された あの致命的な計画!
その上におろされた司法権の乱用
村のでの小径もふみにぢられ
どの家庭も神社も、そして小学校さへも穢された、
刑務所から無言の風が吹いてくるのだ
竹林にも桑畑にも、寒ざらしの畑にも河原にも
彼等の尊い犠牲者の声が叫んでゐるのだ。

あの淋しい夕餉の灯を見給へ
子のあの眼を、老いたる母の涙の眼を、
とぼそい灯ととぼそい灯とで結ばれた村の夜の灯を、
考へて見給へ
あのにがい屈辱の花が
この傷ましい残んの雪の下から
きつと花ひらくであらうことを。

容易にとけない残んの雪だ
灰色の血塗られた残んの雪だ
虚無の風が吹いてゐるのだ
村中はひつそりと氷の刃をのんでゐる。



18.

電柱

ひよろひよろと手をつなぎあひながら
果しなく歩きつづけてゐる電柱よ!

けふ一日の疲れを こころよく味ひながら
私が町を出はなれるとき
まつさきに私を向へてくれるのは奔放な君達だ

あの みのりにみのつた稲の垂穂!
あの 崇厳きわまりない高澄みの空
ああ そこにこそ美しい個性ある君達。

蒼白い月と ことに鋭い針をもつた星々の花
どこからともなく落葉をもたらした野分け!
おまへは風つ子に逆ひながら
いかに私の足をはやめさしてくれたことか、


また 降り積つた雪のなかから
滑稽なほど細身となつて微笑んでゐたかを知ってゐる。

あるときは また君の足もとで
名もしらぬ草の芽をみつけたこともあつたつけ
おお いつちさきに春を知らしてくれた君の厚い好意!
町なかを歩いてゐるとき、何よりも私を悦ばせてくれるものは
屋根屋根を越えて 黙々と
郊外へ向けてひたはしつてゐる君達の姿だ。

蝉のくる日 また百舌鳥の訪ふ日
雀や燕 どうかすると鶺鴒などと話してゐる君達だ
おお 太陽と共にこんなに輝かしい君達をみたことがない
ゆるやかに弧を描きながら海の方へ消えてゐる電線
山や谷をこえて見知らぬ風景の中へ
ひよろひよろと手をつなぎあひながら
相も変らぬ瓢軽な旅をつづけてゐる君達だ。



天道祭

19.

光り

光りが噴き上つてゐるのをみよ


そして光りが碧落(あほぞら)から静かに降り注いでゐるのを
巨人の脈愽つ胸板のやうな山巓!
そしてその山影の浮んだ空中、
その美はしい傾斜(すらうぷ)、ゆるやかな曙線(ダーンライン)!
なんどいふ純一な炎だ
樹海への光りの喇叭、れいろうの風の進出
そして草木、鳥獣、昆虫類への一勢のめざめ
信三へ肺臓へ、反射の反射だ、
日の出まへの 燦たる一日の光栄だ。

燃ゆる力よ、熱意よ!
光りの馭者の軽い鞭の響よ!
魂心の勇気の鈴の音いろよ!
数しれず書かれた隠された言葉の意味、
おお出発よ、我等の仕事の上に花咲け。



20.

青さに浸つて私は歌ふ

おお 限りなく青い稲田
日暮れ時のま青な風が
私のまわりを吹きまわる。

水車に立つた男の高い額に
草採りの女の円い背に
藁屋根に傾いた向日葵の哄笑に
また唐人黍の道を越えた納屋の鶏の羽波に
蘆の葉つぱの風のブラボウ!

夕餉か あるひは野風呂の煙であらう
素朴なそして清品な情愛に包まれたやうに
私は至極さつぱりした夢をゆめみる。

おお それらを越えて吹いてくる風!
青い稲の葉の風のジヤズバンド!



21.

小刀

破れた帽子や 古びた時計が
なつかしくなる秋だ。

青い林檎の皮をむいてゐると
ひとりぼつちの自分をみいだすのだ。

だまつてゐろ
耳をそばだてよ
ひんやりとした秋の小刀(めす)が私の心をかすめる。


22.


秋の唄

 影です
やぶけた大きな葉の累積です。

 高い空です
いちぢくの赤い果実が落ちそうです。

 とりいれどきの野良が見えるでせう
雀の散弾が、演習の兵隊さんの帽子(シヤツポ)が……。

 影です
可愛い光りの子供達の慰安所です。

 お祭です
葉鶏頭の、紫苑(しをん)の遠望です。


風のバガボンドをきくでせう
洗濯物の帆前船、かつきりした海の青……。


23.

秋の習作

芒の原つぱの曲りくねつた道のやうに
妙にねぢれた風向きよ!
見窄(みすぼ)らしい柿の木の門をあとにしたとき、私は
ひようひようと渡る風伯(おんみ)の伴侶(みちづれ)だつた。

──百姓家の日向で婆あさんが紡ぐ糸車にも
葉鶏頭の中へもぐりこんでいつた幼な児の蹠(あしうら)にも
私は思ふ存分さわつてみた


そして 私達のあとから気紛れについてきた木の葉を
女の児の教室へ投(ほう)り込んでもやつたつけ
製糸工場の広場で誰かが投げた小さい帽子を
よりたかく高澄みの空へと投げてもやったつけ。

だが ふとかはつた風の異様な広がりよ!
そして それにつづいた長いながい沈黙よ。
私は涯しない空の秋の習作の中の旅人のやうに
川のほとりに落ちて、夕暮の芒の唄をきいてゐる。


24.

十月の田舎道


十月の田舎道は素晴らしい美はしさだ
祭の赤堤灯のやうに躍つた心を抱えた女や若者や、
みのつた稲の穂の上にふりそそぐ
放浪者の烟草のけむりでみちた青い空や、
それらは垣根の小径から小径へ
恋の金木犀の香をふりかけてゐる。

ああ すましこんだ女房(かみ)さん、亭主さん
コスモスはあまりに清楚です
ああ 可愛いらしい赤ん坊よ
葉鶏頭はあまりに騒々しいです
社殿に集つた雀のやうな老人や老母や
無花果は蔭の方が実に美味しいものです。

百舌鳥が遠望して叫んでゐるやうな男の魂や
蕎麦の畑の月あかりのやうな女の柔かい胸や


杜(もり)には黄昏の潮騒を遠く
恋路のすべてに下される沈黙のみが
又 新らしい犠牲の妖園への跫音に耳を傾けてゐる。

ああ そこへまで走つてきえてゐる田舎道よ
霧が幾重ものかあてんをひくとき
ああ 動いてゆく二つの心恍けた影よ!
その道だけが知つてゐる その行方へ………
ああ ここを十一月の旋風が泣き叫び
狂ひ走つてゆくのもしらずに──。

だが 麒麟草の飛んでゆく十月の田舎道は
すばらしい美はしさだ。



25.

秋の郊外

田舎はいまや楽しい夢に落ちてゐる──。

藁屋根の母家は正午でも朝露に染まつてゐるし
うらうら柿の木の下の納屋では鶏が美しく声たかく
椎の頂(て)つぺんでは百舌鳥の瓢軽な辻占売の拍子木、
そして茶山花の花々を遠く
風に群れ騒ぐ 小学校のコスモスの垣
新壁いろの黄いろい稲田が松林の向ふを塗り潰してしまつてる、
ほお! 僕は けさ霧の中から声かけてゐた主婦(かみさん)のやうに
微明るい眉で呼びかけやうよ
はろばろと はろばろと。



26.

十月の緩徐曲(じえつと)

君は知つてゐるか
これら濃やかなる緑の木の葉が
やがて十一月の風の言葉の魅惑(しやるむ)に
いかに華麗にもえ栄るかを、
そしてまもなく落葉の上に
また新らしく来れるものの、あの無垢な静かな挨拶を、
森中 深閑とした息づまるやうな、みちみちた黙祷の瞬間を。

君は知つてゐるか
刈りとられたあとの畑をたづね
渺々たる野つ原を通つてゆく風が
いま その静かな緩徐曲のうちに


落穂の畑の雀達をむら立たせ
空に溺れた紫苑の花々といつしよに
黄金蜂を揺ぶつてゐるのを。
ああ かくてわれら
明日への可憐な希望(のぞみ)の夕暮に
すつぽり被はれてしまつたことを。


27.

貧しい親子

野天の疲れも忘れて
鉄砲風呂の中でなほも眺めてゐる子供のあの瞳!
(空には凧がうなつてゐる)
はるかにはるかにうちみやるあの瞳!
冷んやりした藤椅子の腕をつかんで私も眺める。
(妻よ 幾日かこうした侘しい風景画を厨からみるでせぅ?)



28.

十月の風の美はしい午後だ

この頃一層低くなつた寺の屋根や、村の木立
どこへ行きくれるか知れない田舎道に立つて
いつも私をとらへるものは──
曇り日でもなほ実に明るい垂穂の稲の野面のやうに
輝き渡つた小作達の赭ら顔だ!

忍従と労働との素朴な生活が育成したあの虔しく鷹揚な顔だ、
たかい秋の陽射を一杯背に浴びながら
うしろなる 妻子の影をたのしみながら
君はひとり いまさら永い労作の生活を空に描くのだらう、
風伯(かぜ)がつたへる孫や姪の子達の善良な成長を
黄金いろの垂穂の稲の盛んな言葉の中にみいだすのだらう、
流れてゐる十月の風の美はしい午後だ。



29.

村の火の見や寺や役場の銀杏の木を越えて
宇宙がじつと魂をみつめてゐるやうな空・空・空………
ああ そこでこそ私は
あのやんちやな百舌鳥のやうに
やむにやまれぬ心命の唄の序曲を奏でることが出来る
そして、まつしろな乱菊の高い薫りを
古雅な精神のやうに味ふことが出来るのだ
ああ 秋のいのちの空・空・空………


30.


天道祭は明日からです

芒(のばな)を渡るのは風の音でせうか
百姓家の白い障子をうつした池の汀の家鴨の対話でせうか、
あるひは 十一月の空いつぱいひろがつてゐる
稲刈りの農夫の楽しい生活禮讃でせうか、
門口のたかい山茶花に訪れた蜂の群の挨拶でせうか、
胡桃の実はたかく空に投げやう
山茶花はいつぱい木に飾らう
そして、そこから垂種のくにの十一月の稲扱機械の讃歌をきかうね。

──妻は機械をふみつづけるでせう
──夫は畚(ふいご)に米をみたすでせう
そして、その傍に
子供は垂穂の稲を玩具にするでせう


菜つ葉はどこまでも単彩で
一刷毛ひいたやうに だんだんだ
そして、二度目の馬鈴薯は莟をからげ
青首大根は せいせい
天道祭は明日からです。


31.

十一月の風

赤土の山肌をこえて高澄みの深碧(そら)に注ぐ十一月の風よ! 限りない深碧には また限りない卿の波浪の爽やかさ決よさ、
昨日は海を蹴つた勇者、今日は椎の木の梢に優しい母の謡(うた)をうたふもの……。
糸車を操る老母の手先を覗きみし、破れ障子に口笛次くは
 可愛いらしい悪戯つ子だ!


刈りとられた野つ原の子達を町への電線のやうに有頂天にし
雀の散弾を吹き飛ばし、
或は都市(まち)のまなかの摩天閣の赤旗をすべつて
 十字街の交通巡査をいぢめるものよ!

走りゆくものよ、深い秋へと身を溺らしてゆくものよ
果てしなく私を誘惑(かどわか)す山向ふの景物へ
まんまんと流れてゆく空の十一月の大川よ
揺籃の中の夢みる人のやうに、私は
鈴懸の木蔭の椅子で想ひにつぐ想ひで流されてゐる。


32.

自慰


凧を見る夕暮は愉楽(たの)しい
浴後の朗らかな精神のやうに
一日の放たれた休息が沁みじみと五体をめぐるとき
子供へのあこがれが──
するすると糸を伝はつて昇つてゆき
ぱつと空いつぱいに拡がるのを、ひとり魅陶する。
ああ ふるさとの空へとつづいてゐる
この長い秋の夕暮の光芒よ!
一つ 二つ 三つ………
杳かに見はるかしてゐる凧よ
風に応酬(いらへ)をしてゐる健気な凧よ
おまへをみることは私にとつて
一つの愉楽しい慰めだ。


散華集



33.

夕霽れの空はまんまんとひかれた弓のやうだ
麦は大地深く何物かを狙つてゐる、
百姓は雨具を捨て 光れる野面に鍬をやめた、
風は西へ さわさわと落ちてゐる
おお 驚異にみちみちた静寂よ!
凄まじい いぶきで、太陽も私もかたづをのむ。
緑湍のやうな流し板の上で
麦は厳然と大地に何物かを狙つてゐる。



34.

陽は麦畑に落ちてゐる

私をしつかりとらへて何も云はせなかつた落陽よ!
麦の上に ひらけた野の麦の畑に、
雲雀よ 黙してゐた野雲雀よ!
どう私はこの心命の魂を歌ふたらいいのであらうか
どう私はこの生命の冠を祝福したらいいのであらうか

青葉いろにまんべんもなく降つてゐるのは
 雨なのであらうか?
ひらけた野つ原の麦生の畦に腰をおろして
 私はかるい眩惑(めまひ)を感じた。
燕の抛物線はいかにも巧みに失はれ
かつてここを行き過ぎたであらう菜種の風陣のやうに


陽はさんさんと私の上にふりかかかる。
ああ 空に溺れた揚雲雀よ
夕暮前のひとときを力限り唄ふものよ
落陽だ、実に素晴らしい落陽だ、麦の上に
私も唄はう、唄はう力限り………。


35.

言葉

ある日 百姓は輝く木であつた。

刈株ばかりの冬の田甫へ
磨ぎすまされた彼の第一の鍬の鮮かさ


展望よ 麦生をこえた波うつ菜種の進軍
おお おんみ輝く木よ。
労多き幾日かの後で
孫を伴れて町へゆく彼を見た
どつかで雲雀が啼いた、また啼いた
「坊!雲雀が渡つてきたぞ!」
輝く一の木のやうに
彼の言葉が晴れた空をみたした。


36.

一本の木

若葉の木の下に坐ると
私の身体は一本の木となつてしまふのだ。


その幹やその枝々や、無数の葉つぱが
それぞれその機能を忠実に示すとき

思念(おもひ)が空にひろがり 空にあふれ
力が集り 凝(こ)つて沈黙へと下降するのだ
光りが強ければ強いだけ、空が碧ければ碧いだけ
それらは清徹な沼のやうに その深い鏡の中に沈んでしまふ。

風が私を揺ぶるならば
遠い国々を経めぐつてきた船の旗のやうに
思ひ出の唄を心ゆくばかり歌ふであらう
また 王子やミカドを讃美する合唱で身体をゆすぶらう。

四月の驟雨(シヤワー)よ、五月の麦雨よ
そしてまた六月の梅の実いろの風景よ


私は八月への季節の馬車が
多くの私達の間をすりぬけてやつてくるのを感じる。

紅鶸が曠野のおもひをつたへた日もあった、
野雲雀が蒲公英や菜種のことを
麦畑の巣の雛に語つてゐるのを聞いたこともあった、
一番槍の燕が海越えの日の出来事について
忽忙の中から話しにやつてきた日もあつた、
そして谷の郭公(ほととぎす)がザボンの月への恋々の情を
訴へにくるのもまもないことであらう。

鴎のやうに小さかつた帆が、忽ち大氷山となり、入道雲となり
私の行手をふさぐとき
私は僧侶のやうにその身をかためることを忘れないであらう
さつと砂陣を蹴つての襲撃のときも
私は身をもつてそのさなかに突喊するであらう
そして もしも傷ついたならば
その局所を庇ひ勇敢に戦ふことを辞しないであらう。


晴れかがやく日! 私は凱旋将軍のやうに
鷹揚に鷹揚に 恵まれた日の幸福を祝するであらう、
おお 私を坐らせ私の眼を安らかに瞑らせる若い木立よ
ここにこそ、私は私の心の姿をみるのではあるまいか。


37.

そこに私は廃れた寺院の壁を思はふ
そして連翅と天女和讃の図を描かう
そして大理石の聖瑪利亜(サンタマリア)をそこに置かう
赤い林檎をその掌に
晴天の蒼穹(あほぞら)を木の間に見せ
頭上に輝ける太陽をちらそう。



38.

雨だよ、若葉を浸す雨だよ
それは蒲公英のやうにはしやいだ娘つ子だよ
或は死んだ子の笑顔でもあるよ!
ただ漠然と一枚の若葉を噛みながら、噛みしめながら
私は 私の生涯(らいふ)考へる──。

悔だよ、緑素の苦さだよ!
だが また 風のやうに、光りのやうに
また浪のやうに
自然と明るい、いのちを運ぶ雨でもあるよ!



39.

青い麦の風

どつとぶちあたる青い麦の風を見給へ
新芽の意気が素直な心情の風船玉となつて
高い空を ふりふり歩いてゐる五月の野つ原を。
あるひは花の吹雪のまきぞへをくらつて驚いてゐる蝶々や
素晴らしい麦の畦のブラツシユの中で
子供を抱へた雲雀の親の青い瞳を、また
粗末な矢車の傾いた 村の遠望を。

どつとぶちあたる青い麦の風を見給へ
一番槍の勇敢な燕の一線を、
谷から巨木にうつつた郭公(ほととぎす)の肩にうかんだ昼の月を
あるひは郊外電車の長い驚笛が夕腸を寂びた物思ひで燻すのを、
百姓の息子を都へ誘惑する不思議な手を
娘も家出の約束をその風に托するのを。



40.

五月

五月よ
土塀の上に咲いた五月の空よ
一本の馬酔木(うまごやし)の上の………。

土を運ぶ燕の唄声よ
巧みに虫を捕へる抛物線よ
果てしない海洋・空は夢みてゐる。

なにかしら うちよせてくる
明るい帆影か、たのしい別荘(ヴヰラ)の微風か
黄金いるの蒲公英(ダンヂライオン)! 太陽よ!

五月よ
土塀の上に咲いた五月の空よ
一本の馬酔木の上の………。



41.

六月の径

麦畑にきえる六月の径よ!
私の思ひはいつもそこにある
あのたかい緑の唄、力の若さの象徴(しんぼる)、
あのあふれる光り、悦び、そして強い意思……。

彼等の畝がつくる美くしい並列線よ!
彼等の上に描かれる美事なその波状の気層よ!
「はつ夏の風景は彼等の向ふに待つてゐる」と
そう雲雀はたのしい繰り返へしを私に告げる。

六月の径よ、浪曼の緑よ!
私の思ひはいつもそこにある
あらゆる羈絆をぶちきつた真の自由、
全生命的な成長力の凱歌。


ああ 帆走しる行進曲!
青燕の鮮やかな赤、長い一日の終焉よ!
のぞみよ、ゆるやかな一本の径よ!
そこにみる、和やかな私の姿。


42.

今日 風は燕尾服を着て歩いてゐましたよ
麦畑を越えた向ふの棕梠の花房を一寸気どつて見てましたつけ。
又 桑摘みの妻君や娘達にもからかつてもゆきましたつけ、
そして 逐に 竹藪でざわざわ
窮屈そうに服を脱いでゐましたつけ。



43.

深い空の精神を感じる

深い空の精神を感じる。

豌豆と麦の畦の端が
赤土の断崖に並んでの物語、
花の吹雪に興じた風がさ
なんといふ虔しさで腰をおつてゐることであらう。
ああ そこにはみえない百姓の沈黙があり
睦じい雲雀の夫婦の移住があり
呑気な蝶々の揺曳が訪づれてゐやう………
なにもかもそこでは
すつきりと空と胸をあわせてゐる──。



44.

水菜

雨に濡れた村の人家のやうに、又森のやうに
畑に簇つた楽しい家族の水菜よ!
すいすいとその千手の触手を巧みに上げて
 誘ふもの さそうもの……
──私はつとめの帰るさ 二重虹を見ながら
てんとう虫のやうに
この不思議ないろいろの心の姿をした手を訪づれてみた……
まあ どの手もどの手も
晴れた空のいろで、風に乗つて
何んの苦もなさそうに歌うたつてたよ。



45.

寒椿の散華集

それは散つた梅林の花葩か
広場のひかげの傾斜に沿つた残んの雪
眼路は芽立ちの草生の円い丘からすべつて
愉快な棕梠の葉の破れ団扇が
海の展望にふるへてゐるところ
そこで 私の生垣の寒椿の花を
遠くとほく投げやうと思ふ
紺碧の空に向つて
三月の紺青の海の上に、
詩人の一つの貴い慰めごとのやうに。



46.

薄倖

私はみた
瘠せた一本の菜種を、塵芥捨場の立札の下に
いまや戦ひ疲れた子を慈しみ抱えるやうにして
遅ればせにやつてきた黄ろい太陽の手を。

私はみた
阪東太郎(なつのかぜ)が麦畑の雲雀の巣を騒がしてゐるとき
塵芥捨場の一本の瘠せた菜種が
悲惨と不遇の生涯の報告をしてゐるのを。

私はみた
破れたゴム靴がその菜種の花冠を見上げてゐたのを
そして まもなくそこに繋がれた牛によつて
その姿が失はれてしまつたことを。



47.

村の祭の日

風致林の向ふで
紙凧は昼間の月のやうだ
黄土層の断面を背にしかれた掛け小屋
そして賑ひを沸騰さした野天商人
また香具師(やし)たちももはや消えさり
路傍の幟のもがはたはたと夕陽を叩いてゐるばかり……

私はいま 真実 揚げ雲雀ほどに心朗らかだ、
麦の畦道をえらんで
わざわざ遠みちしての つさめの帰るさである
子供達も走り帰つて待つてゐるであらうし
お風呂も暖まつてゐるであらう、
おお その時だ、私の頭を
わいわい騒ぎながら忙ぎながら
行きすぎさつていつた雀の群をみたのは、
自づと早まつてゐる私の足幅をみるやうで
ひとり ほほえんだ私だ。



48.

花火

花火だ 夕暮の空の花火だ
哀れな芥子坊王は唖者のやうにそれを眺め
堤のあざみは壊れた首振人形のやうにそれを眺めた
勤め人の私はしよげかえつた蝶々のやうに
果しない海の方へ、空の方へ
そして貧しい妻子の方へ………
ああ 花火よ 花火よ!
せめてわれらの夕餉の団欒の上に花咲いてくれ。


49.


向日葵

蜩が鳴きしきる、鳴きしきる
機織工場の小女を覗いた向日葵が
渺と流れてきた海風にぐるりと四辺を眺めた。
大きな夕焼だつた。


50.

矢車草

矢車草よ
おまへははなんといふ明るい野天の思想家だ
君は青い空の心と広い風の言葉で私達に物語る


君は沸騰する向上の精神を馬の鬚(たてがみ)のやうに靡かせ
まつしぐらにその陣頭に立つ。

矢車草よ
おまへはなんといふ夢多い空想家だ
君は新月に触れる指と雨に囁く秘密とを知つてゐる
それでいて風を切つて海を越えてやつてきた燕のやうに
勇敢である、清楚な英雄である、剛快な船夫である。

矢車草よ
おまへはなんといふ革命肌の女だ
君は堰を破る奔流の血と虹のやうに哀憐な情愛をもつてゐる
君はオルレアンの少女や、エリザベス女王のやうに
自分自身の上に風雲の来るのを待つてゐる。

矢車草よ
風むらのなかの矢車草よ


私は英雄のやうな気概を私の心の上に昂める
そして私は次の航海への海図の上に
君を供へる老ひたる船長とならう。

天道祭 畢


詩集 天道祭 目次

昨日の花

1 .渡り鳥
2 .冬へ
3 .野霧よ
4 .落葉


5 .孤り者の唄
6 .竹林
7 .ポプラ
8 .散つた木の葉の集団
9 .回想
10.霧雨
11.風笛
12.一時よ
13.昨日の花
14.冬眠
15.宝石
16.枯草
17.残んの雪
18.電柱

天道祭


19.光り
20.青さに浸つて私は歌ふ
21.小刀
22.秋の唄
23.秋の習作
24.十月の田舎通
25.秋の郊外
26.十月の緩徐曲
27.貧しい親子
28.十月の風の美はしい午後だ
29.空
30.天道祭は明日からです
31.十一月の風
32.自慰

散華集


33.麦
34.陽は麦畑に落ちてゐる
35.言葉
36.一本の木
37.春
38.雨
39.青い麦の風
40.五月
41.六月の径
42.風
43.深い空の精神を感じる
44.水菜
45.寒椿の散華集
46.薄倖
47.村の祭の日
48.花火
49.向日葵
50.矢車草

小跋

装飾 横山葩生

目次 完


小跋


 天道祭といふのは、俗にいふおてんとう祭りのことである。名古屋の東郊一帯の丘、八事山の霊地、天道山の祭りな のである。気づかはれた厄日もすぎ、 百舌烏がけんけんなきだすと、豊饒な稔りの日が悦びに輝き初める。そうした十月の風景の中を動いてゆく郊外電車の中に、逸早くみるのはこの祭 りを知らせる粗末なビラなのである。
 付近の山々、谷々に、興正寺、半僧坊、高照寺等の山門、伽藍、塔宇など散在し、美しい山の断面や地層の面貌や、傾斜の妙味などが明るい空や 風や雨に呼応し、畑の麦、蕎麦、 野菜や花卉、野生の多くの花々との、素晴しい大調和には深く私の血肉となり、しらず私の詩が、またこれらを育てた赤膚の禿山の粘土層の上に咲 き出たといふことも、 なにかの深い縁と考へて、ここに「天道祭」と名づけ、郷土への懇ろな挨拶となし、ひろく既知未知の先輩及び友に送る所以である。

 「枯草」「電柱」「一時よ」「残んの雪」「宝石」「冬眠」「五月」は最も近く。「光り」「野霧」「花火」「矢車草」はこれ以後のもの。 そして「十月の田舎道」「水菜」「十一月の風」「ポプラ」「言葉」「空」「春」「一本の木」は比較的に古いもの。凡て大正十年以後十ケ年の作 中より自分の好みにまかして択び出した。

 おてんとう祭・太陽禮讃・万物禮讃・神と生物との温い握手・もつとそれ以上の力と熟と美、詩はそれらを言霊の美 妙ないのちをもつて交流する。 私はここにこの詩集の重心ををく。私はこの詩集がこの表示の一部を充分にはたしてゐることを信じ、この厳粛なる祭典の言葉にかへる。 終りに横山葩生画伯が帝展出品画の製作直後の旺溢せる力をもつて、 この書の装幀の労を煩したことを厚く謝するものである。


奥付


凡例

表記は仮名遣ひの不統一などすべて原本に従った。ルビは( )内に記した。
新漢字のあるもの、明らかな誤植はこれを改めた。詩篇には頁の代はりに番号を新たに付した。すべて原文画像に就いて参照されたい。(編者識)


コメント:

四季派の外縁を散歩する「名古屋の詩人達 その1」
Memorandum :高木斐瑳雄のこと


たかぎ ひさお【高木斐瑳雄】(1899〜1953)

年譜


Back