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たかしま たかし【高島高】『北方の詩』1938


北方の詩    北方の詩

『北方の詩』

高島高 第一詩集

昭和13年7月1日 ボン書店刊

73p 22.1×15.3cm 上製 函 ¥1.00

扉   見返し

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参考資料:昭和40年刊行 再刊復刻版

再刊復刻版

再刊の序

高島高君が逝去せられてより十年を経ました今、故人の愛してやまなかつた郷里の滑川に、記念の詩碑の建立を見ましたことは、およそ故人を知るほどのものにとって、 まことに嬉しいことであります。また故人の霊もどんなにか喜こんでおることと察せられます。故人の純潔高貴な詩魂は、この詩碑によつて永遠に故郷と祖国との未来を照らすのであります。 毛してそれはまた、世界にむかっての日本の心からの訴えでもあり祈りでもあります。
さらにこの機会に、故人の処女詩集「北方の詩」が再刊せらるることは、これまた私どもの喜びであります。故人の生涯を賭けた感受と祈念は、この一巻にこめられておると申してよろしいでしよう。 この本をひもといて居ますと、故人がしたしく呼びかけ語りかけてくる思いがします。それは永遠に生きてゐる故人の声であります。それは北の山と風雪と怒涛との中から、 烈しく力強くなつかしくやさしくひびいて来て私どもを励まし力づけてくれます。それは私どもが雄々しく生き抜き、立派に責務をはたすように、まことの勇気を与えてくれるものであります。

昭和四十年五月
                               浅野 晃

略歴


コメント:モダニズム稀覯詩集の出版で有名なボン書店最後の刊行書。出来栄えはしかし、見て分かるとほり凝った造りではない。むしろ後年の臼井書房刊行書の造りに近く、 なぜボン書店に刊行が依頼されたのか、経緯は不明である。 以降の詩集の装釘を見ても、本人に詩集の造本への拘りは感じられない。
 その詩情は、『氷島』時代の萩原朔太郎に序文を仰いだやうに、北方への凛冽たる意志と思慕とを基底にした抒情である。朔太郎は序文で一言したやうに、 これからの若い詩人の為には、むしろ自分が最後に到着したこの境涯からの脱出と転生を希望してゐる。にも拘らず、このあと時代に戦争の暗雲がたちこめるなか只管沈潜するにまかせた彼のポエジーは、 戦後に至っても変ずることはなかった。郷土にあって詩作する意味が一念に込められてゐる彼の詩に、やがて淺野晃と同様、宮澤賢治や良寛といった北方の偉人に対する思慕がうまれ、 律せられた自身がおだやかにほぐれてゆく晩年を、予感として遺すにとどまった詩人の不遇が思はれる。

 富山県の詩人をいふ時、田中冬二や瀧口修造の名は揚がるが、故郷にあって風土に根差した詩作を続けた彼をこそ、名古屋の高木斐瑳雄、高山の和仁市太郎とならべて、 近代郷土詩人のいちばん北に指を屈すべき三連星に数へられてよいと思ってゐる。

 ここに稀覯書となってゐる処女詩集に合せて、第三詩集を公開し、生前の詩業を明らかにすることとした。お気づきの点は御教示をおまちします。


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