糸魚川で、良寛禅師を思慕した相馬御風の旧宅に立ち寄り、一階の仏間 から眺められる雪落しの為の坪庭や、浜風が通り抜けて行く二階の書斎。宮大工の旧家の出であった彼の神経が行き届いた日本家屋のゆかしい造りを堪能してき ました。ことさら冬はさびしい故郷に帰り、当時と同じ北越の風に吹かれる環境に身を置いて良寛を祖述し続けた相馬御風の後半生は、隠栖といふより、“生涯 現役”の中身を、真に自足した後半生を送ることに見出し得た田舎暮らしの理想でありませう。床の間には、戦前に頒布された桝澤清作の、私が入手したのと同 じ鋳像が飾られてをりました。(2013.5.23訪問)