(2006.3.23 up 2006.11.7)
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やまかわ ひろし【山川弘至】『山川弘至遺文集』2005


山川弘至遺文集

山川弘至遺文集

山川弘至 遺稿文集

平成17年11月18日 桃の会刊

314p  17.2cm×10.8cm 並装 非売

まほろば同人
まほろば同人 昭和17年9月

前列左より 山川弘至(戦死) 入谷剣一(戦死) 牧田益男(戦死) 桜岡孝治
後列左より 長谷川優(戦死) 喜志武彦 林富士馬 牧野徑太郎

Tふるさとの四季

ふるさとの四季 10-14p
幼年時代 15-32p
友に与ふる書 33-35p
夏日雑感 36-38p
雪ふるくに 39-47p
奥美濃高原を想ふ 48-51p
惜春 52-59p

U評 論

薩摩守忠度 62-63p
恩師への書簡 64-69p
亡びゆくものの詩 70-85p
あし原にまじりそめたる 86-101p
日本の詩心 102-107p
歌ものがたりの伝統 108-110p
国風の発想 111-118p
神道と文学との関係 ―鎮魂の文学― 119-130p
浪曼的日本詩心の讃仰 131-142p
悲願の歌 143-148p
柿本人麻呂 149-154p
詩人の責務について 155-165p
望郷の文学 ―伊勢物語私記序説― 166-178p 
帰郷者宣言 179-181p
渦心 182-185p
「帰郷者」後記 186-187p
創造と行為と 188-193p
近時偶感 194-208p
二千六百二年宣言 209-214p
「まほろば」後記 215-216p
古代の郷愁について 217-231p
日本神国観に徹せよ 232-234p
『萬葉集の精神』について 235-238p
近世文藝復興の精神について ―民族の神々の恢復― 239-244p
保田與重郎氏の文藝 245-247p
歴史の抒情 248-260p
「半蔵の悲しみ」について 261-267p
古事記の精神 268-284p
歌集『かぎろひ抄』について 285-293p
教練について 294-295p
修養日誌 296-298p

V 祭詞集

氏神産土神遥拝之諄詞 300-302p
宣誓詞 303-304p
皇大神宮遥拝之諄詞 305p
倉田百三大人之命祭詞 306-310p

あとがき 311-314p

   あとがき

 さきに上梓致しました、歌集「山川の音」、詩集「こだま」につづいて、弘至の残しました散文を集めて一本に致しました。

 昭和十八年六月、大東亜戦争に応召致しましたのち、その十月に評論集「国風の守護」が出来てまゐりました。その編集は自らした筈でございますから、 ここに収めました評論などは、その際の選択に洩れたものでございませう。数への十九歳で書きました「幼年時代」。大学予科時代の作文数篇。 昭和十六年に同志と創立致しました「帰郷者」(のちに「まほろば」と改題)ほか、いろいろな場所に掲載されました評論。数篇の「祭詞」。また未完のまま残ってをりました評論や、 片々のものまで収録致しました。

 弘至は生れながらの詩人でございました。評論に致しましても、祖国の歴史と使命を護るべく、詩人の魂で覚悟しほとばしった熱情のことばでございます。その文章は、 内から溢れるものを一気呵成に書いたものでございませう。読み返して推敲するといふやうな光景を想像出来ません。止むに止まれぬ情熱の吐露で、理性的、理論的に構築された評論とは、 趣を異にしてをります。
 彼は時局に迎合した底の浅い日本主義を排し、神々の時代から悠遠につづく日本の歴史の抒情を伝承しようと致しました。

  我らは如何なる乱世にあっても、日本に流れる述志と相聞の流れをたっとびたい。(184頁)

 古を慕ふ気持が強い反面、徒に懐古の情にひたるより、明日への希望と責務を思ふ人でございました。戦争の末期、敗戦を予知しながら、戦後の文化の復興のための言論、 行動を考へてゐるのではと想像してをりました。

  戦後に来る文化的施設こそ、我らの最も意を注がねばならない所である。(98頁)

  我々が生きて この戦ひを超えたならば 我々は本当につよい決意をもっ て 充実した世界再建の生涯を生きねばな叶ません。(昭和二十年六月十七日 京子宛書簡)

 しかし運命は彼に明日を与へず、終戦直前に米軍の熾烈な爆撃によって、現身の生命を奪ひました。彼の死を私は今なほ痛惜し、無念の思ひが消えませんが、 単に戦争の犠牲者といふ風に思ってをりません。

  我らの国の歴史が、偉大な使命に向かって成敗をかけて進んでゐる日、我 らの国の詩人らのうたふ詩といふものが、まことに捨身して道を正すといったごとき悲痛の切迫にまで到った・・・。(160頁)

  我ら今こそ青春の特権と義務の為に死なねばならぬ。青春の特権と名誉と を守り、  その青春のみにゆるされた正義の擁護と行使のために死なねばならぬ。(213頁)

 彼は壮烈な戦死によって、祖国の非運に殉じ、その高邁悲痛な志を、捨身して後代に残したのではないでせうか。詩人山川弘至の魂の声を、 この一冊からお読みとり頂ければと願ってをります。
 編集には、乙犬拓夫氏が専ら携はって下さいました。校正は同氏と、石田圭介氏のお骨折りを頂きました。走りがきの原稿の大方を浄書致しましたのは、弘至の妹、敏子でございます。 また天声社の誠実な仕事に感謝致します。

   平成十七年秋      山川京子

奥付


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