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江馬金粟(えま きんぞく)
(1812 文化9年 〜 1882明治15年) 名は桂、字は秋齢、幼名千次郎、通称元齢。居処は学知軒。江馬細香の甥で頼山陽門下の詩人・医者。
参考文献:『大垣藩の洋医 : 江馬元齢』青木一郎著 江馬文書研究会, 1977.5 334,14p 18cm並製
(岐阜県図書館蔵)
『黄雨楼集』
(こううろうしゅう)
昭和9年 東京:麋城会 編輯刊行
16.4×12.1cm 和綴 78ページ
(麋城は大垣城、麋城会は大垣中学校同窓会)
巻一 詩
煙波晩棹 / 京寓、寄懐南晋亭 / 同大槻盤溪、観花於平野 / 雨後、積翠館午坐
京寓雑詩、二首 / 過勢田 / 藤渠堂(※金粟住居)春興、四首 / 雨中訪説田雨石、途上 / 題管窺録巻首、二首 / 墨俣途上 / 訪津坂拙脩(『三野風雅』編者) / 踰梯坂到鳥羽、二首 / 訪衣斐周民 / 春暮、訪長明寺
村瀬泰乙(村瀬太乙)至、有詩、和其韵 / 津島途上、三首 / 送桃壺禅師(大垣全昌寺26世住職)之肥前、二首 / 房島 /
藤渠堂賞月、坐間雲起、時有遠別之客 / 感秋 / 贈藤城山人(村瀬藤城) / 余平常晏起、戯有此詩 / 天保十一年庚子春、卜居於竹嶼街、二首 / 盆梅
蘭 / 格物堂即事 / 奉母及姨、飲千明院 / 歳暮寓感二首 / 次韻宇野南村見贈 /
甲子元旦(元治元年) / 偶作癸亥(文久3年)三月 / 題鉄心居 / 送蛾黄今井田生遊江戸、生嗜詩兼善篆刻 / 谿山春暁 / 初夏、二首
偶成、二首 / 船居送秋、課題 / 病中謾吟、二首 / 松樹歌、寿江合氏八十初度 / 送西溝高岡君(高岡夢堂)之江戸、二首
/ 戯題自画山水 / 藤井竹外生至、賦贈 / 辛酉元旦、万延二年二月改文久 / 雪日浅野氏小集、分得麻
観梅於無何有荘(小原鉄心庵)分字得雲、十絶 / 贈僧幻成 / 題自画山水巻首 / 賀全昌桃壺禅師上堂結冬
/ 画鶴 / 寄懐竹操大高君在京 / 観花帰途口号 / 仙寿菴即事 / 春暮到嵒手(神田柳溪居処)途上 / 秋晴近郊散策、二首 / 芍薬、黒川氏嘱
八幡訪小林卓齋(京都書家) / 秋郊夜帰 / 紅蘭女史見贈先師星巌翁遺稿、悵然賦謝 / 戯写鴨沂楼居図、贈紅蘭女史 / 寄懐野村藤陰在京 / 今尾舟中
/ 越前屯営、二首、甲子(元治元年)冬十二月旧作 / 遊越溪、五首 / 辛酉(文久元年)六月念七日、山中静逸(信天翁)至、此日久旱、始有雨 / 題無何有荘、旧稿 / 大水行
大雪行 / 雪日訪神田實甫(柳溪) / 冬日藤渠堂雑詩、三首
次鉄心太夫東山探梅之韻、賀参与選任 / 題自画五六七言二十首 / 題自画雑詩三首 / 黄雨楼四時雑詠二十三首 /
偶作五首 / 偶感三首 / 草書歌 / 土藩長岡懐山(土佐藩海援隊)見訪、有詩、次韵答謝 / 観演劇、六首
奉呈岩倉亜相公(岩倉具視) / 彦根旅舎、邂逅江馬天江、賦贈
/ 蘇髯卿大夢(木蘇大夢)新開雪花社、賦贈 / 雇舟到桑名、桃壷禅師送到閘門、臨別賦贈 / 桃源精舎守歳 / 偶言九首 / 題湘夢詩鈔(江馬細香詩集)巻尾 / 詠史四首
有感而作五首 / 桂園所画桃源横巻詩跋 / 賀片山氏新婚 / 辛未(明治四年)仲冬応召将赴東京、戯賦一絶句、留別南校諸盟台 / 乞菊 /
紀元二千五百三十三年。正月初七日、陪柏淵氏飲於金川楼、即事 / 缾梅 / 上加納孝子詩、因県命作之
寄懐男春熈在奥州、次韵 / 季秋十七日到太田駅、帰途雇舟下木蘇川、口号 / 歳晩 / 漫吟四首 / 元旦 / 題自画 / 題背面美人図 / 辞世
巻二 文
如意説 / 西山爽気楼記
萬山紫翠楼記 / 遊梅渓記
送島子慎還江州序 / 龍齋記
冬夜宴不朽堂序 / 夢遊記
煙格月姿楼記(阿部松園)
文久二年壬戌三月念五日、陪鉄心小原君至今尾、此日斜風疾雨、舟中有佳興、有艱苦、有笑話、頻得不蕭然、乃記其実、以備他日遺忘
無墨堂記(村上剛齋:熊本藩の篆刻家)
題細香墨梅図後 / 題春琴歳寒五友図後 / 祀山川議
題比剥加拉的私(ヒポクラテス:医神)像 / 神農氏像讃 / 楠公論
黄雨楼記 / 遊越渓記五則
遊越渓記五則(承前)
送高岡哲夫君之軍序 / 男春熈名字説
記飲 / 記株瀬賞月飲 / 日本刀説
呈兵部小原君書 / 姪女阿澄墓誌 / 読陳同甫文集
記舟行抵佐屋駅二則
金粟文稿自序 / 玩月楼記(宇野雨山・宇野南塘:宇野南村子息)
青天一幕楼記 / 呈生野知事井田君(井田譲)書
題自画巻末 / 窮理啓蒙序 / 丸山精邨墓誌(丸山龍川:字子堅、飯田藩士の父の墓誌) / 日本外史標註序
陀氏生理大成序 / 南邨詩集跋
巻二 文 目次
附録 春熈詩稿 江馬春熈
庚午(明治三年)元旦 / 偶感 / 春日賦東坡十日春寒不出門句。得七首 /探梅。用前次韵 / 早春出遊
春日雑題 / 又 / 春晴文学校席上。分得韵霞 / 夢阿信。義父春齢君女也。為余妻者夭。
余由帰家。今亦復故。屈指已九年矣 / 病中家厳至。感喜恭賦 / 有疾賦贈二弟 / 校王姑細香遺稿。有作 / 又 / 春夜飲家厳金粟君書楼上。賦喜
/ 偶作 / 人 / 春日同竹操大高君。探梅於牧野 / 余一夜読書到三更。俄然寒熱不忍坐読。乃擁被孤臥。移漏欠眠。偶有此作
病中有感 / 病中漫吟 / 某荘小集。代戸式君 / 格物堂
春日雑題 / 美人渡水図 / 春日偶成。用王姑細香君韵 / 訪柏淵氏於高田途上 / 贈医秀卿 / 呈耆山叔 / 贈高木耕樵 / 贈柏淵石峯 / 雨夜景陽僧舎小集
/ 同諸子看花於千歳楼。得文 / 自高田到釜段途上
宿後藤星峯家 / 同星峯石峯泛舟到大垣 / 同柏淵星峯及弟春廸看於金生山 / 偶作 / 又 / 奉母遊与偕園 / 読史偶成 / 呂久川試釣
/ 看梅帰途。訪某家席上 / 初夏偶成 / 雨夜偶成 / 起坐 / 偶作 / 又
題自画 / 夜坐 / 夏夜 / 夏日 / 夏晩 / 送参事鳥居君之東京。以此時情三字為課 / 美人挿牡丹図 / 梅実 / 題蘭 / 偶成 / 題自画雪竹 / 題自画竹 / 又
送人 / 余筆按於朝語五條後。自顧慨然賦三首。挿巻将排余意也 / 偶言 / 題自画 /
有感 / 又 / 又 / 又 / 偶作 / 浅井員太偶帰自北越。賦贈 / 庚午(明治三年)夏日作 / 過村家 / 竹操大高君別荘招飲
夢攻朝鮮 黄雨楼集跋(三郊 杉山 令) 黄雨楼集後(江舟 澤野 章)
黄雨楼集跋(稲水 渡部 董)
『佩文余滴』
(はいぶんよてき)
江馬元齢編 ; 江馬春熈, 石川鴻斎校
明治17年 東京:前田圓発行、鳳文館発売
19.0×12.5cm 和綴 本文31丁
題字:巖谷一六 「藝林」
「至宝」 序:石川鴻斎
承前
承前
自序
承前
承前
本文1丁
本文2丁
・・・・・・・・・・
本文31丁
跋:江馬春熈
承前
江馬金粟 詩稿まくり (2010年11月購入)
管窺録巻末二首 『管窺録』巻末二首
管窺議大口縦横 管窺すれば議は大きくして、口は縦横なれども
豈有毫端制巨鯨 豈に肯へて毫端、巨鯨を制せんや[筆先で外国船がやっつけられるだらうか]
一點青燈照心腑 一点の青灯、心腑を照らす
自嘲多事老醫生 自嘲す、多事なる老医生[われ]
吻大謾言属老痴 吻大の謾言は、老痴に属すも
管中窺豹最多時 管中に豹を窺ふは、最も多き時
一斑看了一斑出 一斑[黒船一隻]を看了(をは)れば[また]一斑出づ
不譲髫童王献之 譲らず、髫童の王献之と [「一斑を見て全豹を卜す」とからかわれた王献之少年に譲らないね。]
『管窺録』は藤井竹外(藤井強哉)が幕末に国防を論じた著作。自らの見識の謙遜と望遠鏡を覗くことをかけてゐる。大阪市立図書館森文庫に写本が伝はる。 巻末ではなく巻頭に掲げられてをり、右に示す。
贈芹坡 芹坡に贈る
迂拙依然愧我生 迂拙、依然として、我が生を愧づるも
一杯猶未負鷗盟 一杯、猶ほ未だ鴎盟[同志]には負(そむ)かず
可無時事炎涼歎 時事、炎涼の歎[俗事の話題]はなかるべし
湖月山雲話旧情 湖月山雲、旧情を話す
贈藤井強哉 藤井強哉に贈る
約月期楓又到梅 月を約[約束]して、楓[秋]を期すに又た梅[早春]に到る
寒鞋果踏雪山来 寒鞋、果して雪山を踏んで来れり
聞君健骨唯因酒 聞く、君の健骨は唯だ酒に因ると
不用敲氷先喚盃 氷を敲くを用ゐず[茶よりも]、先づ盃を喚(よ)ぶ
金粟稿
田中芹坡たなかきんぱ(文化12年1815−明治15年1882)
文化12年生。近江の薬商の子。彦根藩儒の中川漁村に師事京都で猪飼敬所、江戸で松崎慊堂に師事。彦根藩校弘道館会頭用掛、文館教授、学館教頭をつとめた。
明治15年1月10日死去。68歳。名は栄。字は子順。通称は秀次郎。著作に「芹坡詩鈔」など写本数種が伝はる。
号「芹坡」は、彦根城下を流れる芹川の堤の謂であらう。
江馬金粟 折本詩帖 (2012年03月購入)
『黄雨樓四時襍詠』 江馬金粟先生書
[刀圭余事]
1.
半百已知塵夢醒
茶鐺影裏一燈青
間唫孤讀秋簾冷
黄雨楼頭桂子馨
半百すでに知る、塵夢の醒めるを
茶鐺(茶釜)影裏、一燈、青みたり
間唫(閑吟)、孤読、秋簾、冷やかに
黄雨楼頭、桂子(キンモクセイ)馨る
2.
泉布先生日倍違
青洲従事当依々
書燈伴得寒酸影
不管人間些是非
泉布先生(お金様)日に倍(ますま)す違(たが)ふも
青洲(医事)従事、まさに依々(去り難い)なるべし
書燈、伴ひ得たり、寒酸たる影
管せず、人間(じんかん:世間)些かの是非
3.
禄同膨鶏舟資貧
句道衛々馬足官
書謀了来甘睡課
許吾安遇養愚人
4.
老蹇論時吾有訣
呶々不用逢人説
孤案筆底述先揮
満架書中友前哲
老蹇、時を論ず、吾に訣有り
呶々(どうどう:くどくど)として用ゐず人に逢ひて説くを
孤案の筆底、先揮を述ぶ
満架の書中、前哲(先賢)を友とす
5.
嚢底曽無買貴銭
楼窓独坐送残年
窮奚若遇連錐窘
身與琹出共一舩
嚢底(財布)曽て無し、貴を買ふ銭
楼窓に独坐して残年を送る
窮奚若遇連錐窘
身は琹とともに出でて一舩を共にせん
6.
年歉幸儲[・瓦]石資
怯聞升米[百百]銭
把書何菅燈光暗
盞底減油加醋些
年歉(ねんけん:凶年)幸ひに儲す、[・瓦]石(たんせき:かめ)の資
聞くを怯(おそ)る、升米百百銭なるを
書を把るに何ぞ菅せん燈光の暗きを
盞底、油を減じて醋の些しを加へん(節約法)
7.
低楼月黒雪将来
燈影凄酸百慮灰
蹙膝先生窓数尺
共開冷眼萬瓶梅
低楼、月黒くして雪、将に来らんとす
燈影、凄酸として、百慮の灰
膝を蹙めたる先生、窓の数尺
共に冷眼を開く、万瓶の梅
8.
笑我従来生計疎
暖簾孤坐小楼居
史編文帙医方鑑
盡日埋頭学蠹魚
笑ふ、我が従来、生計疎なるを
暖簾、孤坐す、小楼居
史編、文帙、医方鑑
尽日(終日)頭を埋づめて蠹魚(紙魚)を学ぶ
9.
畏他生死属揺唇
儒首梟来事已謀
不若究途能結舌
北窓三友共相親
他生の死を畏れて、揺唇に属す
儒首、梟し来って事已に謀らる
しかず、途を究めて能く舌を結ぶには
北窓の三友、共に相ひ親まん
10.
灑掃心田絶點塵
一杯風月見天真
如何険苦攤銭客
不買衡門自在貧
心田を灑掃して点塵を絶つ
一杯、風月、天真に見ゆ
如何なる険苦、攤銭(賭博)の客
買はず、衡門(陋屋)、自ら貧在り
11.
朝々歎客坐煎茶
未至閑情睡作家
満架帋縑各州嘱
又磨残硯試塗鴉
朝々、客に歎じて、坐して茶を煎す
未だ閑情に至らず、睡れる作家
満架の紙縑は、各州からの嘱(依頼)なり
また残硯を磨りて塗鴉を試す
12.
一懼一喜刃存老
時生時銷愁淺深
報国文章無挌筆
横空硬語啓丹心
一懼一喜、刃は存するも老いたり
時に生れ時に銷ゆ、愁ひ浅深
報国の文章、筆の挌く無く
空しき硬語を横たへて丹心を啓かん
13.
小楼居奈此炎歳
午枕欠眠頻捲幃
過雨霎然身始活
西窓書讀借残暉
小楼居するに此の炎歳をいかんせん
午枕、眠りを欠いて頻りに幃を捲く
過雨霎然として、身始めて活きたり
西窓に書読するに残暉を借る
14.
兵機未滅苦窮饑
粛教恰逢凋落時
半日蛻身初出郭
憤愁猶唱戦秋舜
兵機、未だ滅せず、窮饑に苦しむ
粛教、恰も逢ふ、凋落の時
半日蛻身、初めて郭を出づ
愁ひに憤りて猶ほ唱ふ、戦秋舜
15.
老吻沈唫句未圓
峭寒微雨卸簾眠
綿衾一襲温地護
夢到池塘春草邉
老吻、沈唫して句、未だ円かならず
峭寒微雨、簾を卸して眠る
綿衾、一襲、地を温めて護る
夢、池塘に到る、春草の辺
黄雨楼四時雑咏十五首
録為野原春良生嘱
己巳夏月
黄雨楼四時雑咏十五首
野原春良生の嘱する為に
録す
己巳(明治二年)夏月
金粟老人[江馬桂印][黄雨楼]