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【江戸後期詩人たちの周辺】

『増補書状便覧』 弘化2年 大坂秋田屋市兵衛(宝文堂)刊


江戸時代の往来物(手紙の教科書)を書き下してみました。
(ボロボロになった部分には裏打ちを施し、表紙を付けて製本しました。)

早稲田大学図書館所蔵の端本(請求記号 Call No.文庫06 00918)の方が摺り文字明瞭のため、
後半の欠損部のみを所蔵本で補った画像テキストを用意しましたので御利用下さい。77mbあります。
※不詳・誤謬について御教示頂けましたら幸甚です。


手かき文よむことは、物学の始にして、難波の
海の深からずとも、浅香山のあさはかなら
ぬぞ。見所はあれと、昔人はいはれき。此わ
ざにつたなきは、姿かたち清らなりとも、見おと
りせられて、かの玉の杯座なきがごとく、
堪がたくぞおもほゆれ。茲に御さとの
御民、龍章堂ぬしは、手かく筋に利に
して、其筆の跡の摺巻に、物せられしも
いとおほかるに、はた今夏、其とも宝文堂(秋田屋市兵衛)の
あるじの書に依て、四時の祝ひ文より、天とふ
雁のつかひ、何くれと葉(えふ)ある筆ともを書
つめて、書状便覧と名づけなれたるは、かの
難波津あさか山を手習ふ童人にも、逸はやく
其山の言葉のはやしふみわけ、其海の
ふかきこころをもしらせんとの、心かまへ
なりかしと、おもふ侭にかくなん天保ほし
甲辰にやどるとしの冬至、津たの家の
  窗の下に春樹(※不詳)しるす(数)




 目録

年頭祝儀状 1
初荷仕送り状 3
薮入見舞状 4
売家肝煎状 6
三月節句の状 8
奉公人頼み遣はす状 10
奉公人面謁(めみえ)の図 10
葵祭誘引状 12
婚礼祝儀状 14
五月節句の状 16
梅雨に人を招く状 18
暑気見舞状 20
暑気見舞状図 20
神事案内状 22
七夕に遣はす状 24
盆会祝儀状 27
八朔祝儀状 28
八朔儀式の図 30
月見に友を需むる状 31
九月節句の状 33
物の訳を尋ねに遣はす状 35
猪子の状 37
手伝人頼み状 39
誓文払の図 40
顔見せ見物申し合せ状 42
爐振舞ひの状 44
年忘れを催す状 45
歳暮祝儀状 47
開店案内状 49
開店案内状図 49
商ひ先引き合せ状 51
参着案内状 53
留守へ来る人に遣はす状 56
弟子奉公世話頼み状 57
弟子奉公世話頼み状図 59
欠け落ち追手状 60
相談に付き人を招く状 62
道具借用状 64
賃借り物返済状 66
注文催促状 60
注文催促状図 69
寄進挨拶状 71
占ひ事頼み状 73
約束変改状 75
閉門見舞状 76
代筆頼み状 78
木曽願書の図79
遠国洪水見迴(見舞)状 81
遠国失火見迴状 83
金子無心状 86
金子断り状 88
金子断り状図 89
師を需むる状 91
役付き虚実伺ひ状 92
疱瘡見舞状 94
売物値段聞き合はせ状 95
手跡頼みたる礼状 97
奉加事取り持ち状 98
勧化詠歌踊りの図 99
初めて逢ひたる人に遣はす状 101
国元へ引越しを告ぐる状 102
他の品を乞ひ需むる状 104
振り市案内状 106
会席不参断り状 108
詩會の図 109
算用違ひ咎め状 111
買物値切り状 113
替銀頼み状 115
飛脚間違ひ状 116
得意先へ届け言状 118
得意先へ届け言状 119
主家へ暇を乞ふ状 121
医者を請する状 122
医者断り状 124
病後初立ち見迴状 125
急便死去知らす状 127
死去悔み状 129
仏参の図 129
誂へもの追ひ状 132
本復祝ひ状 133
旅より帰りて遣はす状 135
内証聞き合はす状 137
中違ひ挨拶状 138
和睦酒宴の図 139
入家歓び状 141
安産知らせ状 143
元服悦び状 144
分家歓び状 146


 同じく首書総目録

文房四友の起 口の1
難波津安積山の歌 口の3
いろはの起こり 口の3
扁旁冠字尽 口の5
百官名尽 口の7
東百官名尽 口の7
萬折形図式 口の8
御改正服忌令 口の9
五性有無気の事 口の10
破軍星繰方 口の11
年月塞がり方の事 口の11
十二月の異名 口の12
仮名書替并訳字 1
片仮名以呂波 4
大日本国名尽 4
日本三都会廣邑 7
苗字尽 8
家号尽 15
俗名頭字尽 17
法体名尽 18
当用萬字尽 18
吉書始要語 44
七夕席書要語 46
初心書札式法 51
書札時候案文 64
目録書法式 66
箱曲物の書法 69
額絵馬の書法 70
歌書冊子の書法 71
扇子の書法 72
掛軸箱の書法 72
色紙短冊の書法 73
萬物数の称呼 74
萬包物の作法 76
小笠原諸礼図式 79
臺折積物図式 102
料理献立書法 105
迴状案文并表包 108
五性名乗字鑑 109
花押吉凶の弁 116
年代六十の図 119
大日本帝王本代記 119
日本年号続次 137
改算塵劫記 138
銭遣ひ相場刻 147
潮汐の満干 148
不成就日成就日 148
十干十二支の図 終丁(※無し)



年頭祝儀状 1
新春の御吉慶休期有るべからず候。
御邊弥(いよいよ)御壮健成さるべく、
御超歳珍重御儀に存じ奉り候。
先づは年始の御祝詞申し上げ度く、斯の如くに候。
猶、永日の時を期し候。恐惶謹言
 正月五日 光井栄蔵
千代春大夫様
    人々御中
 尚々當方皆々無異、加年致し候條、憚り乍ら御安意下さるべく。以上。

同返事 2
御賀章拝見致し候。
仰せの如く年甫の御慶目出度く申し籠め候。
貴方益(ますます)御堅固、御越年成され重畳壽し奉り候。
當方無事加齢致し候。何様御礼報迄、斯の如くに候。
猶、永陽の時を期し候。恐々謹言。

初荷仕送り状 3
餘寒の砌、愈御安栄の條、珍賀奉り候。
然らば嘉例の通り初荷積み登し奉り候。
若し麁相の品之れ有り候はば急々取替へ申すべく候。以上

同返事 3
相替らず初荷早々御積遣され注文通り慥かに入手致し候。
此度の品は格別上出来にて殊更に悦び入り申し候。
何卒已後は此の職人へ御誂へ下さる様、偏に頼み上げ申し候。已上。

藪入り見迴(みまひ)状 4
御息女様御藪入り成され候由、先づ以て御安泰の條、賀し奉り候。
誠に初めて御奉仕御窮屈の段、察し奉り候。
随つて麁末乍ら菓子一箱、聊か御慰み迄に、之れを進上仕り候。
尚、両三日も御止宿成され候ば、少々(ちとちと)御越待ち上げ奉り候。頓首。

同返事 5
娘事、暫時休息旁(かたがた)罷り帰り候處、
御見迴と爲て雀鮓一折送り下され御懇請の段、忝く存じ奉り候。
思ひの外、易く(やすく)勤め候由、悦び入り候。
憚り乍ら此の段御安慮下さるべく候。
猶、近々罷り出で御礼申し述ぶべく候。

売家肝煎状 6
貴君兼て御所望の下屋敷、此度売払罷り出候。
若し思し召し候はば御一覧の為御同伴申すべく候にて候。
委細の義は御面談申上ぐべく候得共、
望人多く候故、先一応伺ひ奉り候。不備。

同返事 7
日外(いつぞや)御噂の田地、弥(いよいよ)
売払相成り候由にて御知為(おしらせ)下され忝く存じ奉り候。
成程存寄り候義に候得共、
取高上納雑費余の程、斗(はかり)難く、
兎角勘定任すべく義候間、何分後刻(ごこく)、
参以て(伺って)委曲申し承るべく候。不具。

三月節句の状 8
桃節の御祝賀、目出度く存じ奉り候。
殊更天気長閑に候得共、
住吉浦の汐干抔罷り越し度く存じ候。
貴丈如何御差し支え御座無く候ば、
御同心下さり間敷哉、
御報待ち奉り候。謹言。

同返事 9
仰せの如く上巳の御嘉儀、祝し奉り候。
折柄快晴に付き、蛤取り思し召し立の由、
御誘引下され忝く存じ奉り候。
何様一入の御遊興に候。
然らば貴命に随ひ追付け(おっつけ)推参御供申すべく候。謹言。

奉公人頼み遣はす状 10
年来相馴れ候手代共、
此程拠(よんどころ)無き義、出来候て、
暇(いとま)相遣はし候に付き、
甚だ勝手悪敷く困り入候。
何卒相應の人物御座候ば御世話成し下され度く
其内少々文筆の働き候者、所望に候。
何分偏(ひとへ)に頼み上げ奉り候。

【奉公人面謁(めみえ)の図】 10
[つれなきやけふもまへだれかづきけり]
 (※奉公人は傘もない)


同返事 12
子供衆御入用の由、承知仕り候。
折節在方(ざいかた)預り候者御座候。
尤も這出(はいで)初奉公の儀故、
迚も御面倒のみに候べく、
然し乍ら先づ御事欠の間、苦しからず候ば、
御遣ひ御覧成さるべく、若し御縁御座候ば、
重畳の御事に候。
其の内相心懸け申すべく候。

葵祭誘引状 12
葵祭も近々相成候。
願はば山王祭を兼ね候て参詣致し度く、
則ち明後夕方乗船の心構に候。
貴公苦しからず候はば御越し成され間敷哉。
一寸御誘引旁、此の如くに候。

同返事 13
加茂の御神事御参詣思し召し條、羨敷く存じ奉り候。
小子、未だ拝見致さず候得ば、何卒御供申し度く存じ候。
然し乍ら用事の都合、相勘へ夕方御左右(さう:合図)申上ぐべく候。

婚礼祝儀状 14
一筆啓上致し候。
今般御婚礼首尾能く御整ひ成され
千祥萬禎目出度く存じ奉り候。
随つて鰹節一連、之を進上致し候。
誠に御祝儀を表する迄に候。
恐惶謹言。

同返事 15
貴札拝見致し候。
今度良媒候て陋婦を迎へ候處、
御祝賀と為(して)海魚一折御恵贈成し下され
御懇志の至り、忝く幾久しく祝納致し候。
猶、拝顔を期し萬々申謝すべく候。
恐惶謹言。

五月節句の状 16
端午の佳節、珍重御儀に賀し奉り候。
然らば嘉例に任せ、笹粽一連、薬玉一掛け
之を進覧致し候。
誠に當日の賀表のみ
相変らず御祝留下さるべく候。頓首。

同返事 17
貴命の如く蒲節の嘉慶壽し奉り候。
随つて御染筆の朱鍾馗一幀
御恵贈成し下され、兼て所望の御品、
別して忝く拝受仕り候。
永々重宝致すべく
尚、参上を遂げ拝眉萬々申謝すべく候。頓首。

梅雨に人を招く状 18
連日の五月雨、騒々敷く存じ候。
尊丈如何御座成され候哉。
折節一種到来に付き一盞を傾け申し度く候。
滑路御苦労の段、存じ候得共、
苦しからず候はば、少々(ちとちと)御来臨の程、待ち奉り候。

同返事 19
芳墨拝閲、来諭の如く
梅天とは申し乍ら怪しからぬ大雨にて日々引籠り
扨々退屈千万罷り在り候所、計らず御茶賜るべき由、
請招下され、殊更辱く存じ奉り候。
何様仰せに随ひ取敢ず参扣(参上)致し、
此の程の欝を散ずべく候。不一。

暑気見舞状 20
時候極暑の砌、弥御安康御座成され候哉。
一應御伺ひ申すべきの處、
彼是取り紛れ失敬罷り成り候。
此の水菓子一鉢、甚だ沢山成る品に候得共、
聊か御訪問の印迄、御覧に入れ奉り候。

【暑気見舞状 図】20
[禮いふて鯛はすてたるあつさかな]
 (※腐ってた)


同返事 22
仰せの如く此頃は甚暑、殊に凌ぎ難く候處、
益(ますます)御安寧の由、欣喜奉り候。
然らば暑中御見舞と為(して)
巨鱸一口贈り下され浅からず忝く存じ奉り候。
早速料理せしめ折角賞味致すべく、
尚、拝面御禮申し述ぶべく候。

神事案内状 22
来る七日は此の邊、生土(うぶすな)祭にて御座候。
今年は社頭御修覆候て、美々敷く相成り、
車楽(だんじり)も多く俄囃子(にはかはやし)ホ(等)も出候て
殊の外賑々敷く候間、
御子達御連れ成され
前日より御入来下さるべく候様待ち請(うけ)候。

同返事 23
玉章拝見仕り候。
明後日は其の御地御祭礼に付き
珍敷く邌物(ねりもの)山鋒等も出候由、
御案内下され御懇切の段忝く存じ奉り候。
忰共疾(と)くより相待ち候得ば、
御面倒を顧みず枉げて仰せに随ひ参上申すべく候。

七夕に遣はす状 24
巧夕の御祝義仰ぎ奉り候。
随つて今宵二星の手向けに擬して
朋友の衆中打ち寄り俳諧の發句附合等
相催し度く存じ候。
若し御閑暇候はば御加席下さり度く頼み上げ奉り候。
遅吟罰酒の趣向御座候間、
亭主必定蛇顔を覆ふべくと心配仕り候。不具。

同返事 26
七夕の良辰御同意に賀し奉り候。
御手向けと為(して)立花の御會御催行の由
抜群の思召しに候。
夫に就いて下拙迄名寄せらるるの條
辱く存じ奉り候。
然し乍ら元来此の道別して不覚悟、
却って御興を妨ぐべき義に候得共、
何卒祗候を遂げ拝見致し度く存ず所に候。

盆会祝儀状 27
中元の御嘉言一統申し籠め候。
仍つて京物に任せ蓮の飯一折、刺し鯖五刺
些か御祝義の験迄に之を進入致し候。
尤も早々参賀申すべきの處、
魂祭の奔走に取り紛れ候條、
自由乍ら先づ失礼を以て此の如くに候。謹言。

同返事 28
御嘉牘拝誦、殊に御祝料として
見事成る銀瓜一籠御恵投成し下され
喜悦斜めならず存じ奉り候。
折節庭池の白蓮
後開(おそざき)乍ら今将(はた)盛りに候間、
一茎御使ひへ託し候。
御霊前へ御立て下さり候はば尤も本懐に候。不備。

八朔祝儀状 28
田面の御祝辞愛で度く申納め候。
折柄初穂の由にて在方より新米少々指し越し候間、
聊か乍ら送り奉り候。
所謂田実(たのみ)の方言と
御賞味下さり候はば満悦に存じ候。

同返事 30
命(めい)の如く御嘉祝當年殊に満穀の由、
自他の幸慶此の事に候。
随つて御手製の葡萄酒一陶貴慮に懸けられ
大悦の至り辱く祝納致し候。
猶、申賀旁参を以て御礼申上ぐべく候。謹言。

【八朔儀式の図】30
[八朔やかたみにいはひたのみかな]
 ※意味不詳


月見に友を需むる状 31
良夜如何御覧哉。
等閑に打ち過ぎ候事、尤も本意なく候得共、
孤興致すべき様無く候。
願はくば御同席を許され候ば
一瓢を携へ推参申し度く候。
御心底の程、只だ御口上を以て
此の僕に仰せ聞かされ給ふべく候。

同返事 32
唯今使札を進じ度く存じ候得共、
例の芋肴(うこう)濁酒の外、他無く候故、
猶豫(ためらひ)候處、遮つて御音信の條、
快悦の至りに候。
最早老足、夜行に由無く
何卒御光来下さり候はば
相共に月に對して昔を語り申すべく候。

九月節句の状 33
重陽の嘉節珍重の御事に候。
娘共、後の雛祭とて何角、訳なく設けを致し候間、
後刻御息女達御連れ御入来成され下され度く、
此の次(ついで)を以て一献を酌み
彼の登高の故事共承り度く存じ奉り候。不宣。

同返事 34
過刻は芳翰に預り、
折節来客中、即報に及ばず失敬仕り候。
御示しの如く菊節の佳儀、等賀(答賀)し奉り候。
然らば御雛祭に付き御相伴仰せ付けらる由、
忝く存じ奉り候。
何様参上遂げ御禮申上ぐべく候。
此の栗一籠珍しからず候得共、
到来に任せ進覧致し候。已上。

物の訳を尋ねに遣はす状 35
菊の着せ綿の訳、少々入用に付き情落致し候所、
霜露を防ぐべき為に設くる所の由、見請け候。
如何然るや否や。
何卒御教示下され度く頼み上げ奉り候。
全体文盲不学の某故、
毎事當惑計り、偏に賢察を仰ぎ候。頓首。

同返事 36
菊の着せ綿の儀、御尋ねに任せ申上げ候。
仰せの如きは古説の趣きに候。
師説は時候の遅速に依て、
九月の花、等しく開(さ)かざるの節
染綿を着せ令(し)め候て、
咲き揃ふ所の躰を為す事の由に御座候。
勿論、野子迚も覚悟未練の間、
委細は識者に御尋ね成さるべく候。

猪子の状 37 (※十月亥日に餅を食べる)
玄猪の御祝言、目出度く申し弘め候。
然れば慙敷(さもし)き品に候得共、
掻餅(かいもち)一折進送致し候。
誠に祝志計りに候。
扨、京都の御傳手(つて)自り
若し當賀の御鏡御貰ひ成られ候はば
何卒御無心乍ら少々御戴かせ下され度く
希(こひねが)ひ奉り候。不一。

同返事 38
猪子の御壽と為(して)
恒例の餺飩餅(ぼたんもち)饋り下され忝く存じ奉り候。
然れば玄猪御鏡の事承知致し候。
定めて今年も親類共従り頭戴(ちょうだい)仕るべく候間、
参着候はば随分御配分申上ぐべく候。

手傳人頼み状 39
誓文拂程近く相成り候處、此頃賣用に付き
番頭下邊(しもへん)へ罷り越し候て甚だ無人、迷惑致し候。
之に依つて若し御用向き振替等出来候はば
両日店方御扶助下さり間敷く哉、
一寸御尋ね旁(かたがた)御頼み迄此の如くに候。以上。

【誓文拂の図】40
[越後屋がきぬさく音やゑびす講]
 (※商家の蔵浚へ大安売り)


同返事 41
明後日は例年の御賣前折節御無人の由
嘸(さぞ)御鬧敷(いそがはし)く御座候半と推量仕り候。
夫に就き御店手傳仰せ聞かされ承知仕り候。
但し此頃風邪後にて少々長髪に候得共、
苦しからず候はば罷り出で申すべく候。

顔見世見物申し合せ状 42
此頃は道頓堀顔見世江戸役者の乗り込み
誠に以て賑々敷く市中の評判区々(まちまち)に候得共、
拙者未だ時を得ず罷り在り候。
貴君御越し成られ候はば御供申し度く存じ候。
報に任せ桟敷申し付くべく候。不備。

同返事 43
仰せの通り芝居殊の外繁昌の由、
贔屓の役者積み物の景気迄
取り沙汰聞き及び候得共、
甚だ群集の由故、差し扣(ひか)へ罷り在り候。
何様御同伴下され候はば一見を遂ぐべく候。

爐振舞の状 44
此度暢室中に爐を構へ申し候。
勿論自楽のみ敢て高覧を經べきに非ず候得共、
初設の義故、冀(こひねがはく)は
親友一両輩相招き申し度く候。
尊公、御厭ひなく澁茶一碗を喫し給はば
本望此御事に候。頓首。

同返事 45
華牘奉誦御普請御落成に付き
御爐始めと為(し)て御茶下さるべき由、
閑雅の歓楽、之に過ぎず忝く存じ奉り候。
然れば昼後伺公を遂げ御礼申し上ぐべく候。不宣。

年忘れを催す状 45
追々月迫に及び御互に忙敷く存じ候。
然れば年の名残りを顧み候半と存じ候處、
圖らず居客之れ在り
浄瑠理を能く致され今宵即ち相催さるるの間、
若し御閑暇候はば御家内共御慰み旁、御入来下さるべく候。

同返事 46
仰せの如く今年も早や暮に向ひ
御同前に残り多く存じ候。
随つて噺会は御催し有るべき由
御請招に預り一入の延気(のんき)と忝く存じ奉り候。
晩景参扣せ令め委細申謝すべく候。

歳暮祝儀状 47
歳も次第に押し詰め定めて御多忙の段愚察奉り候。
然れば軽薄の至りに候へ共、
塩鰤一尾御祝儀迄に呈上仕り候。
猶、年内餘日無く候條、
折角御自愛成らるべく候。謹言

同返事 48
芳墨忝く披見、時分柄御繁用察し入り候。
然れば年勝の御佳儀として
塩鰯一樽送り下され忝く祝収致し候。
扨も彼是餘陰なく来陽緩々(ゆるゆる)
御意得べく先づは御礼答迄此の如くに候。已上。

開店案内状 49
此の間中は何角大いに御世話に預り忝く存じ奉り候。
御蔭にて存外賑は敷く取繕ひ一入大悦仕り候。
然れば来る朔日良辰に付き店開き仕り候間、
自由乍ら御用向き御手迴し成され、
早々御入来下され度く呉々待ち奉り候。已上。

開店案内状図】50
[礎やちとせをちぎるはじめかな]



同返事 51
此頃は毎々罷り出で却つて御面倒相成候。
然れば御店、殊に御立派に御整ひ成され候由、
第一所柄と申し當時流行の思召し付き
御満足の段、察賀奉り候。
弥、明後日は御發鋪の由、御招き忝く存じ奉り候。
何様御手傳旁、参り申すべく候。

商ひ先引き合せ状 52
此人、今般小間物商相初め申され候。
尤も追々手廣く致され候所存に付き、
代呂物(しろもの)も多分相仕込まれ候。
至つて熟懇の間柄にて、丁寧成る人物に付き
何卒御用の儀御座候はば御注文成し遣はされ度く、
且つ御知音方へも憚り乍ら御引合せの程頼み上げ奉り候。

同返事 53
御状忝く拝見、御懇家木綿商賣御初めの由、
御引合せの段、承知致し候。
成程正直の御商方にて一入相談致し易く存じ候。
即ち今日先づ縞地少々申受け候。
尤も是迄出入りの人、之れ有り候得共、
聊かにても利口に付き候はば
追々御貰ひ申すべく外方(ほかかた)へも風聴申すべく候。

参着案内状 53
其の后は誠に遠々敷く存じ候。
今度悴共召連れ京参り
旁罷り越し昨夕到着致し候。
尤も京都一見の為、四五日逗留致し
廿六日夜船にて其の御地へ下り申すべく候。
若し御差し支へ等、之れ有候はば、
旅宿へ落付き候半間、
先づ御案内迄此の如く候。頓首。

同返事 55
珍翰忝く拝誦、
此度御本山へ御参詣成され候由、
先づ以て遠路恙なく御着の条、
大慶存じ奉り候。
定めて御草臥れ成らるべく間、
先々(まづまづ)當方へ御入候て緩々と
御滞留成らるべく候。
京師御巡覧の儀は御帰足の砌
拙者御供致し夫々御案内申すべく候。頓首。

留守へ来る人に遣はす状 56
夜前は御入来下さりし由、
折節據(よんどころ)なき用向きに付き
他出致し候て貴面を得ず一入残念に存じ奉り候。
抑(そもそも)何条御事御座候哉。
今日は在宿致し候間、
若し御所用の儀候はば仰せ聞かさるべく候。不備。

同返事 56
御懇書忝く拝讀、
昨日は朋友に誘はれ天王寺邊へ存じ奉り候。
帰路久々御無音打ち過ぎ候故、
一寸御訪問申す義にて餘の子細、之れなく候。
却つて恩問に預り御意の段、恐れ入り候。
猶、其内拝眉萬謝申すべく候。

弟子奉公世話頼み状 57
私甥市作義、元来百姓にて候へ共、
農業相嫌ひ、兎角手職の望之れ有り候に付き
此度其の表へ指し遣はし申し候。
何卒近頃御面倒に存じ奉り候得共、御賢慮に任せ
然るべき方へ御世話成し下さり度く偏に頼み上げ奉り候。

同返事 58
此の間は市作殿御越
久々にて對面致し扨々見忘れ候計り御成人にて候。
然れば御同人職商人御好みの由、
委細相心得候。
早速彼是聞き合せ候處、
打物屋の口之れ有り、本人も望まれ候様子故、
先づ指遣はし置き候。
何分縁の義に候はば重ねて御左右申上ぐべく候。

弟子奉公世話頼み状図】59
[馴れゆかばやぶうぐひすの音もゆかし]



欠け落ち追手状 60
當村与茂平殿子息与茂吉殿儀、
夜前従り出奔致され行方相分らず、
但し婦人連れ之れ有る趣きに候。
若し其の御地へ立越へ申されず候哉。
万一罷り越され候はば、本人御留置き下され、
早速御知らせ下さるべく頼み奉り候。

同返事 61
従弟与茂吉事、欠落ち致し候由、
各(おのおの)様始め
御近取(近所)とも御心配下さるる段、忝く存じ奉り候。
元来病身成る者故、
迚も遠足の儀、之れ在る間敷く存じ候。
拙方は勿論、外々彼の者馴染みの方も御座候間、
相心懸け便宜を得候はば早速注進申すべく候。

相談に付き人を招く状 62
私長屋内に此頃少々捼(揉)合(もめあい)の事
出来候て據なく取扱ひの儀、
相頼まれ彼是掛合居り申し候へ共、
諸事、事馴れ申さず候て頓と埒明き申さず
殆ど困り入り候に付き
何卒少々御才覚を假り申し度く候間、
憚り乍ら晩方にても一寸御入来下さり度く頼み上げ奉り候。

同返事 63
此程は何歟(なにか)御難義成
挨拶事御頼まれ候由、
御心配の段察し奉り候。
尤も如何の故障哉。
野子固より鈍物、何の用益にも立ち申さず候得共、
先づ仰せに任せ後刻参上、 仕り委細承るべく候。
若し御談合に協ひ候はば幸ひの御事に候。

道具借用状 64
今宵俄に来客御座候所、小子御存の通り、
更世帯(さらせたい)の儀故、
何角不自由にて困り入り申し候。
之に依つて近頃御無心乍ら
火鉢燭臺各一對、薄端・釣舟の花器等、
御秘蔵の品に候得共、
暫時御拝借下され度く偏に希奉り候。以上。

同返事 65
明日は成道寺の方丈御入り遊ばされ候由、
嘸御混雜の段愚察奉り候。
随つて御奔走の家具并に雜具の品等、
御入用の由、仰せ聞かされ易き御用にて候。
然し乍ら御膳迴の分
少々粗相に御座候間、
如何存じ候へ共、先づ御覧成らるべく候。
追付け是従(より)持たせ指上げ候。

賃借り物返済状 66
此間は指懸り為(た)る義に付き
當惑仕り候所、不圖(ふと)貴計に依つて
當座を賄ひ千万忝く存じ奉り候。
即ち右縵幕二張、銚子提子(ひさげ)三盃其外
小道具類別帋書き付けの通り、
持たせ返却申し候。
賃銀は粗(ほぼ)承り候程、持たせ差上げ候。
過不及の儀は宜敷く御尋ね下さり度く
憚り乍ら頼み上げ奉り候。

同返事 67
御借用の品々并に賃銀等御持たせ遣はされ
御丁寧の至り、慥かに預り申し候。
早速先方へ相達し申すべく候。
彼の道具屋事は小子別懇の間柄にて
随分踈略候間、重ねて御用の節は
何時成共直に仰せ遣はさるべく候。以上。

注文催促状 68
先日末吉丸に託し御頼み申上げ候
探幽
の画一軸仕立ての事、
其後御沙汰、之れなく候故、一寸御伺申上げ候。
最早御出来と存じられ間、
何卒此便舩に御下(くだ)し下さるべく、
萬一此度の間に合ひ申さず候はば
後便に相違なく御遣はし下さるべく頼み奉り候。不具。

【注文催促状図】69
[塵なくばすみもわたらぬ池の月] (※意味不詳)



同返事 70
先達ては御注文下さり忝く存じ奉り候。
早々取り掛り候へ共
一文字の裁(きれ)并びに軸相調ひ難く候て延引仕り候。
尤も一應御尋ね申すべくの所、
日々情落仕り居り申し候故、
其の儀に能はず漸(やうやう)此間相調ひ候て
出来仕り幸ひ今夕出し申し候間、
着の上、御入手下さるべく候。

寄進挨拶状 71
當寺庫裏久々破損罷り在り候得共、
元来貧地の儀に付き修理及び難く候処、
此度存じ寄らず御浄財を以て御助勢下され
一統祝着仕り候。
即ち不日普請取り懸り申すべく候。
院主早速の礼罷り出でらるべくの所、
此頃風邪罷り在り候故、
先づ講中従り御挨拶の禮申上げ候。

同返事 72
貴寺御修覆の儀
聊か御手傳申上げ候所、
御丁寧御礼痛み入り候。
勿論小子貧生、取存(しょぞん)任せず候処、
此度遁れ難き縁者退転候て
跡式(あとしき:家督)引き取り申し候に付き
菩提の微志を存する所に候。
冀ば彼の一家の為、
朝暮御回向成し遣はされ候はば尤も大悦に存じ候。

占ひ事頼み状 73
悴嫁娶の儀、彼是頻りに相勧められ候へ共、
兎角思は敷からず候處、
此頃似合は敷来義、之れ有り候故、
然るべく候はば相談申すべき哉に存じ候間、
一應御伺申上げ候。
何卒御面倒乍ら吉凶御示し下さり度く頼み上げ奉り候。

同返事 74
宅地御求め成らる由賀し奉り候。
随つて家相指図御望の条承知致し候。
即ち一覧遂げ候處、大抵無難に相見受け候。
然し乍ら座鋪の間取り土蔵浴室等、
少々宜しからず候に付き
委細絵図に相直し置き候間、
先づ御覧成さるべく候。

約束変改状 75
弥、今夕御上京成され候哉、
私義旁御同伴申すべく様
御契約仕り候處、
今少し用向き調ひ難く候に付き
何卒先へ御越し下さるべく
明日罷り登り彼の地に於て緩々貴慮を得べく候。

同返事 76
御細書拝見、然らば今夕御同舩申すべく候処、
何歟御指支へ御座候て後従り御登り候由、
仰せ聞けられ承知仕り候。
然し乍ら残り多く存じ奉り候。
何様御用向き御済次第、
早々御越し之れ有るべく
御先へ罷り越し必ず待ち請け奉り候。

閉門見舞状 77
貴殿御儀今般御小屈の事御座候由、
定めて不慮の御過失為るべく候得共、
御欝陶の段、愚察奉り候。
尤も御平生の思召しも有るべく御座候へば
遠からず御宥免之れ有るべく候間、
必ず御慎み成らるべく候。
先に就き相應の御用候はば
後遠慮なく仰せ聞こさるべく候。

同返事 78
小子此度御尤(とが)めに値ひ候義、
御聞き及ばれ御懇書成し下され候条、
忝く存じ奉り候。
尤も御推量の通り組合中の越友候得共、
何分我等鈍才の所為、恥辱の至り千悔此事に候。
猶、憚り乍ら折も御座候ば
偏に御取成し願ひ上げ奉り候。

代筆頼み状 78
江戸表の新一家方へ書状指遣はし度く候処、
例の悪筆に候へば初めての通書面映ゆく候間、
近頃憚りに存じ候得共、
別帋案文の趣きに宜しく御添削候て
一通御認め下され度く憑(たの)み上げ奉り候。

【木曽願書の図】79
[たしなみはてもほまれなりねがひ文]
 (源義仲故事)


同返事 80
此間は御献上の品
首尾能く御納済、珍重の御儀存じ奉り候。
随つて書付けの事、最(いと)易き御用にて御座候処、
御丁寧の御礼痛み入り候。
後来相應の御用候はば
何時成共、御心配及ばず
御遣はし成さるべく候。頓首。

遠国洪水見迴(見舞)状 81
此程は甚だ敷き霖雨にて候。
殊に其の御地洪水馳込候由、
相聞こへ驚歎仕り候。
如何御親類共御別条之れなく候哉。
委細承り度く存じ奉り候。
此鮑魚(ほしうを)一苞些少に候へ共、
不取敢御訪問の印迄進上仕り候。
猶、御安否の程御報せ待ち奉り候。

同返事 82
貴慮に懸けられ遠所御訪札に預り
別して調法の醃魚(しほうを)沢山送り下され忝く存じ奉り候。
仰せの如く夥し敷き雲霫(おほあめ)
當所幾代(幾殆)の難水にて候。
始末は巨細別紙を以て申上げ候。
家族共両三軒相饋(潰)れ
皆々拙宅へ寄り集まり居申し候。
然し乍ら大切の品々人数等は恙なく罷り在り候間、
此段の安意下さるべく候。
先づは御請の礼迄此の如くに候。頓首。

遠国失火見迴状 83
去る三日御當地失火之れ有り候由、
如何貴家御別異御座なく候哉。
聊か御見迴(見舞)印迄、
御酒料金壹封(いちぶ)進上致し候。
逼(せめ)て近在にても候はば
縦令急用は達せず候共、先づ馳付け候半。
何分遠路心底に任せず唯此式に候。
委曲承り度く候間、早々御報待ち奉り候。

同返事 84
當辺失火御聞き及ばれ早速御訊書預り、
殊に漬魚一桶贈り下され調法の至り忝く存じ奉り候。
誠に存じ寄らぬ大火にて城下大半焼亡仕り候。
一節は巽風強く、壁隣迄焼込候へ共、
夫ゟ(より)風替り候故、拙宅は漸(やうやう)相残り申し候。
尤も紛失の品も之れ有候へ共、
指して穿鑿に及ぶべき儀にても之れなく候條、
慮外乍ら御休意下さるべく候。
何様御礼答旁、此の如くに候。

金子無心状 86
今般得意先従り急注文御座候処、
折節手元不都合にて仕入れ致し難く
甚だ困り居申し候。
之れに依つて何共御無心の至りに候へ共、
今朝月の間銀子壹貫目計り
御拝借成し下され間敷く哉。
若し御許容下さり候はば
御厚恩千万謝し奉るべく候。早々頓首。

同返事 87
金子御入用の由、仰せ聞けられ
易き御事、承知致し候。
後刻是従り進ずべく候。
元来不如意の某(それがし)故
過分の儀は用立て難く候得共、
些細の儀は随分御融通致すべく候間、
失礼乍ら御手支への節は
御遠慮なく仰せ遣はさるべく候。不具。

金子断り状 88
先日御約束申上げ置き候金子の儀、
北國取引に今埒明き申さず
迚も當節季の間に合ひ申さぬ趣き故
甚だ以て御気の毒に存じ候得共
據なく御断り申上げ候。
但し来月晦日には外に心當も之れ有り候故、
相違なく御返済申すべく候間、
先づ夫れ迄と思召し
暫時御待ち頼み上げ奉り候。

同返事 89
御細書の趣き承知致し候。
然し乍ら拙方にも當間は
殊の外、出金多く旁、
御契約の趣き相待ち候所故、
何卒相成るべく候はば、
今一應御勘考下さり度く、
先づ半金にても御調達下さり候はば
大いに勝手を得候間、此段御伺申上げ候。

金子断り状図】89
[いつはりはいはぬ世もかなますかがみ]
 (※意味不詳)


師を需むる状 91
悴義、追々成長致し候得共、
一向無骨にて候間、見習の為、指し上げ度く
何卒行儀作法共御指南成し下され候はば
大悦存じ奉り候。
尤も参を以て御願申上ぐべきの処、
頃(このごろ)少々足痛故、
失敬乍ら書面を以て此の如くに候。

同返事 92
諸礼御稽古成され度き由結構の御事に候。
殊に御別懇の間柄故、
覆(腹)蔵なく御教示申すべく候。
尤も御深望に於ては皆傳致すべく候間、
御懈怠なく一入御勉め成らるべく候。

役付き虚実伺ひ状 92
御邊御儀、此度御傍役仰せ蒙られ候由承り候。
如何實事に候はば、
御渾家一統御大慶、之れに過ぎず候。
然れ共憚り乍ら御役柄、余程相隔たり候故、
不審存じ奉り候条、
失禮を顧みず一寸御伺迄此の如く候。

同返事 93
御懇書忝く拝閲、
仰せの如く野子義、聊か出世の手懸り之れ有り候て
當時及ばれ吹挙(推挙)に罷り在り候。
但し役目の儀は何共未だ相分らず
尤も御沙汰御座候ば御披露申すべく存じ候所
遮つて御芳問に預り一入御深情の段辱く謝し奉り候。

疱瘡見舞状 94
御小児様御疱瘡成られ候由、
如何御機嫌能く候哉。
只今承り候間、先づ以て使ひ一寸御伺申上げ候。
随つて此の人形、甚だ粗品に候へ共、
御構(もてあそび)下さり度く進上致し候。
尚、後喜の時を俟ち候。

同返事 95
貴札忝く拝見仕り候。娘疱瘡の儀
御聞き及ばれ殊に所望の品
贈り下さり誠に以て忝く存じ奉り候。
最も軽症にて大いに仕合せ致し候。
程なく仕揚げ申すべき間、
憚り乍ら御安慮下さるべく候。不備。

賣物値段聞き合はせ状 95
此の脇指、或方より拂物に出候。
代金拾両の由申し候。
値段相應の品に候はば
野子求め置き度く候間、
御面倒乍ら御覧下さり
値打御聞かせ下さり度く候。

同返事 96
茶器値段御聞き合せの條、承知致し候。
即ち一覧を遂げ候処、
成程此品値打は相當り候得共、
性合(しゃうあひ)格別好からず相見え候間、
折角御所望成られ候へ共、
先づ是は御見合せ成られ候て然るべく存じ奉り候。

手跡頼みたる礼状 97
先日は看版の儀、御面倒申上げ候處、
早速御認め下さり甚だ都合好く大悦仕り候。
早々の禮罷り出づべく候所、
店出にて彼是取紛れ失敬仕り候。
然れば此品只今到来に任せ
少分乍ら御覧に入れ奉り候。謹言。

同返事 98
御店開きに就き御多忙の段察し奉り候。
其の砌は張下(はりした)目録等
大いに延引に及び却つて御気の毒に存じ奉り候。
然し乍ら先づ御間に合ひ候由、安堵致し候。
然れば右の礼と為て
見事成る鰈壹尾送り下され忝く拝受致し候。
猶、貴面御禮申し述ぶべく候。不具。

奉加事取り持ち状 98
此度何某様御菩提所本堂御修覆候の處
佛殿の儀に付き、聊か成共他力を募るべく様、
仰せ出され候故、則ち寄進帳相配り候間、
御苦労乍ら多少に限らず御寄附御世話頼み上げ奉り候。

【勧化詠歌踊りの図】99
[頼まれつたのみつつふむ法(のり)の道]



同返事 100
蓋松村天満宮神殿御修造事、
貴君御取持ちの段御大儀察し奉り候。
之れに就き勧進帳御遣はし下され落手致し候。
我等兼て信仰仕り候はば
及ばず乍ら力を竭し諸家相勧め抛財を抽きさ為(せ)申すべく候。

初めて逢ひたる人に遣はす状 101
先日は初めて罷り出で緩々貴面を得、
且つ種々御馳走に預り忝く存じ奉り候。
其后御禮旁参上申すべきの処、
親類病人之れ有り候て存外失敬仕り候。
然れば御閑暇に任せ御仰請申し度く候条、
一寸書面を以て伺ひ奉り候。謹言。

同返事 102
芳跡の如く先頃は御入来下され
初めて貴顔を得、大悦斜めならず候。
然し乍ら何の風情も之れなく
残心此の事に候。
夫れ自り御尋ね申すべく處、
賣用忙敷く御無音罷り過ぎ候。
何様近日推参致し貴意を得申すべく候。

国元へ引越しを告ぐる状 102
兼て御噂仕り候親共儀、
段々老衰に及び申され候に付き
拙者近々國元へ引き取るべきにて候。
誠に久々相居馴染、
別して各様御親切成し下され候故、
一入名残り惜しく存じ奉り候。
何れ御暇乞ひ旁、御礼罷り出で候へ共、
先づ右の由一寸申上げ度く此の如くに候。以上。

同返事 103
近日御産地へ引越しの由
扨々残心の至り驚歎致し候。
仰せの如く永々兄弟の如く相睦び候得ば
今更の様に存ぜられ候。
然し乍ら御孝養の道黙心(もだ)し難く候間、
折角御用意成さるべく候。
尤も相應の御用御座候はば
御遠慮なく御申し越し成らるべく候。不備。

他(ひと)の品を乞ひ需むる状 104
一昨日拝見仕り候獅子口の花器、
何共好(このま)敷く存じ候に付き
近頃失礼を顧みず申す事に候得共、
何卒拙子へ御譲り下さる候儀、相成る間敷く候哉。
是非相叶ひ申さず候はば、
御無心乍ら四五日御恩借成し下され度く
此段御伺ひ旁、頼み上げ奉り候。不宣。

同返事 105
橋杭花入れ御所望の由承知致し候。
然し乍ら此品下拙求め置き候物にて候はば
随分御譲り申上げべく候得共、
先師の形見に候故、何卒持ち遂げ申し度く候。
寔に應ぜず多罪に候へ共、
此段御聴き取り下さるべく候。
仍(よ)つて仰せに任せ御貸し申上げ候。
何(いつ)迄成共留め置かるべく候。以上。

振り市案内状 106
先日御噂申上げ候小道具市の儀、
弥、明後日何町何某宅に於て相勤め申すべく候間、
御不用の御品共何品に限らず御調へ成され
今明の間拙方迄御遣はし成さるべく候。

同返事 107
振市日限相窮まり候由、
承知致し候。何様此間従り集め置き候品々
別紙の通り御座候。
則ち後刻致為(いたせ)遣はすべく候間、
御世話乍ら宜しく頼み上げ奉り候。
猶、此外にも之れ有るべく候江共、
急に調へ難く候故、重ねて指し出し申すべく候。

会席不参断り状 108
明日は謡(うたひ)講御催し候由、
御指紙に預り忝く存じ奉り候。
然る處、拙者事、遁れ難き急用之れ在り、
今夕上京致すべきにて候。
之れに依つて何共残心千万に候へ共、
據なく御席に洩れ候條、
此段御承知下さるべく候。
尚、帰後萬々申謝すべく候。

同返事 109
御用向きに就き泉州表へ御發足の由、
御多忙拝察奉り候。
随つて詩会御不参の条、承知致し候。
尤も指為なき義候へ共、
衆中の失望残心無事に候。
何様御帰宅を期し再興申すべく候。

【詩會の図】109
[恋しさはおなじなぎさの友千鳥]



算用違ひ咎め状 111
過刻は御紙面に預り
御勘定の表一々引合せ見候処、
値切り候品々も取替候品々も
其の儘御書込み成られ
剰へ内入(うちいり)銀高相場等
彼是相違御座候て
何共相分り申さず候間、
今一應、得と御調べ遣はさるべく候。
御帳面等、甚だ不取締りと存ぜられ、
節々(せつせつ)ケ様候義、
之れ有り一向面倒に候間、
先づ注文の儀は是れ限りに致すべく候。

同返事 112
算用違ひの儀仰せ下され御立腹の段、
恐れ一入奉り候。
拙者元来多病に付き引籠り候節は店の者共、
手々(てんで)に帳合仕り候て
存じ寄らざる粗忽出来申し候。
外様にも仰せの如き御咎めの方、
御座候て甚だ迷惑仕り候事に御座候。
何様以後は急度(きっと)御改め取締り申すべく候間、
相変らず御用向き仰せ付けられ下され度く
何卒希ひ上げ奉り候。
書付の儀は逐一相調べ後自り差上げ申すべく候。

買物値切り状 113
今朝身請け申し候建具、
今、金弍朱、規模致し候間、(※意味不詳)
都合弍両三歩に御負け下さり間敷き哉。
尤も御利分少々薄かるべく候得共、
當時拙者甚だ雑費続きにて困り入り候間、
相成るべく候はば御勘弁下さるべく御頼み申上げ候。

同返事 114
挽板の事、仰せ候趣き御尤もに存じ奉り候。
殊に御懇意の御中故、
御負け申上げ度く候へ共、
此の命(めい)、町買元高直(かうぢき)に付き
頓と引合申さず候間、
逼て(せめて)金一歩丈御買揚げ下さり候ば
実々(じつじつ)元直(値)乍ら指上げ申すべく候。

替銀頼み状 115
先刻は銀子御持たせ越し下さり忝く存じ奉り候。
折節客を得候て其の儘御請け取り申し候処、
内焼板壹丁、文落(ぶんおち)小粒二つ御座候間、(※意味不詳)
近頃御面倒の儀に存じ奉り候へ共、
何卒御仕替下さり度く頼み奉り候。

同返事 116
只今御渡し申上げ候内、
切金(きれきん)之れ有り候由、承知致し候。(※意味不詳)
彼是遠方の所御面倒存じ奉り候。
折柄歩金(ぶきん)手迴り候間、
盡く取替へ指上げ申し候数共
改め御落手下さるべく候。

飛脚間違ひ状 116
貴墨忝く拝披仕り候。御誂物の義、
早速御調ひ先月廿八日飛脚へ指出し、
則ち請取書も御座候所、
今に到着致さず候由、
嘸御手支(づか)へ察し奉り候。
何様飛脚屋情落致し、若し遅滞致し候はば
別使を以て差上げ申すべく候。

同返事 117
御報忝く披閲申し候。
京都染物の事、大に御世話、辱く存じ奉り候。
但し日数延引に付き書状差出候處、
其の翌晩参着致し、何分道中の遅滞にて候。
然るに却つて御心配相懸け御気の毒に存じ奉り候。

得意先へ届け言状 118
私店手代八十兵衛
此度過分の越度(おちど)之れ有り候に付き
據なく暇(いとま)相遣はし申し候。
之れに依つて以後、彼の者若し来上仕り候共、
私方の儀に付ては一切御取り敢へ下されず候様、
頼み奉り候。其の為御届け申上げ候。

同返事 119
八十兵衛殿事永々相勤められ、
至極実躰に存ぜられ候所、
何哉御暇遣はされ候由、能くよくの御義と察し奉り候。
随つて仰せ聞けさせ候趣き承知致し候。
何様相含み居り申すべく候。

得意先へ届け言状図】119
[乕もなを気はゆるされぬきつねかな]



主家へ暇を乞ふ状 121
遠方に任せ憚り乍ら使札を以て申上げ奉り候。
事久々御召し仕下さり有難き仕合せに存じ奉り候。
然る處、此度叔母の家退轉仕り候に付き
據なく養子女(むすめ)に遣はし申すべく儀に相成り候故、
何卒折角御意に叶ひ且つ中途甚だ申上げ兼ね候得共、
御暇希ひ上げ度く候。実に自由の至り、
真平(まっぴら)御用捨(容赦)下さるべく候。

同返事 122
お弁事縁辺相定まり候由、
目出度く存じ候。依つて暇遣はすべき段、
心得申し候。至極長敷き(おとなしき)者故
一入残り多く候へ共、
是非なき義に付き指し帰し申し候。
随つて祝ひと為て帯地一巻送進致し候。以上。

医者を請する状 122
両三日は心下差否(痞)へ気分不勝に付き
例の御針治申し請ひ度く
何卒御苦労乍らお見迴ひ下さるべく頼み上げ奉り候。
尤も持病に候間、御繁多に候はば明日にても苦しからず候。

同返事 123
溜飲御再發の由、御難儀推量奉り候。
何分今少し御服薬成されず候ては
胸腷捌け申す間敷存じ候。
只今病客を得候間、
療治済み次第罷り出で相候申すべく候。

醫者断り状 124
此程は毎々御苦労に雖も
御陰にて昨今打ち続き快く
食事も最早や常躰に相成り候故、
暫時休薬致し見申し度く候間、
一寸略義乍ら書中を以て御断り迄斯の如くに候。

同返事 125
御病気早速御復快成られ珍慶斜めならず候。
随つて休薬の為、御使章給り御丁寧の段、承知致し候。
然し乍ら食物等随分御用心成さるべく
兎角御保養専一に候。不具。

病後初立ち見迴状 125
御頭痛追々御快方大悦候。
昨日は御賽礼の為
廣田社
へ御参詣成られ候由
定めて御草臥れ候事如何
御疲労御座なき哉、
鳥渡御拗躰御伺ひ迄此の如くに御座候。謹言。

同返事 126
毎事御訪尋下さり御深情忝く存じ奉り候。
誠に此度は不思儀の㚑驗(霊験)に依つて
久々の積(癪)気、頓と平愈致し甚だ悦び申し候。
昨日靈場迴りも聊か障りなく
案外の事共と候間、
憚り乍ら此段御安慮成らるべく候。

急便死去知ら為(せ)状 127
其御許御子息留作様事
今曉卒(にはか)に病ひ指し發(おこ)り候に付き
直ぐ様隣家の者共打寄り種々介抱致し候へ共
醫薬針灸共功驗なく遂に死去致され候に付き
早速御知らせ申上げ候。
此飛脚参着次第
御同道にて御越し成らるべく候。不悉。

同返事 128
舎兄事頓死致し候由、
知らせ下さり寔に各様方大いに御役介(厄介)の段、
申すべく様なく、忝く存じ奉り候。
親共今朝何心なく其御地へ罷り越し候。
定めて只今頃は参着仕るべく存じ候。
下拙も何角取り調(ととの)へ追付け参り申すべく候。

【佛参の図】129
[なき人をとふぞ涙のつゆばかり]



死去悔み状 129
御隠居様御遠行成られ候由、
漸(やうやう)昨夜之を承り驚き入り候。
嘸御渾家御愁傷の段推察致し候。
然し乍ら後事の御営み専一に候間、
随分御自愛成らるべく候。
依つて寸志乍ら香奠壹封呈上仕り候。
御佛前へ御供下さるべく
先づは御吊悔迄此の如くに候。

同返事 131
老父死去の儀、御聞き及ばれ
御吊章に預り殊に檀香一包み御手向け下さり
過當の至り、忝く存じ奉り候。
我等沈愁御高察の通りに御座候。
其内忌明を期し御禮申し演(の)ぶべく候。

誂物追ひ状 132
一昨夜、手帖を以て薬箪笥一誂遣はし候。
定めて相達し候半と存じ候。
右甚だ急用物に候間、
一日も早く御取り懸かり下さるべく候。
尤も極上細工にて大抵何(いつ)頃出来申すべき哉
聞かせ下さるべく候。

同返事 133
両度の御状、慥かに相届き拝見仕り候。
御注文の趣き畏まり奉り候。
但し當時用材甚だ払底に付き、
所々穿鑿仕り、漸く上物見當り
明日相挽候間、
大方中頃過ぎには出来申すべく候。

本復祝ひ状 133
病中は毎々御尋ねに預り
別して御調味の品等、
饋り下さり御懇情忝く存じ奉り候。
迚も本復叶ひ難く存じ候所、
先づ一命を拾ひ大慶に存じ候。
[仍](よ)つて心祝ひとして赤飯相調へ候間、
粗末乍ら御覧に入れ候。

同返事 134
貴公御大病の處、
速かに御全快成られ珍重の到り賀し奉り候。
随つて今日は御祝飯に預り
目出度く拝受仕り候。
尚、参上遂げ万慶御禮申上ぐべく候。

旅より帰りて遣はす状 135
其後は遠々敷く罷り過ぎ
先づ以て御安榮の條、賀し奉り候。
野子義、程無く帰郷申すべきの處
用向き調ひ兼ね候て存外長逗留致し
漸く今朝に相成り候。
誠に留守中は何呉(なにくれ)
御心添へに預り忝く存じ奉り候。
此品、田舎細工に候へ共、
聊か土産の印迄、之を進覧致し候。

同返事 136
御長旅の處、御道中恙なく
御帰宅成られ目出度く存じ奉り候。
随つて種々珍敷き御土産共御恵贈下さり
浅からず忝く、拝眉萬謝申すべく候。
猶御草臥れ成らるべく、
少々御休息候ば参を以て御礼申上ぐべく候。

内證聞き合はす状 137
卒尓の申す事に候得共、
其御町内萬年屋亀蔵と申す方、
此度縁談に付き聞合せ申し度く候。
若し内證人物出所等御存じ候はば
御聞かせ下され度く
貴君御心易さに任せ一寸伺ひ奉り候。

同返事 138
隣家万亀殿の儀、御尋ねの趣き随分温和成る人物にて候。
生國は播州の由、宗旨は浄土、
身上も相當に候へ共、矢張り借宅にて候。
猶ほ委敷く(くわしく)御聞き知り成らせ度く候はば御聞合せ進ずべく候。

中違ひ挨拶状 138
風(ほのかに)承り候へば
貴君此頃華作殿と何哉御不和の趣き、
子細存ぜず候へ共、甚だ御気の毒に存じ奉り候。
殊に御同行故、何卒御睦敷く成られ度く存じ候に付き
苦しからずば憚り乍ら御取持ち申し度く候間、
御心底の程一寸伺ひ奉り候。

【和睦酒宴の図】139
[雨はれてすずしき庭の月見かな]



同返事 140
御懇書忝く拝閲致し候。
近頃彼の者頻りに下拙蔑ろに致し候故、
聊か申し合ひ候儀にて候。
元来兄弟に候へば、別に遺恨迚は之れなく候間、
憚り乍ら御挨拶成し下され候はば
篤と御異見希ひ奉り候。

入家歓び状 141
一筆啓上致し候。
貴君今般御縁邊相定まり福留御氏へ御入室成られ候段、
千秋万歳目出度く存じ奉り候。
依つて軽少乍ら、和帋一束扇子一箱進上致し候。
誠に賀志を表す計りに候。恐惶。

同返事 142
一筆啓進致し候。
下拙義、今度良媒候て入家祝言致し候儀、
御聞き及ばれ御賀章并生鯛壹折
貴慮に懸けられ千萬忝く
幾久敷く祝納致し候。
猶、相替らず御懇切成し下され度く頼み上げ奉り候。
右御礼旁御請け迄斯の如く御座候。謹言。

安産知ら為(せ)状 143
此程毎々御訪ね下され忝く存じ奉り候。
夜前平産之れ有り男子出生致し候。
母子共壮健にて悦び居り申し候。
此段御安意下さるべく候。
先づ御知らせ迄是の如くに候。

同返事 144
御内室御儀、今調御安産御座候由、目出度く
存じ奉り候。殊に御男子
の段、是亦希望に叶ひ
御満悦察し奉り候。早速
参賀を遂げ申すべきの處
折節来客取紛れ罷り
在り候間、後刻伺公申すべく候。

元服悦び状 144
今良辰に就き御首服の儀
御整ひ成られ候条、珍重千万賀し奉り候。
定めて能く御似合成らるべく存じ奉り候。
随つて卒易の一種進覧致し候。
誠に祝義の印計りに候。
猶ほ後方推参を遂げ御意を得べく候。拝言。

同返事 146
小子事年頃に相成り候故、
今日前髪を落とし候所、早速御祝札に預り、
殊に結構成る御音物送り下され御厚情忝く拝受仕り候。
然し乍ら元来鈍者故、諸事不作法に候間、
向後猶御差圖(指図)成し下さるべく頼み上げ奉り候。
頓て(やがて)罷り出で萬々申し謝すべく候。謹言。

分家歓び状 146
一筆啓上致し候。
貴公久々の御勤功相今般御別家成られ候段、
御大慶千万別して御親父御安堵至孝の段、
重畳賀し奉り候。
依つて薄少に候得共、
青磁皿廿枚之を進上致し候。
寔に卑情表祝の式御笑面下さるべく候べく候。謹言。

同返事 148
貴翰忝く拝讀致し候。
野生儀、指為(さしたる)給功之れなく候得共、
年限に任せ今度分家申し付けられ過分に存じ候。
依て殊更重數の具共御祝下され
身に餘り大悦仕り末永く貴重申すべく候。
何分拝顔を遂げ萬々御礼申し述ぶべく候。恐惶謹言。


浪華 蔀関牛 編并畫
皇都 龍章堂美暢 書

弘化二年乙巳歳孟春發行

 大坂書林
唐物町四丁目 網屋茂兵衛
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心斎橋通南本町 河内屋平七
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