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村瀬藤城 筆跡


村瀬藤城 掛軸 (2022年6月入手)


半川蘆葉冷残暉
憶昨扁舟此送歸
晩渡無人天欲雪
寒林枯木亂鴉飛
藤城山人



半川の流水、残暉冷やかにして、
憶ふ昨、(※先生の乗った)扁舟、此に帰るを送るを。
晩渡(※渡し場)無人、天、雪ならんと欲す。
寒林枯木、乱鴉飛ぶ。

【箱書き】
村瀬藤條先生寒林暮鴉之書幅真蹟也然此書世上与所多
見異偶雖非無憶疑者是壮年之作而検謹厳無一毫浮躁
氣却可珍重者也 大正甲子三月上浣 耕雲題籤

村瀬藤條先生「寒林暮鴉」の書幅。真蹟也。
然れども此書は世上、多く見る所と偶(たぐひ)を異にす。
疑ひを憶ふ者なきにしも非ずと雖も是れ壮年の作。
而して検すれば謹厳にして一毫も浮躁の氣なく、却て珍重すべき者也。
 大正甲子(13年)三月上浣 耕雲(山田耕雲?:日本画家1878-1956)題籤

【付記】
「寒林暮鴉」と鑑定人が題を付けたが、『藤城遺稿』の「初稿」中、「藍水別山陽先生」の次に「藍水即目」として載せ、欄外に頼山陽と後藤松陰の評がある。
漢人の詩。「歩み出づ、城の東門。遥かに望む、江南の路。前日の風雪の中。故人此より去れる。(古詩「歩出城東門」)」
足下の詩。暗合と 謂ふべし。乃ち知る、情に古今無しと。(※山陽の評)
世張(※後藤松陰)云ふ。景中に情有り。情中に景有り。

頼山陽が文化10年に美濃を訪問した際、最後に応酬した翌日の一篇。
壮年の書であり、落款の印章も晩年には見られぬ「臣褧」「士錦 氏」「■■」。

 


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