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宮田嘯臺 みやた しょうだい (1747 延享4年 〜 1834 天保5年)


2009.5.31 加納宿に現存する宮田家を訪問、佳子様より貴重な墨蹟遺稿の数々を拝見させて頂きました。

【加納宿現況】

旧宮田嘯臺邸  旧森求玉邸
左:旧宮田嘯臺邸(当分本陣跡) / 右:旧森求玉邸(脇本陣跡)

加納城下マップ
 岐阜市教育委員会編纂「加納城下マップ


【墨蹟】

六曲一双屏風 2009.7.18  (現在は岐阜市立歴史博物館に寄贈されてゐます。)

古稀記念

p1 p2

p3

五花駐馬七香車   五花の駐馬、七香の車             【五花馬】五色の花の紋のついた名馬。【七香車】貴族の車。
去看春風第一花   去って看る、春風、第一花
十里紅塵三月暮   十里の紅塵、三月の暮
朱欄翠幕是誰家   朱欄、翠幕、是れ誰が家ぞ

p4

令公宅裏千葉紫   令公の宅裏、千葉の紫
天宝年中一拾紅   天宝年中、一拾紅
此景此花誰認得   此の景、此の花、誰か認め得ん
試馮圖畫問東風   試みに図画に馮りて東風に問ふ

p5

三月江南穀雨春   三月江南、穀雨の春  唐寅の原詩は「二月江南」
滿城車馬走紅塵   満城の車馬、紅塵を走らす
金釵錦袖知多少   金釵、錦袖、知んぬ多少ぞ (どんだけあることか)
却是看花半酔人   却って是れ花を看るは半酔の人  唐寅の原詩は「都(すべ)て是れ」

p6

一枝融露酔春風   一枝、露を融して春風に酔ひ
解咲香鬟酒暈紅   解咲(解笑)す、香鬟(淑女)、酒暈の紅(紳士の赭ら顔)
自是太妃封號後   是れ太妃の封号(ほうごう)せる後より
誰將顔色闘春江   誰か顔色を将って春江を闘はさん

p7

是誰移植鹿啣花   是れ誰ぞ、鹿啣花(薬草)を移植するは
春日偏開富貴家   春日、偏へに開く、富貴の家
獨坐山荘無供設   山荘に独坐して供設無くも
煩君点綴一枝斜   君を煩はす、点綴、一枝斜けり

p8

歳丁丑春三月臨李北海書  歳丁丑(文化14年 1817)春三月、李北海(李邕)の書を臨(臨書)す。

 古稀老人宮田維禎

p9  p10

八十二歳 (文政12年 1829)

p11  p12

p12b

金衣拂曉影徘徊   金衣払暁(夜明け)、影、徘徊す
淑氣充分檐外梅   淑気充分たり、檐外の梅
休道山中無暦日   道(い)ふを休(や)めよ、「山中に暦日無し」と
綿蛮聲滑出幽來   綿蛮たる声滑らかに、幽を出でて来る
    新鶯出谷

p13

野外乘春歩日斜   野外、春に乗じて、歩めば日は斜き
村々到處総開花   村々、到る処、総て開花す
黄昏縦是迷歸路   黄昏、縦(よ)し是れ帰路に迷ふとも
頼宿花陰深處家   頼(さいわ)ひに宿す、花陰深き処の家
    春郊晩歸

p14

瘦影已逢辰日種   痩影、已に逢ふ、辰日種
清陰今向于窓看   清陰、今、窓に向ひて看るに
欲題佳句羞凡骨   佳句を題さんと欲して凡骨を羞づ
解籜娟々数十竿   籜(たけのこの皮)を解くこと娟々たり、数十竿
       新竹

p15

斜雨長堤柳蔭磯   斜雨長堤、柳蔭の磯
來依草店脱蓑衣   草店に来り依て、蓑衣を脱す
鮮魚買得籃中躍   鮮魚買ひ得て籃中に躍る
三尺蘆茅一串歸   三尺の蘆茅に一串して帰らん
    草店雨行

p16

愛黄綿襖坐東軒   黄の綿襖(どてら)を愛して、東軒に坐するに
被拉同人朝出門   同人に拉せられて朝、門を出づ
老後吟行當藥散   老後の吟行は、当薬(健胃薬:センブリ)の散(散薬)
着衣小立慮涼温   着衣、小立して涼温を慮る
    秋晴出遊

p17

雪意天寒月色凝   雪意、天寒くして月色凝る
遙宵散帙恥無能   遥宵、帙を散じて無能を恥づ
懶來未貼書窓罅   懶来、未だ書窓の罅(障子の破れ)を貼らざるに
奈可尖風明影燈   尖風の、燈を明影するを奈何(いかん)せん
    冬夜讀書

 嘯臺宮田維禎八十二老人題

p18  p19


掛軸 (2009.5.31拝見)

p20  p21  p22  p23

 

浅水汀邊楊柳藂
漁童相随老漁翁
携帰笭箵撈波子
暮色閉茫烟雨中
嘯臺題

浅水、汀辺、楊柳、藂(むらが)る
漁童、相ひ随ふ老漁の翁
携へ帰る、笭箵(れいせい:びく)と撈波子(ろうぼす:たも網)と
暮色、閉ぢて茫たり、烟雨の中

p24  p25  p26

蚤起新涼透碧紗
茶烟細々出隣家
眠醒小立籬邉逕
閑数牽牛幾種花
宮田維禎

蚤起(早起き)新涼、碧紗(蚊帳)を透す
茶烟細々として、隣家に出づる
眠り醒めて小立す、籬辺の逕(小径)に
閑かに牽牛(アサガオ)を数ふ、幾種の花

p27  p28  p29

時雨種祉山雲峰祥

三野半仙古農宮田維禎八十五翁書

※江淹(南朝·梁)「知己賦」の詩句より。「時雨鍾祉、山雲降祥」(時雨祉(幸せ)を鍾め、山雲祥を降らす)

ゆかりの品

p30 p31

左:拾遺詩篇 右:復刻された6巻本の草藁原本   /   加納和泉屋の酒徳利

嘯臺は旧加納宿の当分本陣にも指定された酒屋「和泉屋」の6代目で、 当地名産の和傘問屋を兼ね、加納藩の勝手向御用役を仰せ付かってゐた由。
明治の濃尾大震災で水脈が変じ、酒屋は廃業、建築も空襲で失はれましたが、ひとつきり焼け残った蔵に、遺稿と蔵書が収められてゐました。
現在、蔵書の方は岐阜県図書館に寄贈、「看雲文庫」と名付けられ(1,521冊)、大切に保管されてゐます。


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