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後藤松陰 ごとう しょういん (1797 寛政 9年1月8日 〜 1864 元治元年10月19日)

後藤松陰 手跡その19 掛軸 (2024年10月際遇)





吾未識君顔。君息寓吾塾。
熟見他温厚。想像君醇朴。
不圖今邂逅。莫嘲此苜蓿。
維時十月晦。陰寒欲雨雹。
一杯且獻酬。少時解瑟縮。
此去東都遙。山川瘁馬僕。
可念渉夫凍。氷堅大塸腹。
可羨千秋雪。胸盪冨峯麓。
都下人物藪。名流湊如輻。
若訪梁星嵒。僑居在阿玉(於玉池 地名)
嘱余跋其詩。起草未彫琢。
到日請致意。君 代吾牘。
行矣雪霜矦。晨昏慎食服。
來茲馬首西。春風到浪速。
冠童共賞花。櫻祠泛輕𦪇

中村與一雅契将遊東都。見訪草堂。
走筆書之以當餞。兼寄語梁川老盟臺
 粲齒 松陰主人後藤機

吾れ未だ君の顔を識らざるに、君の息、吾が塾に寓す。
熟(つらつら)見るに他(ま)た温厚、君の醇朴を想像す。
圖らずも今邂逅す、此の苜蓿(わが陋屋)を嘲るなかれ。
維れ時に十月晦(みそか)。陰寒、雨雹ならんと欲す。
一杯且(しばら)く獻酬すれば、少時、瑟縮(緊張)を解く。
此れ東都の遙かに去る。山川、馬僕を瘁(つか)れささん。
念ふべし、夫れ凍氷の堅、大塸(堰)の腹を渉るを。
羨むべし千秋の雪。胸は冨峯(富士山)の麓に盪くを。
都下の人物、藪にして名流、輻の如く湊(あつま)る。
若し梁星巌を訪はば、僑居は阿玉(於玉池 地名)に在り。
余に其詩を跋を嘱するを、起草するも未だ彫琢せず。日到らば致意(よろしくと)を請ふ。
君、吾が牘(手紙)に代りて行く。雪霜の候、晨に昏に食服を慎めと。。
來茲(来年)馬首西して。春風、浪速に到らば、冠童共に花を賞さん。櫻祠、輕𦪇を泛べんと。

中村與一雅契、将に東都に遊ばんとして草堂を訪らる。
筆を走らせ之を書し以て餞に當つ。兼るに梁川老盟臺に寄語す。
 
 粲齒(博粲お笑ひ草まで) 松陰主人後藤機




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