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2001年下半期(7月〜12月) 日録掲示板 過去ログ


日録2001/12/31 投稿者:中嶋康博  投稿日:12月31日(月)11時42分57秒

 今年はプライベートな失意ごとからはじまって、配置移動、職場改革の困難、また親父が倒れ、
田中先生の御子息は急逝と寔にわやわやした一年でしたが、みなさんは如何ですか。
私はgermanist氏との掲示板上でのやりとりで思ふところもあり、近代詩以外の新しい分野へ目
を向けて、初学者の心でそれに向ふことで、心を沈めながら鎮めながら暗い四十路のトンネルの
日々をやり過ごしたやうな一年でした。HPの更新も滞ってしまひました。そのかはり思ひもかけ
ない古書も手に入り(「天の鍵」「校註祝詞」「花筺」「青の秘密」「詩抄」「暮れ行く草原の
想念」ほか)、本の収穫ばかりは私生活を慰められるほどに充実してゐたのでないかと思ひます。
京都の西村将洋さんから「大阪高校交友会誌」のコピーを頂いたことも、このさきHP更新にあた
っては忘れられない恩義となりさうです。
 来年は、まず司書資格をとって、図書館員としておろそかにできないさせない意見づくりを心
掛け、そして学習の過程で得た図書や書誌を扱ふ構へを少しでもこのHPにも反映できたら、嬉し
いですね。とはいふものの期限ぎりぎりの入学で年末にテキストが届き、一度の試験失敗も許さ
れないやうなスケジュール。しばらく漢字の修養はお休みとなりさうです。
岐阜でも昨夜雪が降りました。みなさんも良いお年を。

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日録2001/12/30 投稿者:中嶋康博  投稿日:12月30日(日)23時41分47秒

 司書通信講座テキスト漫読の合間に読まうと開いた「書誌学の回廊」(林望著1995)にぐいぐい
引きこまれて結局半日を潰してしまった。「書藪巡歴」も面白かったけど、こちらはさらに専門的
で、書かれてゐる内容も学術的に高尚なことばかりだけれども、書誌学の要諦と面白さが私のやう
なド素人にも判るように易しく説いてあり、だからといって「書誌学もイイネ」などと安直に思は
せるやうな読後感ではさらさらなく、只々「すごい世界だなー、古書に対してもっと謙虚にならう
っと」の溜息まじりの感銘なのでした。いい本だなぁ。せめて学識は足元にも及ばずともこんな格
調のある言葉遣ひができるやうになりたい、ってこれも長い修養の末の教養が前提のことではあり、
なにかしら好い加減なイラストや書誌風の如きをくっつけてこんなホームページを開いてゐるアマ
チュアの自分が、消え入りさうに恥かしくなってきました。

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日録2001/12/16 投稿者:中嶋康博  投稿日:12月19日(水)06時21分56秒

 八戸の圓子哲雄様より御著書「亜米利加國参上」ならびに「朔」147号の御寄贈にあづかりました。
この場におきましても厚くお礼を申し上げます。

 詩集の「出世」といふ詩にながれる熱い精神に感じ入りました。教師としての圓子先生も詩人
としての圓子さんも、ともに偽りのない人柄であることがわかって、嬉しいのです。かういふ方
が本学にも(できれば上司に)ひとり位あってもいいぢゃないか、と感じながらこのごろの大学
危機の時代を暮しをります。何時もどこも教育界は同じことなのかなぁ、と思ひ致されたことで
した。
 毎回楽しみにしてゐる「朔」における圓子さんの「村次郎先生の思い出」、今回も(笑?)詩
人村氏との交流より圓子さん自身の回想のくだりが面白く、それはそれでよいと思はれ、散文の落
しどころを御存知の圓子さんには、これらエピソードの数々をなにか半生記のやうなものに仕立て
あげて、そのなかの一部に「村次郎先生の思い出」も挿入した方がいいのではないかと、再び思っ
たことでした。努力と誠実の外連味のない描き方(といふよりも生得のものとしての氏の気質)には、
事実が呼び起こす真正のユーモアと頭をたれさせずにはおかない実直な感動があって、他所者には
ちょっと真似のできない文学的な東北の風土みたいなものを色濃く感じるのです。

御健筆をお祈り致します。ありがたうございました。

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目録速報 投稿者:中嶋康博  投稿日:12月10日(月)17時31分11秒

伊勢丹「大古書市」目録より。

扶桑書房03-5228-3088
472「ありし日の歌」再版函欠が \6.500 でまた出ましたね〜。
初版も再版も造りは変らないのに値段だけは雲泥の差。
復刻版とはまず、手にした時の本の重さが違ひます。実感してください。

書肆ひぐらし03-5392-3407
2674「転身の頌」復刻 \8.000も納得できる値段では。
自分は最初に中公美術版の贅沢革装Versionを買ってしまったので、
原本に忠実な復刻の方は持ってゐないけど・・・パスです。

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2001/12/9 投稿者:中嶋康博  投稿日:12月 9日(日)22時46分36秒

今日、平野幸雄さんと御電話の折、林富士馬氏が9月に逝去せられてゐたことを初めて知りました。
実は先月、偶々未見の方からメールがあって、

「私、このかたがどういう地位にある人か詳らかにしないのですが
偶然入手した「鴛鴛行」という文集にとても惹かれ、
また実に美しい装丁・装本なので大事にしております。」と仰言るに、

「池袋のお医者さんです(まだ御健在です)。」と答へてしまったのでした。

林富士馬氏には、私の田中克己先生とのやうに、最晩年の弟子とも慕ひ、またそのやうに可愛いがられてゐたひとがあり、
少壮気鋭の学者の方ですが、さぞや心痛の胸のうちをお察しする限りです。

因みにそのときにはさらにこんな風にメールでお答えしたのでした。

「文学で食べて行くことを放棄してもなほ文学に
かかずりあはないではゐられない浪曼派肌、良い意味でのディレッタントの最高の形を
具現してきたひとではないかと私は考へてをります。
良家のひとにして、少年の日に紹介状をたづさへ師に佐藤春夫をいただき、
年少の友として、伊東静雄、太宰治につくといった、今からするとものすごい環境にありながら
たうとう三島由紀夫のやうには文筆で世にうってでることをしなかった、
文学と人生とのかかはりを考へさせる方です。
しかしをりをりの批評文章が近年一冊にまとめられて公刊されました。
かういう方の書かれた文章は、肉声をつたへて核心を突き、
表現がまた山っ気なく水増しがないのでわたしも好きであります。
同じき環境の人でもうひとり、四季派でいふと高橋幸雄といふひとがゐるのですがこちらには文集がありません。
こんなひとびとの心の中に映ってゐた青春風景をみてみたいとしきりに思ひます。」

本HPよりも心よりの御冥福をお祈り申し上げます。

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日録2001/12/4 投稿者:中嶋康博  投稿日:12月 4日(火)23時01分58秒

 遅まきながらこの歳になって図書館司書の資格を(通信講座だが)取らせてもらへることにな
って、最近「図書館」について、あるひは古書趣味の延長線上で必ず交はるだらうところの「書
誌学」について、興味をもっていろいろ手引書の類ひなんかを読むやうになりました。浮沈はさ
て措きともかく今後も君にたのんだんだよ!と、態度で示して頂いたからにはこの大学図書館を、
利用者本位に、そして地元志向に、ああもしたいこうもしたい、と青写真だけは好き勝手に思ひ
描いてよろこんでゐる次第です。もっとも上司先輩が守旧派だらけであることは、日本の官僚機
構の小さな縮図のやうな田舎の私立大学であるここでも同じこと、大衆(利用者)の意識改革に
今一つ自覚なく、改革支持率の追ひ風とはなってゐないところが決定的な違ひかな。でもがんば
るしかない。

 雑誌「情報の科学と技術」といふ、面白くもなささうなタイトルの雑誌があって、要は新しい
情報学側からアプローチをかけた図書館の雑誌なのだが、なわけなのでさっぱり理解の届かない
文章もいっぱい載ってゐる訳だが、時々、面白いといふか、痛快な論文がしらっと載せられてゐ
ることに気がついて、館員の誰も読めないのに見栄でとってる「Library Journal」なんかやめ
てしまって、是非図書館で購読するやう(無理とは思ふが)運動をしてゐます。今月12月号も、
図書館情報大学の山本順一さんの「人文社会系研究者の生態と研究上の倫理」なる、譏誚骨を刺
す一文には誠に溜飲の下がる思ひ。日頃大学で鬱屈を喞ってをられる若手文系研究者の方には精
神衛生上、一読をおすすめします。

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目録速報 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月29日(木)16時10分24秒

湘南堂書店目録(03-3261-3513)25号に、
1656 詩集夏花 伊東静雄 1940 カバー付
がなんと\12.000で出てゐます。みんなで注文だぁ。(ってきっともうないよ。)

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目録速報 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月28日(水)11時58分48秒

閑々堂美術書目録40号に、
4434 左川ちか全詩集 限550 箱 森開社 1983
がなんと\1.000で出てゐます。みんなで注文だぁ。(って一人しか当たらないよ。)
http://www3.tky.3web.ne.jp/~kankando/

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日録2001/11/27 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月27日(火)22時42分40秒

 新村堂書店より注文書が到着。飛騨詩人の戦前謄写版詩集が数冊でン万円!今までこの本屋さん
のことを知らなかったのが不覚とはいへ(これだけの詩書目録つくる古本屋を知らないとはモグリ
といはれても仕方がない)、それが不幸だったのか幸せだったのかよくわかんない程なかなか手キ
ビシイ目録でした。これを種に次回の「四季派の外縁を散歩する」を書く予定です。だけど追補し
たい関連詩集がさらに高値をよんだりして(んな〜こたぁないか)。
 ともあれ極めつけの一冊、和仁市太郎さんの私家版詩集「暮れゆく草原の想念」(昭和8年
高山美踏社工房刊行150部)は、今まで県立図書館所蔵本しか確認が出来なかったmy「幻の詩集」。
大感激の一言です。詩集番付も変動必至!?(でもこれまで愛蔵してきた手製コピー本も、自分
でいふのも何なんですけどなかなかの出来なんですよ。)
 また、美濃詩人のアンソロジー詩集の濫觴ともいふべき「三野風雅」(いきなり今度は江戸時
代か!)の「コピー本」も本日、製本屋さんからあがってきた。蓋しこの詩集を愛読できるやう
になるまで、小生の漢字漢文の修養は続けられるのであります。こちらの装丁も地味ながら大満
足。さきの手製復刻本とあはせて、まずは「Welcome to my shack(蔵書の愉しみ)」のなかで
の御披露といかうかな(今日めづらしく気分高調です)。

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日録2001/11/21 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月21日(水)22時12分32秒

昨日は近江、けふは伊勢。
連日の出張、ハードスケジュールの合間に松阪市の「本居宣長記念館」へ立ち寄ってきました。
以前立ち寄った時は、梶井基次郎の小説「城のある町にて」を偲んでおとづれた城跡でしたが、
今回はここのところのマイブーム「近世蔵書家文人」にかかはる宣長大人への正式な(?)表敬訪問。
このひと、生まれた娘を「飛騨」「美濃」って名付けてて、なんだか親しみがわくのです。
(もうひとりは「能登」。さて、あとひとりできたらどうするつもりだったんだらうね。)
また大人を追善した歌集が展示してあって、たまたま開いてあったページには、最近名前を仕入れた
ばかりの郷土の文人、田中大秀といふひとの名があってこれまた興味をよんだ。やっぱり予習はかかせませんね。
(これでくづし字が読めたらいふことないんだけど。)
記念館の図録やら、昨年初公開された肖像画の複製額なるものをおみやげに買ってきたのですが、
「これがほんとの"美濃の家づと"だな」と、をかしくなった次第です。

P.S.
そして自宅で図録をつらつら眺めてゐたら、なんと末裔のひとりが菱山修三の奥さんであることが判明。
このHP的にもさらに「へぇ〜。」なのでした。

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日録2001/11/19 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月19日(月)20時12分36秒

「古書通信目録」に載った「鯤」(新村堂書店)をとりのがす。
午前中速攻で電話したのだけど、やっぱり東京の人のはうが早く(金曜日?)着いたんだらうな。
これは悔しいや。どこかの古書店で倍額で載るのかな。10年以上この値段で出るのを待ってたからね(笑)。
逃がした鯤は大きいや。

同誌に「山上療養館」を探究書で出してるひとがゐた。
ここでテキストなら公開してるんだけど住所しか書いてないから、よけいなおせっかいはやめとこっと。
インターネット書店についてのアンケートとってるなら、これからはメールアドレスくらいは載せてあげてくださいね。

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日録2001/11/14 つづき 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月14日(水)23時46分01秒

 読了、やっぱり最後まで面白い本であった。話の密度がそれぞれに濃くて温もりのあるオチが
効いてゐる。日録としたのがもったいないやうな、しかしさうであるほかないやうな逸話の連続
であった。古典籍でもない、明治ものでもない、大正末昭和初期に鋭く切り込みを挑んだ新世代
古書店による「古本の達人名言集」でもある。さうして値段の高い理由も納得せざるを得ないの
だった。なにしろ果てしなく広がってゆく好奇心に対する思ひこみで落札したものについてはや
はり相応の値をつけなくては…当然のことながら商売なのである。しかし待った、ここにおいて
道楽が生活を唆した落し前は誰がつけるのかといふ切実な(笑)問題である。蓋しそれを買って
ゆく客といふのはその思ひ込みにほだされて納得済みで買ってゆくひとばかりだらうか。すでに
そんな目立たないものの価値を百も周知で地道に捜し続けてゐる好事家が、絶対的に有利な立場
の古書店が独占できる資料に付した値札に心臓を痛めつつも血相を変へて注文せざるを得ない図
式、つまり著者が謂ふ「いやなものをみた」ところのものをそのまま目録の上に実に同じ感情で
もって引き取るといふ悲哀の仕組については、あざやかに何も書かれてはゐない。さらにそんな
値段のつけられたものを買ってゆけるのはやはり個人ではなく文学図書館などではないのか、二
度と市場には出てこないのだらうな、などとおもへば…、やはり心は騒ぐのであった。

 もうひとつ書かれてゐなくて心ひっかかったことは、昨今増へた店売りのない目録販売の本屋
さん、自分達は市場で現物の古書との(時空を超えた)対話を許されてゐるけれども、客にはそ
れがゆるされないといふ一事には気がついてゐないらしいといふことである。手にとって納得の
いかないものは郵送返品ができるといっても実際にそんなことをすればどんなに嫌がられるか、
それは店頭で手にとった本を棚に戻す比ではない。しばらくは目録が送られてこなくなるといふ
ことさへ経験してゐる自分には、詩人の交友関係に興味があり、作風を見た上で購入を決めたく
ても実際に注文することなどなかなかできないことがよくあるのである。このあたりの不満を、
専門分野が特化してゆく古書店のこれからのあり様に対してストレートにぶつけてみたい気持が
する。

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日録2001/11/14 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月14日(水)13時11分47秒

昨日うわさの『石神井書林日録』(内堀弘著 晶文社新刊)を落手。
これはすごく面白い。「すごく」の意味合ひのなかには私自身の、この書店が扱ふジャンル
への思ひ入れと、店売りを止めてしまひマイナー詩集群の高額化を成功させた現在進行形の
古書店主に対する若干恨みがましい(?)気持もともどもこもってゐるかもしれない。
しかし普通の人がよんでも、「古書」に対する認識をあらためさせるやうな、一冊の本を通
じて今はもう喪はれた時代と風景に思ひを馳せようとする著者の息遣ひにふれるところがきっ
とあるのではないだらうか。私もさういふ読者としてこの本を今一度読み返したいのである。

なんやかやと雑事に多忙でまだ半分しかよんでゐないのですが、久々にBookReviewをupdateしたいですね。

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日録2001/11/5 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月 5日(月)18時17分48秒

「浪速書林古書目録」到着、なんと「保田與重郎特輯」とは。
かつてこのやうなタイトルで古書目録が刊行されたことがあったらうか(神田山口書店が目録
を作ってゐたら出たかもしれませんが)。
表紙がまた嬉しい「日本の橋」の貼函の書影(私は函欠本を所持)です。
まとまってカタログになると壮観。勿論高いものは高いわけですが、みどころも多いです。た
とへば「日本に祈る」(No42 \3.500)など、棟方志功の装釘は中身だけなので函がなくても
痛痒を感じないだらうし、「保田與重郎全集」完結記念に刊行された「保田與重郎アルバム」
(No69 \5.000)も珍しい文献。日本浪曼派やコギトに興味のあるひとなら垂涎の写真集です
が、全集全巻買った人だけに頒布した限定予約本なのであまり市場では見かけないものなのです。

さて、わたくしいつも「函付完本」の憎まれ口ばかり叩いてゐますが、実は今回「コギト詩集」
の函付本を注文。ってこの詩集、あんた持ってるぢゃないの。函も中身も一緒の装丁の筈でしょ、
「函がなくても痛痒を感じない」ってさっき云ったの誰だっけ!?(ごめんね。)

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魚目洞 投稿者:中嶋康博  投稿日:11月 5日(月)00時04分11秒

 全体、本好きが床の間のある書斎を持ったりすると、まづ「なんとか庵」「なんとか亭」と
名前をつけたくなるものである。ごたぶんにもれず吾輩も以前の借家では次のやうな命名由来
の御託まで案じて知友に態々葉書で送り付けまでした。4年前のことである。

  幻流庵ノ記
ゐのくちの奥 三田洞のうしろに山ありドドガ峰といふ ふづきのなが雨しげくして 峰より
あつまりむぐらふの仮寓かこめる篁より一筋にあふれ出でたるを 或朝竹の根ほりくづしてあ
たらしく南窓よりのぞむべきたにがはにしつらへり 笹葉ながれゆくさまひぢまくらにうちな
がめ 雨泉亭雨流庵ともなづけてひとり興がるに 両三日を経ずしてかれたり 雨後をえらん
であらはれたるはかなき泉にもあれ かたみにむなしき涸轍をさらし あきつども訪ひて産みし
子らを日々案じけるを まことにわが詩藻といづれか幻の泉ならずやとも思ひすてて臥しぬ

  まぼろしの泉も枯れて竹の秋

  平成丁丑年七月 百々ケ峰北麓三田洞幻流庵主人記
 

 さて此度親父入院のこと、ゆくりなくも管理を一任されし和室、北向暗寒たるうつろのたた
づまひを如何になづくべきやら、すなはち玄関ほか家中に我が掲げたる魚のレリーフをもって
あやかり戯るに、もはや蕉翁が玉文もじる客気もなく、これより目耕にいそしむ意あらば、

  ながらふて鰥のつぶやける魚目洞

とはいかにや、おそまつ。

  平成辛巳年霜月 百々ケ峰南麓長良魚目洞主人記

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日録2001/10/30 その3 投稿者:やす  投稿日:10月30日(火)22時12分55秒

到着を知らせてもらへず見そびれた今月の「日本古書通信」10月号を閲した。バックナンバーを
学科改組の折に全て廃棄されたときも眩暈を起こしたが、相変はらず一番の利用者である私は
「蚊帳の外」なのである。「コギト詩集」が\4.000で出てゐたではないか。悲しか〜。

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日録2001/10/30 その2 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月30日(火)16時09分31秒

本日は海風舎の目録が到着、高祖保「希臘十字」や半谷三郎「発足」など、椎の木の詩人達の詩
集でほしいものがあっても、昨今の不況を映した相場の見直しをしていただかないとこの値段で
はなかなか手が出ない。残念です。近代文学にくはしい専門店全般についていへるのですが、大
学教員で買はれないことが判った時点で、中堅詩人の稀覯詩集などはもう一度値付けをし直すと
かなんとかならないものでせうか。需要が購買力の無い在野好事家によってのみ支へられてゐる
やうな場合、テキストそのものが読まれないまま古書店目録に晒され続けるといふのは、毎回目
録に目を通す側としてもつらいことです。日夏門下の詩集など、直接の関係者が鬼籍に入るに従
ってやや支持層に空洞化がみられはすまいか。さういふことを反映してバブルといふものはジャ
ンルごとにはじけたりふくらんだりするものではないかと私は考へてをります。さてモダニズム
はどこまでふくらみますやら。

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日録2001/10/30 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月30日(火)07時51分10秒

 昨日「石神井書林目録」が到着。このHPでも特集した戦前名古屋の同人誌が写真版になって
掲載されてゐて思はず目を瞠りました。高木斐瑳雄・野々部逸二・中山伸・伴野憲の四者がは
じめた「友情」や「風と家と岬」といふ雑誌など、当然このHPで紹介しなくてはならない筋合
ひのものなのですが(彼等の名前でインターネット検索すると多分、ここしかHitしないので
は)、かうして一同に出揃ふとまた他所行きの装ひとでもいふのでせうか、専門図書館や大学
経費向きの破格の値段が付されて、とても私達在野の好事家が買ってゆけるやうなものでない
ことを見せつけられた思ひです。「東海詩集」の3冊も今後、この目録の値段を基に値付けされ
るともう入手は諦めなくてはなりませんね。

 一方で、通常必ず10万円以上はする平井功の詩集「孟夏飛霜」の背傷本が6万円で出てゐて
これには手が震へました(フルヘテドースル。)「もっとひどく壊れてくれてれば!(笑)」との感
じです。結局、同じ傷本でも私は別のものをめでたく入手。

 石神井書林社主は単行本2冊目(「石神井書林日録」)を刊行(晶文社)される由、こちら
でいろんな裏話も窺へることでせう。「日録」と「目録」のネーミングのセンスに脱帽。

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日録2001/10/23 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月23日(火)23時47分54秒

今日は病院へ行く前に県立図書館へ立寄ってきました。

江戸の蔵書家たち 岡村敬二 講談社選書メチエ 1996 ISBN:4062580713
異色の国学者富士谷御杖の生涯 多田淳典著 思文閣出版 1990 ISBN:4784208801

を借りてきたんですが、面白さうだと結局買ふわけで。これはもう一種の欲求不満、
どうやら「買ひ物病」の発症のやうです。

いきなり富士谷御杖といふのも変に思はれるでせうが、実はわたくし江戸時代の文学者で
唯一テキストを読みこんだ経験があるのは、その昔800円で買った端本の「萬葉集燈」
(古今書院版 1922 萬葉集叢書第1輯)だけなのです。つまりは保田與重郎の著作の影響
なのですが、彼自身はあんまりこの「あてこすり」の国学者を買ってないことがわかって、
一寸残念でした。ここにきて例の「マイブーム」に触発されて検索をかけてみたら、あれあれ
こんな本が出てゐたのですね、著者が学者でなく在野の人と知ってますます興味津々です。

え?「あてこすり」?「倒言」のことを意地悪く解釈するとかうなるのかな、と。

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日録2001/10/20 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月20日(土)20時59分31秒

この粗笨なホームページに対してたびたびの激励メールを頂戴してをります気鋭の研究者、
西村将洋様より、先達ての日本古書通信目録で話題を呼んだ大阪高等学校の幻の『交友会雑誌』
(8号10号11号)の三冊につきまして、そのコピーをお送り頂き感涙してをります。
コギト前史の状況をつたへる貴重な資料として、全集に所載済の保田與重郎分以外の同人部分
の文芸作品については、いづれテキスト公開も考へたく、このたびの御厚志に対しましてはこ
の場におきましても厚くお礼を申し上げます。本当にありがたうございました。

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日録2001/10/18 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月18日(木)10時48分56秒

本日いま今到着の扶桑書房の目録から昭和10年代の地方詩誌特集分を、
ゴソッ≠ニ全部まとめて買ってっちゃった金回りの良いセンセーがゐるらしい。
昨日のことで東京の人なんだらうけど、うーん、何もかもとはひどいね。
地方でそれぞれ地元の文学運動を細々と研究してゐる人だって、(ここに)ゐるんだけど!

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日録2001/10/15 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月15日(月)21時46分04秒

昨日web散歩してゐたら北海道文学館にすごい資料を寄贈してゐるひとを発見、2000冊の公開
リスト(詩集だけで!)を眺めてたら羨ましくて卒倒しさうになりました…。世の中には物凄
いひとがゐるものですね。

http://www5.ocn.ne.jp/~hbungaku/shiryou/tomeji.html

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日録2001/10/11 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月11日(木)11時50分43秒

今日から職場は学園祭(〜21日)。
土曜日曜日も9:00から17:00まで図書館カウンターにをります(掃除してるかな)ので
みなさんお暇の向きには、岐阜県岐阜市太郎丸、この環境抜群の田舎キャンパスまで
足を運んでお立ち寄りくださいまし。

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日録2001/10/9 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月 9日(火)18時56分24秒

父の再手術終了、目開けて応ふるに安堵する。
このところの意気上がらぬ低調な精神生活、自身も風邪をひいたらしく
安靜になにか心にふさふ読み物とてないか左見右見考へて
結局「渋江抽斎」を選び再読しはじめた。
明治時代の前の年号の移り変はりなんて普通、時間軸の幅でとらへてゐる
ひとは少ないだらう。道純家族身辺の出来事を年表に書き入れながら、
さうしてこれはまた漢字の勉強も兼ねてのメモをとりとりの再読なので、
一向にページもはかどらないんだけれども(これがホントの頁(オオガイ)が捗らない、なんてね)
久しぶりに「修養」と呼ぶにふさはしいやうな読書体験を送ってをります。

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閑話休題2001/10/7 投稿者:なかしま  投稿日:10月 7日(日)10時06分07秒

テレビなんかを観てゐて「あ、このタレント、だれかに似てるな」といふのはよくある。
ここでいふ「だれか」は写真でしか知らない昔の詩人文学者たちのことだが、
最近つぎにあげるひとたちに肖たタレントをみつけた。「で?」って突っ込まれてもそれだけのハナシなのだが、湿気た話題ばかりでもなんなので大変くだらな いけれど、では問題いきます!(笑)
答へはもうひとつの掲示板で。

1. 三好達治
2. 伊東静雄
3. 保田與重郎
4. 田中先生
5. 日夏耿之介
 

http://www68.tcup.com/6813/cinema.html
1. 夏目房之介
2. つげ義春
3. 爆笑・太田
4. 段田安則
5. アラーキー

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日録2001/10/2 投稿者:中嶋康博  投稿日:10月 2日(火)12時33分34秒

関係者ご遺族や若い研究者の方からメールを頂くのはなにより嬉しい。
全く更新が止まってしまったやうなHPに毎日数件ながらアクセスが
あり、私事にかまけて保守をおざなりにしてゐることが申し訳ないです。

いまになって古書通信に載った「大高交友会雑誌」欲しくなってきた。
(馬鹿ですね)
getされた方、保田與重郎以外のコギト同人の文章をコピーして送って
下さらないでせうかねぇ。テキスト公開したいなぁ。

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日録2001/9/19 投稿者:中嶋康博  投稿日: 9月19日(水)22時13分21秒

いくつか最近の目録にも目を通して、めぼしい本もないことはなかったですが
今ちょっとここに紹介の労をとるほどの気持が湧きません。
自分で注文した本もあるのですが、それはその、
欲しい本はやっぱり元気なうちに買はないと意味が無いぞー、後悔するぞー、
といふ自戒めいた気持から、思ひきって注文してみたのであります。
売りきれてゐたら仕方がないですけれども。

最近読んだ本では「書藪巡歴」といふ本が面白かった。
かういふ文章を書ける人こそが随筆家を名乗って欲しいものです。

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日録2001/8/31 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月31日(金)21時28分28秒

本日は田中克己先生生誕90年にあたります。

10年前の今ごろは、何してたらう。東京でゆきづまってゐたころだ。
先生のお宅へ伺っても詩も書けずに暗い顔をしてたやうな気がする。
それから半年の間に、会社をやめ、ネパールへ行き、帰ってきてからは
失業保健でかつがつ食ひつないでゐるうちに、相次いで先生と奥様が亡くなってしまひ、
車の免許をとり、あはただしく帰郷することが決まり・・・。

10年ひとむかし。30代も夢のやうに過ぎてしまった気がします。

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目録情報 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月23日(木)09時23分37秒

ぐろりあ会目録より
古書サンエー syamaji@tky3.3web.ne.jp

1790「詩集山鴫」田中冬二 昭和10年 函欠背痛み \2.000

興味のあるかたは是非手にとって戦前詩集の魅力にふれてみては如何でせうか。

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日録2001/8/16 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月16日(木)23時38分34秒

「日本古書通信」購読切れたのに送られてきていた由、
お金払ってないから封も切らずに積んであったさう。
今月はたまたま見ることが出来たのだが、欲しい本が・・・ある!
かういふのは目の毒だね。もし寄贈して下さるなら図書館宛で(笑)。

海港詩人倶楽部の詩集、なんとか手に入りますように(黙礼、拍手ニ拝、だっけ?)
古書店の内政干渉をゆるさず。なんてね。

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カウンター5000記念 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月13日(月)22時10分48秒

いつもindexページは端折って直接ここをみてるんだけど、
じ、自分で踏んでしまった。偶然だよ・・・。

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日録2001/8/12 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月12日(日)18時30分16秒

岐阜三田はともかく富山の滑川高校も野球負けちゃったね。
富山は懐かしい青春の地だし、滑川高校も広報の訪問で行ってたけど、
なにより校歌が聞きたかったんだよね。なぜって、
北園克衛作詞だもん。

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日録2001/8/7 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月 7日(火)12時42分17秒

昨日一日夏休みをとったので、「古本倶楽部(中野書店)」目録を受け取り損ねてしまった。
しかしこの、古本倶楽部と中野書店の関係、いまひとつよくわからんナー。
今回木下夕爾の詩集「生まれた家」の署名本をのがしたんだけど、こんなすごいものどう考へ
ても天下の中野書店が\12.000で売ってくれるやうな代物ではないはずなんだけど。
序でにNO.1391函欠の「父のゐる庭(津村信夫)」もなんと\2.000で出てゐます。セドリする気な
どないので在庫は確認してませんけど(03-3288-7862)。
とにかく時々ポツンと入ってる「古本倶楽部」の出物には目が離せない?!

伊勢丹の目録で閑々堂さんより嬉しい買ひ物をさせて頂きました。
この場を借りてお礼申し述べます。ありがたうございました。

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日録2001/8/5 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月 5日(日)10時39分49秒

 八戸圓子哲雄様より「朔」146号ご恵送頂いた。今号は創刊30周年といふことでこれまでの交換詩
誌から創刊号の編集後記を特集にして引用掲載してゐる。田中先生の第5次「四季」のほか、矢野
敏行さんの「季」平野幸雄さんの「絨毯」など、若若しい初見の文章を興味深く読んだ。
 また圓子さんの「村次郎先生の思い出」がいよいよ本題に入ったといふことで、私にはこちらも
目が離せない。タイトルから云へば実に長い「前フリ」でした(笑)。いろいろ醒めた物言ひをし
ても、流石に当時の詩人には胸に熱いものが流れたことでせう、圓子さんの文章からは、文学の話
を交したいのにそれに足る人物も当地に少なく鬱屈してゐたに違ひない詩人に、突然、直球ど真中
へ全身でぶつかってくる若い詩人がやってきた。最初は暇を持て余してうずうず青年を待ってゐた
筈の詩人が、やってきた若者の性格を知ってほっと胸をなで下ろすと、堰切ったやうに今まで詰ま
っゐた自説を年少詩人にそそぎこむ様子、さうしてやうやく咽のつかへが下りたかと思へば、逆に
今度は弟子志願直訴を受けるに至り、半ばたじたじとなる有様。一夜にして詩人冥利につきる扱ひ
を受けるに至った村次郎といふ人物がまざまざと目に浮ぶやうです。

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日録2001/8/2 投稿者:中嶋康博  投稿日: 8月 4日(土)08時11分40秒

夏休みをとって新岐阜百貨店古書の市へいってきた。とにかくも「萬國旗」(近藤東150部、
昭和16年)が買へて嬉しい。これまた平光氏旧蔵本のやうであり「詩宴の会」案内通知の反
故が栞がはりにはさまさってゐた。今回の市は古書店よりも切手コインの店の方が多いくら
ゐで、鉄道グッズをならべる店もありました。みてるうちに欲しくなって「合図灯」(駅員
がプラットホームでふるやつ)を買ってしまった(\5.000)。「合圖燈」のロゴも古めかし
い円筒形にラッパ型の照明灯が開いてゐるしろもので、鉄道用品だけあって流石に造りがし
っかりしてゐる。吊ランプやトランク、星座早見などとともに、詩的なインテリアグッズと
いふのか、我が退嬰趣味を象徴するがらくたがまたひとつふへてしまったといふ次第。

そして町へ出た時のお決まりのお昼は名岐亭の串かつ屋。不思議に古書市帰りの人が知って
ゐてここを利用するものらしい。しみったれた月給取りがなんとなく安心するやうな雰囲気
は、神保町の裏通りにひっそりとたたずむ食堂と似通ったものがあるやうだ。「さぼうる」
みたいな喫茶店もあってくれると嬉しいんだがな。

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/1834/kantera.jpg

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日録2001/7/28 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月29日(日)15時48分28秒

 翌日、一路さらに東上して八王子に至り、田中克己先生の墓前に5年ぶりか位に参上した。
Germanist氏よりの諫言を俟つまでもなく、ここのところぴりっとした心持をもてない自分を曝し
にただ頭を垂れに参ったのである。けだし今の職場も天上から先生が引き合はせて下さったものと
思ひなしてゐた自分であったから、四十にして鬱勃と傷心をかかへてゐる自らの不甲斐無さを御報
告して、活路を仰ぐ気持なかったといへば嘘であらう。
 何の虫の知らせか、今日家へ帰ってみると先生の長女依子さんから、長兄史氏の訃報(7月11日)
をつたへる手紙が届いてゐた。記された「不条理」「神への不信」の言葉が私にいたっても重く受
け取られた。
 詩人といふ言葉が釀す雰囲気、それは自分にとって肩書きではない、それは冠する資格ではなく
節操を意味する格率である。それを大切に思ふこころだけが辛うじていまの自分のありやうをささ
へてゐるやうに思ふ。
 謹んで御冥福をお祈り申し上げます。

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/1834/20010728.jpg

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日録2001/7/27 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月29日(日)14時16分50秒

 ポンコツの愛車に乗りこんで岐阜を朝4時発。霧雨の木曽路を北上してゆくとやがて塩尻峠を
越えるあたりで霽れてきた。さうして諏訪湖を後にし、小さな牧場の央をとほって上がる高原道
路が踊場湿原にさしかかったときには、眺望とともに快晴の様相を呈してきたのだった。明日の
日程を考慮して、今日はそのまま車山の肩まで車で登りデイパックひとつで散策することに決め
た。醜悪なドライブイン(道路の恩恵を被ってをいて何だが)と一線を画した、昔からある山小
屋「ころぼっくる」のテラスから先はもう別世界である。このところの連日の猛暑は下界と同じ
であっても、雲上では直射日光の紫外線だけが強く、日向にゐると汗ばむけれど北の風は涼しい。
ただもう径は乾き切っていて、普通ならぬかるみをつくってゐる土がどこもかしこもココアの粉
みたくなってゐる。後ろから、漫画チャーリーブラウンの友人「ピッグペン」よろしくそれを舞
ひ上げながら十数人の少年グループが疾走してきて、土ぼこりをしたたかお見舞ひされてしまっ
た。引率の先生を先頭に、彼等はここにはゐない先生の話題を口にのぼしながら景色も見ないで
ずんずん歩いてゆく。聞くともなしに彼等の会話に懐かしい遠足気分を味わふうちに、はや蝶々
深山の頂きに到着してゐた。少年達をやりすごし、しばしの休憩。ここから先が(随分お手軽に
なってしまったが)霧ケ峰の奥の院である。径を下ってふかぶかと四方に丘陵を眺める位置、こ
のホームページのタイトルバックに貼られた写真がさうなのであるが、そこから、ぼくはいつも
少し枝道に入るとそこいらに顔を覗かせた巨岩石の上で休むことにしてゐる。一番のお気に入り
の場所だ。むかしそこでひとつの詩をつくった。
 

  昼寝

山の頂きのおやしらずのやうな岩に立つ
あたたかくかわいたその地衣<コケ>の上でねむる
風をはらんで熾ん<サカン>に燃えつきてゆく夏色の雲たち
誇り高く青空は孤独だ
さえぎるもののない深い陽射しは
僕のまぶたを金色の血に染めてながれた
 

高みを翔る鳥の叫び声がきこえる
日射しは知らぬ間にゆつくりと傾いてゐた
目を覚まし また新しい汗をかく僕の
真黒に日焼けした里心に
次々と赤蜻蛉がとまつて風向きを確かめてゐる
 

 いまのぼくには当時のやうな、真夏の青空にもどかしく訳もわからない予覚を見極めようとす
る成心はない。ふたたびはやってこないおのれの青春が、またやってきた同じ季節の同じ場所で
おしみなく回顧されるばかりだ。なに故に?何もぼくを迎へてくれなかったのに?ぼくはあの日
あの空の下で無益な憧憬をほしいままにしただけではなかったか。それがゆるされてゐた、とい
へばいへるであらう。青春の意味を年齢と共に身体で悟るやうになったいま、同じい場所の只中
で、ぼくは新しい焦心に直面し、岩の上で瞑目するのだった。

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日録2001/7/25 投稿者:なかしま  投稿日: 7月25日(水)12時53分50秒

なんかしらん、きがついたら図書館になんと「日本浪曼派」がはいっとるではないか。

要望を出していたものがこの一月、知らないうちに入荷してゐたといふことなのだが、
合冊4冊で42万もしたといふのに、要望出した本人には一言も連絡をくれないし、
おまぬけなことに、そんなことも知らずにいままで図書館で働いてゐたといふわけ。
年度末予算消化のために私の要望が奇跡的に通っただけのことにすぎないのは判ってるけど、
そしてもう3ヶ月もなるのに気がつかなかった私が迂闊であったといへばいへるんだけど、
薄情だねぇ。
私の、この図書館における立場といふものも聊かわかって頂けるかとおもふ。

嬉しいはうれしいンだけど・・・なんか気ぬけてしもうて、情けないわ。

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日録2001/7/24 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月24日(火)21時07分59秒

暑中御見舞申し上げます。

8/2の新岐阜古書展目録到着。
お目当ては目録を一覧したひとならばわかるはず。当日は夏休みとって一番にのりこむ予定です。
詩集をつかんでさらにうろうろしてゐる不審人物ゐましたらまずわたしと思って頂いてまちがいなし、であります。

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日録2001/7/16 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月16日(月)23時23分26秒

「絨毯」50号到着、乾直恵特集とのことで、自分も今回は作品論ではなく、柄にもなく散文詩で
もって側面から唱和してみました。おって平野さんを通じて酷評も聞かれることだらう。
        (Book Review「絨毯」目録更新しました。)

 また、勝井隆則さんの龜鳴屋よりは『藤澤清造貧困小説集』(すごい題ですねー)到着。
 手触りのすばらしい藍染布による造本感覚にうっとり。つげ義春氏の挿絵が効いてゐて、本の
様子は一寸見たとこ青林堂の豪華限定版漫画本の様相を呈してゐます(笑)。
 字の大きさ活字の配分などがまた、本漢字、歴史かなづかひを使用してゐるにしてはすっきり
としてゐて、本文用紙と相俟ってまことに懐かしい雰囲気づくりを醸し出してゐます。
  内容はこれからゆっくり読むこととして、まだお求めになってゐないひとは、すでに絶版と
なってしまった『宮崎孝政全詩集』同様、稀覯本になること請合ひのこの本を何はともあれ急ぎ
注文せられるべし。
(小説集にしてたった500部限定とは!つげ漫画よりも刊行数が少ないですね。)
 

http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku/

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(^^) 投稿者:cop  投稿日: 7月14日(土)23時09分20秒

中嶋さんは、すごく詳しいのですね!ホント、脱帽です。

「おさなご」は、同名のが三作品もあるのですか!知りませんでした。
年代的に考えると、やはり、戦後まもなくで、
お金がないから、まりや本を買ってやりたくても買ってやれないという
時代背景が見えますね。
これで、「お金がもったいないから買わない説(?)」は
消えますね。生徒達に、話し合いをさせて、自分たちの意見を言わせ、
ラストで、時代背景を説明してやればおもしろい授業展開に
なると思います。(来週の水・木が授業です)
本当、ありがとうございました。

今回、詩の単元で、詩の奥深い魅力を感じました。
また来ますねー!

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「おさなご」 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月14日(土)10時42分06秒

「おさなご」は昭和23年9月刊行の「路地の井戸」といふ詩集に収録されてゐます。
その前の詩集に収録されてゐる詩編が後記によると昭和21年10月までの作品から採られたものですからそれ以降昭和23年夏までといふことになりますね。
この詩集は私が「詩集あつめ」をするきっかけをつくった詩集でして、私にとっても思ひ出が深いです。ちなみに「おさなご」といふ詩は、同名で三篇入ってゐ ますが、copさんの仰言るのは一番印象的な次の作品でせう。私もこれに参ってしまったのです。

 おさなご
                大木実
おもちや屋の前を通ると
毬を買つてね
本屋の前を通ると
ごほん買つてね と子供が言う
あとで買つてあげようね
きようはお銭(かね)をもつて来なかつたから
私の答もきまつている
子供はうなづいてせがみはしない
のぞいて通るだけである
いつも買つて貰えないのをしつているから

ゆうがた
ゆうげの仕度のできるまで
晴れた日は子供の手をひき
近くの踏切へ汽車を見にゆく
その往きかえり 通りすがりの店をのぞいて
私を見あげて 子供が言う
毬を買つてね
ごほん買つてね

(あ、今いま甥っ子姪っ子軍団がやって来た。ゲームボーイ片手に、サガミだブロンコビリーだと五月蝿いこっちゃ、あぁ、行くいく、いくってば!)

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ご親切にありがとう! 投稿者:cop  投稿日: 7月14日(土)08時16分20秒

非常に参考になります。

(^^)

もしわかるようでしたら、
「おさなご」を書いた年代がわかれば、なおうれしいです。
おさなごを書いた時代背景が戦争中・あるいは戦後であれば、
「まりを買ってね ごほん買ってね」と言う子供に、
”なぜ買ってやらないのか?”という理由が
「戦争中・または、戦後なので、  お金がないから  貧乏だから  」
と、なると思うんです。

”お金がもったいなく、親がけちだから”ではないんだよ、
という根拠がほしいので。

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詩人大木実さんについて 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月13日(金)12時30分17秒

copさん、はじめまして。とり急いで簡単にまとめてみました。

大木実(おおきみのる)

大正2年5月東京生れ。
平成8年4月17日死去。享年82歳。
若くして母や義母を次々に喪ふ。室生犀星や佐藤春夫などの抒情詩に親しみ、昭和初年、
大正口語詩の延長線上に興った同人詩誌乱立時代のなかで詩的出立をする。私小説を好
み尾崎一雄に師事しながら、温和で日本的情緒を表出する抒情詩人として第二次「四季」
にも参加。西洋的な抒情が主流だった「四季」同人の中にあっては異彩を放ち、けだし
戦時中の「四季」の性格付けをする上で杉山平一とともに重要なキーパースンとしての
位置を占める。しみじみと家庭を歌った作品に定評がある。戦後は鴻巣市に居を定め、
これまた私淑するシャルル・ルイ・フィリップのごとく大宮市の宮使いに勤しみ、傍ら
詩作に専心した。

昭和14年処女詩集「場末の子」(砂子屋書房まなごやしょぼう)を初めとして数多くの詩
集をもつ。昭和 59年それまでの膨大な詩作から厳選した「大木実全詩集」(潮流社)を公にした。

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こんにちは 投稿者:cop  投稿日: 7月12日(木)23時10分51秒

大木実 で、 検索しましたら、こちらのページにたどり着きました。
僕は小学4年担当の学習塾の担任をしていまして、
大木実「おさなご」を次回の授業で扱う予定です。
そこで、お聞きしたいのですが、大木実の、略歴を教えていただきたいのですが。
いつ生まれたのか、現在、生存しているのか、わからない状態なんです。
どうか、わかる範囲でいいので、..お願いできますか?
 

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日録2001/7/12 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月12日(木)14時43分20秒

BOOK REVIEWでも紹介させて頂いた『宮崎孝政全詩集』を出版された勝井隆則さんが係はってゐる(と思はれる)
龜鳴屋といふ金沢の書籍編集発行所から「出版案内」メールが入りました。
以前ご連絡させて頂いた折に勝井さんが「現在かかりっきりなんですよ」と仰言ってをられた藤澤清造といふ
破天荒な人生を送った郷土出身の小説家の集成本がたうとう刊行の運びとなった由、
紹介ページを覗いてみるとこれがなかなか面白さう!!
もう、早速注文しましたよ。表紙絵がつげ義春といふのがまたふるってますネ!

また、本が到着したら読後感などBOOK REVIEWにてお知らせしたく存じます。

本日サーバーが一時ダウンした模様にて皆様にはご迷惑をおかけ致しました。

http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku/

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日録2001/7/5 from伊勢市役所 投稿者:中嶋康博  投稿日: 7月 5日(木)11時10分51秒

只今高校訪問出張中。市役所に地図をもらいに行ったら自由に使へるパソコンが設置してあったので
早速書き込んでみました。ついでに伊勢市の北園克衛生家のことを書いたページを勝手に
「お気に入り」に追加してきたりして(笑)。
今日も、ものすごく暑いですねー。
今週末大学ではオープンキャンパスを行います。高校生のみなさまどうぞよろしく。とこんなとこで広報活動してどうする。(勤務中につきこれにて失礼。)