.【第1信】[安政二または三年(1855or1856)]9月（菊月）17日岡田正造宛 後藤松陰書簡
拝啓 秋頃日頃と候得共
御多祥被成、御揃候間、奉
欣悦候。扨、先日は(者)、美酒壱
尊(樽)被贈下、不相替御深情
辱拝味仕候。今日飲盡
し候故、空尊返納仕候。
御照入可被下候。○被嘱候細
香(※江馬細香)揮筆之もの、箱入之
儘、国元へ(部)發し候。右飛
脚賃抔は、細香畫出来
参り候上、委曲可申上候。○
小生早計に小箋一枚、認可
申様、被仰遣即塗鴉差
出し候。立ツ横コ之所分り
不候故、先(まづ)小生思わく通りに
認上候。若思召に叶ひ不候
はば又々寸法と竪横と被
仰遣可被下候。萬(よろづ)随時御自
愛奉被候。空尊返上御礼
迠如此御坐候。 以上
菊月(九月)十七日
岡田正造雅兄 梧下 後藤機
是書、右閑三郎子へ御届可被下候。
又々乍御面倒、坂上閑三郎
氏への一書、御轉達被下候様
奉願上候。 以上
【第2信】[安政三年(1856)]1月4日岡田正造宛 後藤松陰書簡
正月五日發 賃すミ(※済)
■拝 大坂梶木町
岡田正造様 後藤春蔵
貴答 賃すミ
拝復 昨三日御發し之華桑
今日午飯時到手、薫讀仕候。如
仰新春御多祥被成御越年
候由、奉欣悦候。次(ついで)に弊庭皆々
無恙加如馬齢候。乍憚御省
言可申候。新紫海草壱包
被餉下、毎々御深情、厚奉感佩候。
先は右年首之御賀奉答
申上度迠如此御坐候。恐々謹言
正月四日
岡田正造様 梧下 後藤春蔵 機
尚々 淡河清風先生へ此度は
書状不呈候。乍憚御面晤之節
よろしく御傳聲被下様奉願
上候。○客臘[×冬]十四日御寄恵被下候
芳醸一尊は、同十七日到手仕候。
辱拝味仕候。毎之嘉貺奉感
佩候。○䣊湖樵書(※『倘湖樵書』)は客臘書林へ
一と先(まづ)返し候。右書林へ尋合せ
候而、若まだ其手元に有之候はば
其段可申上候。左様被思召可下候。 以上
【第3信】
[安政三年(1856)]2月[4]日（立春）岡田正造宛 後藤松陰書簡
新禧芽出度申存候。其表
御渾家愈御多祥、御越歳
奉恭賀候。譬隠無異加年
乍憚御省心可被下候。右年始
御祝詞申上候儀、如此御座候而
期永日之時候。恐惶謹言
立春日當賀 淡河家 筆
岡田正造様 梧右
八日御出之御書状、昨九日文事相達し候
儀、歳御辰到御年始状、被値付早速
今朝相認申上候。封〆致し不申而出候
間、御一讀の上〆[可被下候]。如来■
元旦後寒威信、昨冬衰老
手足凍亀併氷凍候は、近年来
之事に御座候。此冬、鳥渡御相候
申上候身上一件、種々御免道遊
■候得共、御四時毎に御出不申候■多■
之上■■は、一年は拝多信の事は■近日■
様に相成申候事に■■得共、貧品春は■■
支るも出来申、大に心配被■候。尚氏
足■鷲尾■候而鳥渡口得どきは
致墨候得共、中々取■様子に御座候。
何■陶淵明 乞米帖の趣候も可被下
何連は■■にも領分其内拝眉萬々
御願可申上候。早■
【第4信】[安政三年(1856)]3月12日岡田正造宛 後藤松陰書簡
拝答 御手柬被下久振にて、忝
拝見仕候。于今(今に)寒暄未定に候
得共、御多祥 被成御入候由。奉
欣悦候。且又芳酒一尊(※樽)被贈下
御深情辱致拝登候。 小生折々風
邪に感じ申候。唯 以此 [君・思]當 葛根
柴胡申候故[ユヘ] 別して奉荷佩候。樽
は今暫く借留仕候。○竹田老人(※田能村竹田1777-1835)
畫山水一幅、御見せ被遣、一覧仕候
所、大分合點行かぬ幅と存候得
共、獨断には参り兼候故、小虎(※田能村直入1814-1907)へ
以忰、尋被遣候所、同意にて、むつ
かしく候と被申候。左様被思召可成候。
右之所へ、淡河清風(おうごせいふう：人名)之書状参り申候。
右貴答 鳴謝迠如此御坐候。近来は
伊丹に御出被成候由。千萬随時、御自
愛可被成候。草々不盡
暮春(※三月)十二日之夜書
別帋壱通 乍憚明倫堂(※伊丹の郷学)へ御轉
達被下候様 偏に奉願上候。
岡田正造雅兄 梧下 後藤春蔵
【第5信】[安政三年(1856)]4月19日岡田正造宛 後藤松陰書簡
伊丹 岡田正造様
坂梶(※大坂梶木町) 後藤春蔵
貴答 掛物係
拝答 清和之節に御座候得共
とかく雨がちにて困入申候。扨、貫
名海屋老人之畫幅、眞妙
と被存候。若(もし)御買ひ被成候はば、直段(※値ねだん)
の處は、じよさいなく(※如才なく)候 御かけ合
可被成候。甚面白き幅と被存候。○
先日被贈下候御酒は、大に清烈
辱(かたじけなく)拝喫仕候。明き樽、先日より
返上可仕と存候て忘却仕申候。
此度、樽返上仕候。何卒又々御恵み
被下候様奉願上候。○此節明倫堂へ
金本顕蔵(※金本摩斎1829-1871)と申人、橋本半助(※橋本香坡1809-1865)一兄
之代りに被罷出候由。是は小生元来
懇意之人に御座候。可然御出會被
成候様、奉願上候。餘後便を期
し申候。草々 以上
四月十九日 即答
岡田正造雅兄 梧下 後藤機
(返し書き)
尚々乍憚 堺町亀印善之
氏へ、之一書 御とどけ被下様 奉
願上候。
※書簡中の報告で明倫堂の初代教頭が金本顕蔵から橋本半助(橋本香坡)になってゐることから、安政三年(1856)の書翰と思はれる。
※解読に当たってはfacebook「古文書が読みたい！」グループの皆様の御教示に与りました。御礼を申し上げます。ありがとうございました。