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村瀬藤城 筆跡


村瀬藤城 掛軸 (2024年08月際遇)


津南僑寓幾旬強
柳拂狭斜鴉可蔵
自有丹心勤夙夜
豈無洗氣養文章
帋窓補破新詩稿
石鼎吹香舊薬嚢
小留聊成游烏汁
家山三途未全荒

浪華寓窓書事 褧



津南(大坂日本橋)の僑寓、幾旬強
柳拂ふ狭斜、鴉、蔵すべし
自ら丹心有りて夙夜勤む
豈に氣を洗ひて文章を養ふこと無からんや
帋窓、破れを補ふ、新詩稿
石鼎、香を吹く、旧薬の嚢
小留(僑寓して)、聊か烏汁(墨汁)に游ぶを成す
家山の三途(ここは三径の謂)、未だ全くは荒れず

浪華寓窓書事 褧

『藤 城遺稿』「初稿」冒頭に異稿「辛未春浪華日本橋僑寓書事」あり、茲に書 き下しを併載する。

辛未の春、浪華日本橋僑寓にて事を書す

津南に笈を卸して五旬強。
柳巷に幽を占めて鴉、蔵(かくれ)るべし。
自づから素心有りて寝食を忘る。
寧(な)んぞ英気の文章を養ふこと無からん。
紙窗、破れを補ふ、新詩稿。
石鼎、香を吹く、旧薬の嚢(のう:ふくろ)。
游息(憩ひ)聊か成る、小留計。
家山の三逕(隠者栖処の謂)、未だ全くは荒れず。

【欄外】
信侯(牧百峰)云。頷聯(3、4聯)は、工力ともに足る。
又云ふ。第五句は恐らく未だ湊合を免れず。
世張(後藤松陰)云ふ。「家山の三逕未だ荒れず」。是れ、學在り生計在り、皆、緊要の事なれば、羨むべし。學ばざるべからず。
(※学業が可能なのは実家の生計がしっかりしてゐることで恵まれた藤城は羨ましい、しっかり勉強しないと)
信侯云。世張の評、明了を欠く。豈に誤寫有らんか。
(※「全くは」を写しておらず藤城の心を正確には言ってない)


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