(2020.02.07up / update)
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かなざわ じんえい【金澤甚衛】(1891-1981)


『小草(をぐさ)』

初版:大正8年7月16日、再版:同年12月16日 白水社 刊

 [160p] 19.2×13.0cm 上製 \1.00


「まこちゃん」の詩集

 

  先日、オークションでとある古本の詩集を入手した。無名の詩人夫妻が亡き愛児を追悼して刊行した、所謂「饅頭本」と称される一冊である。

 

 『小草(をぐさ)』 といふタイトルで、刊行は大正8(1919)192×130mmの 上製布張り、ノンブルはないが160p余の一冊で、著者は「金澤甚衛」と「金澤まつ子」とある。

 

 発行所の白水社は、雑誌『ふらんす』や文庫クセジュで知られる神田神保町の老鋪出版社である。私が入手したのはこの種の本には珍しい再版本であった。定価一円と記載され、奥付の裏には読売新聞・東京朝日新聞・婦人新報からの感想が付されてゐる。

 自費出版と思しい本だが、白水社の初代社長、福岡易之助が秋田出身(1885年 生)であることから、出版には同郷の誼が与ってゐるのではないだらうか(著者金澤甚衛1891年生)

 「初版:大正8716日、再版:同年1216日」とのクレジットがあるが、関東大震災と兵燹に遭ひ殆ど現物が残ってをらず、国会図書館にも所蔵がない。

 

 さて内容であるが、一読、やさしい口語によって綴られた、愛児「信ちゃん:まこちゃん」に捧げられた追悼の抒情詩で埋め尽くされてゐる。どれが父の作品でどれが母の作品であるか、内容から判断するしかないのだが、うち幾篇かは今読んでも、子のない私のやうな者のこころにも響く、大正8年の作とは思へぬ作品であり、その一途な祈念のさまにおどろかされた。

 



   


 

  

 

 












 

 そして金澤甚衛とはいったいどんな詩人なのか。googleっ てみたところ、雑司ヶ谷墓地にある「まこちゃんのおはか」を建てた主であるらしいことも判明した。

 

古書 往来座さんによる探訪・探索記
2009/2/5 https://ouraiza.exblog.jp/10286727/
2012/6/21 https://ouraiza.exblog.jp/17680896/
2014/2/12 https://ouraiza.exblog.jp/21415226/

 

 くだんの墓石はこれまでも「素性不明」として語りつがれ、都市伝説になってゐるといふ話である。詩集中には「金澤信之墓」なる碑銘が記されゐるから(隣に小川未明の亡嬢の墓があったといふ)、 斯様に目をひく「まこちゃんのおはか」は、のちに建て直されたものであったかもしれない。

 

 クリスチャンの中流家庭のひとであった著者は、また内務省の役人でもあったらしい。鎌倉から出てゐた『葡萄樹』といふ「宗教藝術雑誌」にも関係してゐたやうだ。そして戦後は郷土史家として全国の史料、とくに五人組帳や交通関係史料の収集で知られる存在となったらしい。明治24(1891)秋田県由利郡生まれ。昭和56年(1981年)神奈川県藤沢市にて亡くなってをられる。(以上、ネット情報より拾った。)

https://bit.ly/2tFumRo (国文学研究資料館)

https://bit.ly/39eu2Ij (日本の古本屋)

 

著者金澤甚衛御夫妻および雑司ヶ谷に眠る信ちゃんの冥福を祈り、ここに詩集の全文PDF を掲げます。(ogusa.pdf21Mbあります。)


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