釋 金龍(金龍敬雄きんりゅう　けいゆう) 　山田鼎石　(やまだ ていせき)

掛軸

岐阜市円徳寺所蔵(岐阜市歴史博物館管理)

吊織田塚

維昔征兵戦死霊　　天陰鬼火雨中青
高僧薦抜従裁偈　　怨恨長澄鎮梵庭
　　金龍翁

織田塚を弔す

維れ昔、征兵の戦死霊
天、陰りて鬼火、雨中に青し
高僧薦抜(せんばつ)して、偈を裁するに従ひ
怨恨、長(とこし)へに澄み、梵庭に鎮まりぬ
金龍翁

吊織田塚　并引

織田塚者蓋距瑞龍山二百歩可
在上嘉納邨中有塚無碑相傳是
織田信長与齋藤道三争雄之時
合葬戦死者之處也遊魂為變毎
濕雲陰雨輒塚中有戦争之聲里
民驚告之　雲外和上和上乃作
一偈以薦抜焉其怪長絶今茲丁
酉旾　金龍上人原葬圓徳寺内
且欲揄揚其偈語之奇特顯明其
功徳之廣大立碑勒之垂之不朽云

永禄煙塵誰也知蒿菜没逕一丘遺
冤魂昔散高僧偈頑石今成戦士碑
寺動鯨音鐘旦暮天銷龍氣剣雄雌
百年都是東流水唯有青山似舊時

岐府　山田瑛

織田塚を弔す 　并びに引

織田塚は蓋し瑞龍山を距ること二百歩可(ばかり)にして、上嘉納の邨(上加納村)の中に在り。
塚有れども碑無し。相ひ伝ふ、是れ織田信長※と齋藤道三と雄を争ふの時、（※正しくは秀信）
戦死者を合葬せるの処也と。遊魂、変を為して
湿雲陰雨の毎に、輒ち塚中に戦争の声有り、里民驚きて之を雲外和上(和尚)に告ぐ。
和上、乃ち一偈を作り以て薦抜(供へ)、焉(ここ)に其の怪、長へに絶ふ。
今茲丁酉(安永6年)旾(春)、金龍上人、円徳寺内に原葬し、
且つ其の偈語の奇特を揄揚(ゆよう:称揚)し其の功徳の広大を顕明せんと欲し、
碑を立て、之を勒(ろく:刻)して之を不朽に垂らすと云ふ

永禄の煙塵(戦火)誰かまた知らん
蒿菜、逕(こみち)を没して一丘、遺る
冤魂、昔散ずる高僧の偈
頑石、今成る戦士の碑
寺は鯨音を動かす、旦暮の鐘
天は龍気を銷(消)す、剣の雄雌
百年、都(すべ)て是れ東流水(逝きて還らず)
唯だ青山の旧時に以たる有り

岐府(岐阜)　山田瑛(山田鼎石)

覇主曽争戦伐功　　城頭金皷振層空
一時兵略愆三捷　　百歳威声伝両雄
野暗燐燃荒草雨　　山鳴鬼哭古林風
敗軍将校無名字　　墳塚纔餘蕭寺中

吊織田塚　　田維禎

覇主、曽て争ふ戦伐の功　　城頭の金皷、層空に振るふ
一時の兵略、三捷を愆り　　百歳の威声、両雄を伝ふ
野に暗く燐は燃ゆ、荒草の雨　　山に鳴く鬼哭、古林の風
敗軍の将校、名字無し　　墳塚纔(わづ)かに餘す、蕭寺の中

織田塚を弔す　　田維禎(山田鼎石)

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