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『墨場必携日本漢詩選』

1999年 二玄社 北川博邦 編訳

22cm,332p ISBN:4544112141 ※(本体価格 3800円)現在在庫切れの由。


江戸時代の漢詩について(日本漢詩をどんなテキストに拠って読むか)

 むかしの漢詩鑑賞を説いた文章を読むと「格調」といふ言葉が出てきます。
 漢詩が全国の庶民階層にまで広がった江戸時代の後期、分かり易さを重んじて鄙俗に流れた宋詩風の詩体が見直される際に、用語と典故とに基づく評価基準として「格調」が云々されるやうになりました。頼山陽、梁川星巌といった江戸期最後世代の詩匠も現れます。
 唐詩には顕著であるといふ「格調」、それがどのやうなものであったのか、すでに語学的・儒学的な教養が読書界から久しく失はれてゐる現状では、理解することさへがもはや困難です。もちろん私にもわかりません。

 さらに幕末に下って、「志」として盛られた思想的な価値観──即ちかつての幕藩体制下では政治的革新性を発揮した「尊王攘夷」の思想も、明治維新の後には、尊王思想はそのまま体制謳歌へ反転して批判精神を放擲、攘夷思想も西欧文明の威力が顕著になるにつれ、アナクロニズムとして退けられ、文芸ジャンルとしての漢詩そのものがもはや新興世代の詩心をつかむ魅力を失ひ、「志」は男性によるポーズ表明の具に堕してしまひます。
 結局その後迎へた大東亜戦争敗北の結果、漢詩に対する尊重も、「尊王攘夷」が政治的な翼賛排外思想と見做されることで、戦後民主主義の教育改革の俎上にあげられ、敬遠といふよりも排斥に近い形で世代交代と共に忘れ去られるのを待つといふ、歴史的な不幸を蒙ってしまった訳であります。

 いったいに魅力が喪失したかにみえた漢詩ですが、思想の手垢が付いただけで、江戸時代の作品が変質してしまった訳ではありません。むしろ日本が中央集権国家となる以前の人心を写した貴重な文学的記録であり、一見とっつきにくい漢字の鎧に骨董的なコワモテの魅力を感じる玄人好事家の向きには、ゾクゾクするモチベーションを提供する領域でもある訳です。

 戦後しばらく経ってあらたな評価基準として、漢詩を抒情詩としてのテクニックの面から見直さうとする鑑賞が、専門外の文学者を俟って行はれました。富士川英郎の『江戸後期の詩人たち』(1966)、 中村真一郎の『頼山陽とその時代』(1971)などがこれに当ります。
 そして政治的な意義を切り離したところで、専門研究者による江戸時代文芸の考察、歴史的な文学資料としてテキストに当てられる光も新しくなる訳で、違った角度からの人物評価も立ち現れて来るやうに思ひます。此度の揖斐高先生の『江戸漢詩選』上・下巻は、その業績の反映に当たりましょう。

 さて、専門的教養が私たちから全く失はれてしまった現状のもと、詩と詩人の評価基準がかうして新しく立てられてゆくなかで、そしてもう一つ、かつての文人が重んじた「詩・書・画の三絶」の伝統に則り、書道家が選んだものを読んでゆく、といふ視点もあらうかと愚考します。

『墨場必携日本漢詩選』 北川博邦 編訳 二玄社 1999.4 22cm,332p ISBN:4544112141

 北川博邦先生による『墨場必携日本漢詩選』は、さうした視点で集められたアンソロジーと呼んでよいと思ひます。
 厖大に存在する江戸時代の漢詩を、何によって読んだらよいか分からない時、ここでは選ばれた詩篇が揮毫のためと謳ってゐることから、煩雑な註釈が伴はないやうに選定がなされてゐるので、私は非常に重宝してゐます。
 各詩の配置が訓読・註解とともに見やすく、原文に宋朝体の正漢字が使用されてゐるのも心憎い。

 このたび発行元の二玄社編集部を通じて編者の北川先生からの御諒承を賜り、【目次】【作者索引】【詩句索引】をテキスト化してupしました。
 これにより収録詩篇の全語句による検索が可能になり、その詩篇の掲載ページにたどり着くことができるようになりました。
 自分用に作ってみたものですが、本冊をお持ちの方には御利用下さい。
 北川博邦先生および二玄社編集部の御厚意に対し篤くお礼を申し上げます。


『墨場必携日本漢詩選』目次

五言絶句

暁 虎関師錬2
竹雀 義堂周信2
竹雀 義堂周信2
竹葉庵十首 釈元政4
竹葉庵十首 其の七 釈元政4
竹葉庵十首 其の八 釈元政5
経を読む 伊藤仁斎6
画に題す 本多猗蘭6
暁鶯を聴く 山根華楊7
暮春郊行 江村北海8
春山 龍草廬8
行路難 赤松滄洲9
雪中梅 南宮大湫10
渓辺桃李 守屋東陽10
渓上二首 釈六如11
即事 菊池衡岳12
日間即事 菅茶山12

偶作 亀田鵬斎15
登山 亀田鵬斎15
採菊 釈古梁16
冬夜長し 釈良寛17
漫題 館柳湾18
山行 尾池桐陽18
山に遊ぶ 田能村竹田19
淡窓五首 其の一 広瀬淡窓20
淡窓五首 其の三 広瀬淡窓20
淡窓五首 其の五 広瀬淡窓21
蚊 塩田随斎22
梅花 生方鼎斎22
竹を移す 藤森天山23
竹 其の一 藤森天山23
竹 其の二 藤森天山23
夏の初 桜祠に遊ぶ 広瀬旭荘25
終歳 広瀬旭荘25
小園 広瀬旭荘25
春雨即事 釈機外27
途中見る所 村上仏山28
春暁 長谷梅外28
江上夜帰 江馬天江29
梅花 江馬天江29

餞春 松本奎堂30
愚庵即事 其の一 釈愚庵31
愚庵即事 其の二 釈愚庵32
愚庵即事 其の三 釈愚庵32
根岸僑居四時雑詠 秋 正岡子規33


六言絶句

春日二首 其の一 高野蘭亭34
小景に題す 高野蘭亭34
山居 赤田臥牛35
快意 市河米庵36
初夏 市河米庵36
我を嵯す三首 其の一 山田梅東37
我を嵯す三首 其の二 山田梅東38
我を嵯す三首 其の三 山田梅東38
間思 山中静逸39
偶占 山中静逸39


七言絶句

後夜に仏法僧鳥を聞く 釈空海42
山夜 嵯峨天皇42
九月十日 菅原道真43
秋駅館に宿す 橘直幹44

山居 釈道元44
明極楚俊45
秋日野遊 虎関師錬46
漫興 虎関師錬46
山居 寂室元光47
壁に題す 寂室元光48
壁に題す 寂室元光48
漫成 別源円旨49
山行 夢巌祖応50
人間万事休むに如かず 龍湫周沢50
歳朝客を謝して作る 義堂周信51
海南行 細川頼之52
牡丹 鉄舟徳済52
雨後楼に登る 絶海中津53
明絶侍者の雪中の韻に次す 絶海中津54
天橋立 希世霊彦54
江天暮雪 天隠龍沢55
書を読みて晷を惜しむ 春沢永恩56
九月十三夜 上杉謙信56
乱を避け舟を江州の湖上に泛ぶ 足利義昭57
山居 藤原惺窩58
長嘯子が霊山亭に花を看て戯に賦す 藤原惺窩58

偶成 伊達政宗59
十六日 日光山に登る 林羅山
隠処 石川丈山60
閑適 石川丈山61
庭前の線桜 石川丈山62
富士山 石川丈山62
感有り 山崎閤斎63
栗 釈元政64
伏見途中 釈元政64
歳暮戯に占す 鳥山芝軒65
秦の始皇 鳥山芝軒66
偶作 新井白石66
自ら肖像に題す 新井白石67
富士山 室鳩巣68
偶題 荻生徂徠68
自嘲 伊藤東涯69
早春漫りに書す 伊藤東涯70
田園雑興 伊藤東涯70
九日 梁田蛻巌71
秋夕琵琶湖に泛ぶ 梁田蛻巌72
稲叢懐古 太宰春臺72
白雲山に登る 太宰春臺73
暮春山に登る 服部南郭74

夜墨水を下る 服部南郭74
冬夜感懐 沢村琴所75
早に深川を発す 平野金華76
夜 落葉を聞く 秋山玉山76
隣花 石島筑波77
月夜 三叉口に舟を汎ぶ 高野蘭亭78
夏川 江村北海78
嵯峨道中 龍草廬79
夏日即事 武田梅龍80
染井 中山高陽80
螢 清田儋叟81
聘を謝す 三浦梅園82
春日早起 釈六如82
西山採蕈 其の一 釈六如83
大堰川上即事 釈六如84
人の錦衾を贈るを辞す 西山拙斎84
感有り 赤松蘭室85
偶作 五月十八日夜 尾藤二洲86
松島 頼春水86
須磨西浜 頼春水87
午睡 木下蠖斎88
螢 七首 其の一 菅茶山88
春日即事 菅茶山89

冬夜の読書 菅茶山90
独り閑窓に読む 菅茶山90
病中暑甚し、旧事を憶ひて作る 菅茶山91
其の病中暑甚し、旧事を憶ひて作る 其の五 菅茶山92
雪中雑詩 市河寛斎92
晩秋舟行 市河寛斎93
偶作 亀田鵬斎94
江月 亀田鵬斎94
酔後漫吟 亀田鵬斎95
初夏偶成 松本愚山96
偶作 釈良寛96
夏日 睡より起く 館柳湾97
秋尽く 館柳湾98
木母寺 柏木如亭98
秋江 大田錦城99
雲 大窪詩仏100
夏昼 大窪詩仏100
花後 城を出づ 菊池五山101
寒燈 菊池五山102
江村即事 山梨稲川102
梅影 山梨稲川103

返照 山梨稲川104
芭蕉 野村篁園104
桜 巻菱湖105
悔を志す 巻菱湖106
春を送る 巻菱湖106
竹裏に梅に逢ふ 貫名菘翁107
松前城下の作 長尾秋水108
松 頼山陽108
不識庵が機山を撃つの図に題す 頼山陽109
春日偶成 宮沢雲山110
秋柳 西島蘭渓110
新柳 西島蘭渓111
椶櫚を詠ず 中島棕隠112
桂林荘雑詠、諸生に示す 広瀬淡窓112
初春雨中の作 広瀬淡窓113
偶興 安積艮斎114
新草 江馬細香114
梅辺 月に歩む 江馬細香115
山行、同志に示す 草場佩川116
山路秋夕 草場佩川116
枕上の作 横山致堂117
霰 横山致堂118
五十自述 梁川星巌118

蠧魚を詠ず 摩島松南119
雲州雑詩 仁科白石120
夏夜の雨 友野霞舟120
江畔独歩して花を尋ぬ 友野霞舟121
残花 友野霞舟122
田家秋晩 藍沢南城122
自画墨竹に題す 渡辺崋山123
花下の睡猫 釈梅癡124
春雨 釈梅癡124
新秋 石田醒斎
筆頭菜 後藤松陰
蕈を采る五首 其の一 斎藤拙堂126
蕈を采る五首 其の三 斎藤拙堂127
泉岳寺 坂井虎山128
秋思 原采蘋128
松魚 市に上る 生方鼎斎129
秋暁 野田笛浦130
偶成 藤森天山130
残箋 藤森天山131
敗筆 藤森天山132
彦山 中島米華132
舟を鴨湖に泛ぶ 萩原秋巌133
秋近し 張紅蘭134

山房夜雨 木下韡村134
山寺に宿す 広瀬旭荘135
春雨 筆庵に到る 広瀬旭荘136
春寒 広瀬旭荘136
花朝 澱江を下る 藤井竹外137
帰家 藤井竹外138
狐鶴 藤井竹外138
芳野 藤井竹外139
驟雨二首其の一 佐藤蕉廬140
驟雨二首其の二 佐藤蕉廬140
村居雑詩 横井小楠141
山亭雪日 釈徳含142
春雨二首其の一 遠山雲如142
春雨二首 其の二 遠山雲如143
人の仕を勧めて鯉魚を贈る有り 村上仏山144
春日 篠田雲鳳144
葵花 宇野南邨145
天王寺所見 小野湖山146
貧甚し、戯れに二絶を作る 其の二 竹内雲濤146
将に東遊せんとし壁に題す 釈月性147
花を掃ふ 土井聱牙148
鯉を放つ 広瀬青村148

桜花 草場船山149
初夏園中即事 菊池三渓150
新涼読書 菊池三渓150
雲 青山鉄槍斎151
淵明先生燈下読書図に題す 栗本鋤雲152
芳野 河野鉄兜152
盆魚 高階春帆153
偶題 江馬天江154
石を品す 江馬天江154
偶成 西郷南洲155
花山に雨に遇ふ 松本奎堂156
偶成 其の一 松本奎堂156
感を書す 川田甕江157
紙鳶 巌谷一六158
庚午元日 成島柳北158
歳晩感を書す 成島柳北159
論書絶句十二首 蘭亭帖 日下部鳴鶴160.
論書絶句十二首 蘇子瞻 日下部鳴鶴160
晩春小詩 其の二 松村小蘋161
日出 伊藤春畝162
花下の睡猫 橋本蓉塘162
金州城下の作 乃木石樵163
蕉葉に詩を題す 北方心泉164

挿梅 岩渓裳川164
山路に楓を観る 夏目漱石165


五言古詩

春日病中 尾藤二洲166
述懐 頼山陽166
物外雑題 其の一 藤森天山167
物外雑題 其の二 藤森天山168
物外雑題 其の三 藤森天山169
物外雑題 其の四 藤森天山170
物外雑題 其の五 藤森天山171
物外雑題 其の六 藤森天山172
山中 菊池渓琴172
十二愛詩 其の一 小野湖山173
十二愛詩 其の二 小野湖山174
十二愛詩 其の三 小野湖山175
十二愛詩 其の四 小野湖山176
十二愛詩 其の五 小野湖山176
十二愛詩 其の六 小野湖山177
十二愛詩 其の七 小野湖山178
十二愛詩 其の八 小野湖山179
十二愛詩 其の九 小野湖山180
十二愛詩 其の十 小野湖山180
十二愛詩 其の十一 小野湖山181
十二愛詩 其の十二 小野湖山182
寓楼雑吟二首 其の一 江馬天江183
寓楼雑吟二首其の二 江馬天江184


五言律詩

月を詠ず 文武天皇186
臨水観魚 紀末茂187
雑体 雪村友梅188
歳晩 中巌圓月189
宜翁に次韻す 釈元政190
艸山の晩眺 釈元政190
園域寺絶頂 伊藤仁斎192
偶懐二首 伊藤仁斎192
寂寂 荒川天散194
即事 新井白石195
閑居 荻生徂徠196
仏原有感 釈萬庵197
晩涼 本多猗蘭198
偶成二首 其の一 高野蘭亭199
自ら遣る 高野蘭亭200
即事 高野蘭亭200
友人の田廬に題す 鳥山ッ岳202

春日田家 岡井嵰洲203
感有り 江村北海204
白雲寺に宿す 釈大典205
出郷の作 山県大弐206
富士山 柴野栗山207
郊居 下川東里208
涼を尋ぬ二首 其の一 菅茶山209
涼を尋ぬ二首 其の二 菅茶山210
春雨山斎書事 萩原大麓211
晩歩 萩原大麓212
浮世 亀田鵬斎213
間興 頼春風214
含暉亭夜話 釈古梁215
早春三首 其の二 釈古梁216
西斎に偶ま書す 頼杏坪217
山居、沖子温の韻に同す

山居、沖子温の韻に同す 其の四 山梨稲川218
山居、沖子温の韻に同す 其の七 山梨稲川219
山居、沖子温の韻に同す 其の八 山梨稲川220
山居、沖子温の韻に同す 其の九 山梨稲川221
山居、沖子温の韻に同す 其の十 山梨稲川222
山斎に事を書す 山地蕉窓223
村居雑詩 其の一 広瀬淡窓224
村居雑詩 其の二 広瀬淡窓225


村居雑詩其の五 広瀬淡窓226
燕閑の四適 詩書 江馬細香227
花村の月夕 萩原楽亭228
独酌して詠を成す 斎藤拙堂229
夢に富士山に上る 坂井虎山230
春雨 原采蘋231
幽居其の一 藤森天山232
幽居其の二 藤森天山233
野望 釈機外234
山居雑吟 釈徳含235
山厨 長谷梅外236
窮巷 佐久間象山237
興を遣る二首 其の一 岡本黄石238
興を遣る二首 其の二 岡本黄石239
月 宇野南邨240
偶成 棚谷桂陰241
十一月望 山田翠雨242
春風 大沼枕山243
偶成 江馬天江244
枕上 向山黄村245
寒山 杉浦梅潭246
秋夜雑詠 其の一 長三洲247
秋夜雑詠 其の四 長三洲248

幽窓 西岡宜軒249
除夜 竹添井井250
山居 国分青251


七言古詩

天草の洋に泊す 頼山陽252


七言律詩

病後閑坐して偶ま所懐を吟ず 島田忠臣254
首夏即事 明極楚俊255
春遊 虎関師錬256
可休亭に題す 別源円旨257
夜坐 別源円旨258
残花を尋ぬ 釈元政259
庭前の梅花盛開す、因りて妻孥を携へて同に飲す 伊藤仁斎260
歳朝口占 鳥山芝軒261
漁父 祇園南海262
夏日山寺に遊ぶ 松平君山263
春日偶成、六十歳の作 横井也有264
石 松村梅岡265
烟を詠ず 鈴木大凡266
放歌 亀田鵬斎267

西斎小酌 頼杏坪268
漫題 金谷玉川269
偶題 館柳湾270
歳寒堂半夜偶興 武元登登庵271
睡郷 大窪詩仏272
幽事 大窪詩仏273
初夏間居 牧野鉅野274
書斎 佐羽淡斎275
芙蓉峰に登る 桜田虎門276
秋声 宮沢雲山277
墨水の秋夕 安積艮斎278
偶成 横山致堂279
壁に題す 梁川星巌
山晩 萩原楽亭281
秋日田家 釈梅癡282
小隠 萩原緑野283
晩秋暁起 萩原緑野284
酒味 野田笛浦285
茶味 野田笛浦286
己酉除夕 藤森天山287
雑詩、剣南の体に倣ふ 其の四 菊池渓琴288
南村夜帰 大槻磐渓289
初夏偶成 広瀬旭荘290

廃寺 広瀬旭荘291
夜歩 広瀬旭荘292
西渓 村上仏山293
秋日 斎藤竹堂294
懐を写す 大沼枕山295
夏意 頼支峰296
秋懐詩、懐之に示す 鈴木松塘297
独坐 河野鉄兜298
秋雨茅亭即興 副島蒼海299
秋蝉 田辺蓮舟300
病中偶作 成島柳北301
自ら遣る 近藤南州302
無題 夏目漱石303


五言古詩

悲歌 菊池渓琴304
嗟す 我貧にして書無きを 小野湖山305

【凡例】
一、本書は我が邦人の作れる漢詩386首を選注したものである。
一、本書刊行の意図は、書法愛好者の揮毫参考用とするためであるという。そのため古来名詩として伝請されてきた者も、書法作品として揮毫するに適当ではない者は省略した。
一、収載の次序は便宜上、五言・六言・七言の絶句・律詩・古詩等に分け、字数を以てした。それ故、五・七言の絶句・律詩の中には、古詩が入っていることもある。
一、同字数の時は、作者の生年を以て次序した。生年の未詳なる者は、適宜排比した。
一、それぞれの詩につき、原文・訓読文・大意・語釈を附した。また、初出箇所にのみ作者小伝を添えた。語釈・作者小伝等は紙幅の制限もあり、その注解は必要最小限に止めざるを得なかった。
一、原文は正字を用いることを原則としたが、一部通用の字体を用いた者もある。また、訓読文以下については、通用の字体を主とし適宜正字を交えた。
一、訓読文は歴史的仮名遣いを用いた。なお、訓読文に現代仮名遣いによる振仮名をつけるよう要望があったが、これには従わなかった。

【跋】
本書ははじめ全くちがった形の者を作るつもりであったのだが、折からの不況のため、二玄杜
が少しでも多く売れそうな本を作りたいというので、このような形になったのである。こちらとしても、筆は一本、箸は二本であるから、売れてくれなければ困るという事情は出版社と同様である。
さて、はじめてみると、詩を選ぶということはまことに難しい。先行の諸書はそのために大いに参考としたが、揮毫参考用に供するという目的に副うことを第一とし、次に読者にわかりやすい平明な者を採り、そして結局は従吾所好と開き直るしかなかった。それ故収録した詩の作者や内容にはかなりの偏りがあるだろうが、逆に今まで見たこともなかったという者が少なからず入っているはずであるから、そのつもりで見ていただきたい。
私は元来何もしないで済むならば、それに越したことはないという、どうしょうもない怠け者である。担当の森島氏はそのような私をうまくおだてて、毎週定期便のように原稿を取りに来るだけでなく、電話あり、FAXありで、これでは仕事をしないわけにはゆかない。編輯者は最初の読者であるとは、よく言われることである。私は怠け者であるだけではなく、疏忽者でもあるので、ついうっかり間違えたりすることもある。そのような処を彼に見つけてもらったことも少なくない。この点では最初の実に良い読者であった。記して以て大いに感謝する。本書の如き類の書は、特に本文に誤りなきことが重要であるので、その点には大いに注意したつもりである。本文を含めて注解に至るまで、錯誤の処あれば、読者諸位の指正を吝まれざらんことをお願いする。
平成十一年己卯三月、蓬翁北川博邦、東都墨堤の読古易処に識す。時に周甲。


【作者索引】

【あ】
藍沢南城・122
青山鉄槍斎・151
赤田臥牛・35
赤松滄洲・9
赤松蘭室・85
秋山玉山・76
安積艮斎・114・278
足利義昭・57
新井白石・66・67・195
荒川天散・194
石川丈山・60・61・62
石島筑波・77
石田醒斎・125
市河寛斎・92・93
市河米庵・36
伊藤春畝・162
伊藤仁斎・6・192・193・260
伊藤東涯・69・70
岩渓裳川・164
厳谷一六・158
上杉謙信・56
宇野南邨・145・240
生方鼎斎・22・129
海野蠖斎・88
江馬細香・114・115・227
江馬天江・29・30・154・183・184・244
江村北海・8・78・204
尾池桐陽・18
大窪詩仏・100・272・273
大田錦城・99
大槻磐渓・289
大沼枕山・243・295
岡井嵰洲・203
岡本黄石・238・239
荻生徂徠・68・196
小野湖山・146・173-182・305

【か】
柏木如亭・98
金谷玉川・269
亀田鵬斎・15・16・94・95・213・267
川田甕江・157
菅茶山・12-14・88-92・209・210
祇園南海・262
菊池渓琴・172・288・304
菊池五山・101・102
菊池三渓・150
菊池衡岳・12
希世霊彦・54
北方心泉・164
義堂周信・2・3・51
紀末茂・187
木下韡村・134
日下部鳴鶴・160
草場船山・149
草場佩川・116
栗本鋤雲・152
河野鉄兜・152・298
虎関師練・2・46・256
国分青香E251
後藤松陰・126
近藤南州・302

【さ】
西郷南洲・155
斎藤拙堂・126・127・229
斎藤竹堂・294
嵯峨天皇・42
坂井虎山・128・230
佐久間象山・237
桜田虎門・276
佐藤蕉廬・140
佐羽淡斎・275
沢村琴所・75
塩田随斎・22
篠田雲鳳・144
柴野栗山・207
島田忠臣・254
下川東里・208
釈機外・27・234
釈愚庵・31・32
釈空海・42
釈月性・147
釈元政・4・5・64・190・191・259
釈古梁・16・215・216
釈大典・205
釈道元・44
釈徳含・142・235
釈梅凝・124・282
釈萬庵・197
釈良寛・17・96
釈六如・11・82・83・84
寂室元光・47・48
春沢永恩・56
菅原道真・43
杉浦梅潭・246
鈴木松塘・297
鈴木大凡・266
清田儋叟・81
絶海中津・53・54
雪村友梅・188
副島蒼海・299

【た】
高階春帆・153
高野蘭亭・34・78・199・200・201・
竹内雲濤・146
竹添井井・250
武田梅龍・80
武元登登庵・271
太宰春臺・72・73
館柳湾・18・97・98・270
橘直幹・44
龍草廬・8・79
伊達政宗・59
棚谷桂陰・241
田辺蓮舟・300
田能村竹田・19
中巌円月・189
張紅蘭・134
長三洲・247・248
鉄舟徳済・52
天隠龍沢・55
土井聱牙・148
遠山雲如・142・143
友野霞舟・120・121・122
鳥山芝軒・65・66・261
鳥山菘岳・202
【な】
長尾秋水・108
中島棕隠・112
中島米華・132
中山高陽・80
夏目漱石・165・303
成島柳北・158・159・301
南宮大湫・10
西岡宜軒・249
西島蘭渓・110・111
西山拙斎・84
仁科白谷・120
貫名菘翁・107
乃木石樵・163
野田笛浦・130・285・286
野村篁園・104

【は】
萩原秋巌・133
萩原大麓・211・212
萩原楽亭・228・281
萩原緑野・283・284
橋本蓉塘・162
長谷梅外・28・236
服部南郭・74
林羅山・60
原采蘋・128・231
尾藤二洲・86・166
平野金華・76
広瀬旭荘・25・26・135・136・290-292・
広瀬青村・148
広瀬淡窓・20・21・112・113・224-226・
藤井竹外・137・138・139
藤森天山・23-24・130-132・167-172・232-233・287・
藤原惺窩・58
別源円旨・49・257・258
細川頼之・52
本多猗蘭・6・198

【ま】
巻菱湖・105・106
牧野矩野・274
正岡子規・33
摩島松南・119
松平君山・263
松村小蘋・161
松村梅岡・265
松本愚山・96
松本奎堂・30・156
三浦梅園・82
宮沢雲山・110・277
明極楚俊・45・255
夢巌祖応・50
向山黄村・245
村上仏山・28・144・293
室鳩巣・68
守屋東陽・10
文武天皇・186

【や】
梁川星巌・118・280
梁田蛻巌・71・72
山県大弐・206
山崎闇斎・63
山地蕉窓・223
山田翠雨・242
山中静逸・39・40
山田梅東・37・38
山梨稲川・102-104・218-222
山根華陽・7
横井小楠・141
横井也有・264
横山致堂・117・118・279

【ら】
頼杏坪・217・268
頼山陽・108・109・166・252
頼支峰・296
頼春水・86・87
頼春風・214
龍湫周沢・50

【わ】
渡辺崋山・123



【詩句索引】
※配列は索引ページごとに漢字でソートしたものであり、本冊とは異なる。よって掲載ページは本冊の索引ページに当たって参照されたい。

あ・い
2 312p 愛する所は豈に止だ此れのみなら
3 312p 安んぞ古人に類して
4 312p 安坐して興 悠なるかな
5 312p 意足りて求めず絲竹の楽
6 312p 意態何ぞ麗嫻なる
7 312p 移植して今幾歳ぞ
8 312p 遺恨なり十年一剣を磨きたるに
9 312p 一一影双を成す
10 312p 一笠一簑一釣竿
11 312p 一間を博し得れば吾が願畢んぬ
12 312p 一掬 方に知る春味の長きを
13 312p 一句を題して秋思を写さんと欲す
14 312p 一区占取す小林巒
15 312p 一枝 香作ち動き
16 312p 一樹に千絲にして二丈長く
17 312p 一笑す 名心終に未だ止まず
18 312p 一場の春夢 恨 帛系帛系
19 312p 一人の来るを見ず
20 312p 一生学ばず叩頭蟲を
21 312p 一団の香雪空に張り来る
22 312p 一壷の酒もて四隣を聚む
23 312p 一壷の春酒一張の琴
24 312p 一年に両度先生劇し
25 312p 一歩歩に高く光景開くに
26 312p 一蓑猶ほ立つは何為る者ぞ
27 312p 一夢未だ成らざるに天尚ほ早く
28 312p 一朶花は仏に供ふれば
29 312p 一甕春を浮かべ香凝らんと欲す
30 312p 一笻歴適す幾烟霞
31 312p 雨と詩人と落花となり
32 312p 雨に雑り風に随ひて勢摧けんと欲し
33 312p 雨に肥えて芋屬IIるに堪へ
34 312p 雨に老いたる芙蓉は纔かに色有り
35 312p 雨を衝きて誰か先づ釣磯を訪ふ
36 312p 雨を聴きては夢は幽寥たり
37 312p 雨過ぎて四望すれば更に清新なり
38 312p 雨過ぎ雷声歇み
39 312p 雨尽き雲収まり露気清し
40 312p 雨晴れ薫吹き松筠に落ち
41 312p 雨足り晴牢くして気色新に
42 312p 雨歇み京城数里の西
43 312p 雨霽れて春山は一笑し
44 312p 何れの処か吟歩に宜し
45 312p 何れの処にか塵埃を著けん
46 312p 何れの処にか涼を尋ね去る
47 312p 何れの処にか涼を尋ね去る
48 312p 何れの日にか正に原に達はん
49 312p 家に棲鶴無く夢常に寒し
50 312p 家に伝ふるは旧に依りて青氈有り
51 312p 家は鴎鷺に隣く心何ぞ競はん
52 312p 家は鎖す梨花院落の雲
53 312p 家は水の中涘を占め
54 312p 家を移して徐ろに下る竹離の頭に
55 312p 恰かも五労に似猶ほ病酒のごとく
56 312p 敢へて行止を将て蒼旻に問ふ
57 312p 敢へて雪霜に傲るに非ず
58 312p 幾びか辛酸を歴て 志始めて堅し
59 312p 幾戸の人家か翠微に倚る
60 312p 幾行の秋雁か星を帯びて征く
61 312p 幾日晴烘するも擁して開かず
62 312p 幾年養ひ就る老龍の鱗
63 312p 仰ぎては山雲の白きを視る
64 312p 仰ぎて木末を瞻れば宮楼峙つ
65 312p 暁に見る千兵の大牙を擁するを
66 312p 穴を営む蘆岸の下に
67 312p 誤りて破硯を将て良田に当て
68 312p 肯へて比す東山の旧謝安
69 312p 肯へて風塵に住まず
70 312p 秋は梧桐を動かし葉落ちし初
71 312p 秋は名僧に似て老けて益す清し
72 312p 秋を過ぎたる絡緯は咽びて声無し
73 312p 新たに田間の宅を卜し
74 312p 生きては孤僧を賺き死しては陵に殉ぜしむ
75 312p 石に帯びるに新苔有り
76 312p 跡は漁樵に雑り夢も亦た安し
77 312p 泉は庭際より涌き
78 312p 相逢ふ総べて心に懐ふ
79 312p 相依る積雪の時
80 312p 相対するは曾知の好友
81 312p 朝には沙岸の崩るるを慮り
82 312p 朝には長鑱を把りて去り
83 312p 朝に去り晩に来り幾万変す
84 312p 朝に聴き復た夕に聴けば
85 312p 到る処に秋光を賞す
86 312p 道ふを休めよ他郷苦辛多しと
87 312p 道ふ莫かれ花を先にし更に君を後にすと
88 312p 道ふ莫かれ幽人職とする所無しと
89 312p 怜むべし綻びて野僧の家に向かふ
90 312p 憐むべし粛殺たる金飆の底
91 312p 憐むべし日に向かひて心長に在るも
92 312p 婀娜又た軽盈たるを
93 312p 怡然として対飲するに鳥巾を脱ぐ
94 312p 聊か汗漫の游を為さん
95 312p 聊か探芝の客と為らん
96 312p 藜を杖つきて緩歩すれば思は悠悠
97 312p 豈に謂はんや莫逆に非ずと
98 312p 豈に高踏を将て人間に傲らんや
99 312p 豈に些子の買山銭無からんや
100 312p 豈に是れ不平を半空に鳴らさんや
101 312p 豈に鵬鴳の名誉を競ふに関せんや
102 312p 豈に忘れんや文陣に吾が軍を張りしを

い・う・え・お
104 313p 葦簾初めて捲く人を困むるの天
105 313p 易を読む松窓の下
106 313p 移し来りて与に鄰を結ぶ
107 313p 一枝纔かに開拆すれば
108 313p 一色の江天 万里の流
109 313p 一身縲紲の餘
110 313p 一声の新雁涼天を度る
111 313p 一声の鶴は眠を帯びて聞く
112 313p 一声の杜宇雲を穿つ
113 313p 一斉苒苒茸茸の緑
114 313p 一双の白鷺虐虛舟を護る
115 313p 一村花海の若く
116 313p 一担の秋声晩涼を報ず
117 313p 一朝筆を拋ち大いに軒渠す
118 313p 一鳥声無く山皎然たり
119 313p 一鳥声有り人心有り
120 313p 一天の過雨新秋を洗ひ
121 313p 一点の流螢雨を截ちて飛ぶ
122 313p 一点も俗態無く
123 313p 一碧の琉璃澹として波あらず
124 313p 一片忽ち枝に還りしは
125 313p 一片抱くこと牢し風葉の黄
126 313p 一穂の青燈 万古の心
127 313p 一枕の黒甜涼衫に満つ
128 313p 一枕の天恩我に于いて足る
129 313p 一枕短椽の下
130 313p 一榻の茶烟人寂寞
131 313p 一絲纔かに断たば忽ち勢無く
132 313p 一蟬緑樹に吟ず
133 313p 飲膳撤し来れば先づ管を挙げ
134 313p 隠処は山深く俗塵に遠し
135 313p 宇を南林の側に結び
136 313p 羽化し時を得て飛ぶ
137 313p 迂拙翻つて蒙る債主の憐
138 313p 雨径茶烟湿ふ
139 313p 雨後の春堤日華浮かび
140 313p 雨後梢頭漸く已に稀に
141 313p 雨後葱蘢として緑樹新なり
142 313p 雨餘の微暑は軽寒を雑へ
143 313p 雲霞大麓を蒸し
144 313p 雲外暮鐘の声
145 313p 雲間の黒髪何事をか笑ふ
146 313p 雲根触るる処 雨を来すに堪へ
147 313p 雲山未だ遂げず平生の志
148 313p 営営として何為る者ぞ
149 313p 栄爵は吾が願に非ず
150 313p 英雄乱世に多し
151 313p 越山併せ得たり能州の景
152 313p 厭はず芳を尋ねて来往頻なるを
153 313p 円月荒壁に嵌し
154 313p 園林疲苶を託し
155 313p 園林風雨の日
156 313p 煙霞を占め得て吾已に老ゆ
157 313p 煙中の人語は一船行くなり
158 313p 煙用姿態を添へ
159 313p 燕間 何の適する所ぞ
160 313p 燕語呢喃 午眠を起す
161 313p 艶麗真に誇るに堪ふ
162 313p 遠処の鹿鳴 山更に静なり
163 313p 遠村只だ有り一蓑帰る
164 313p 遠笛声中に夕照収まる
165 313p 遠柝城を隔てて幾更なるを知る
166 313p 横枝花を見ず
167 313p 横眠幽石に臥す
168 313p 欧公賦し去りて筆椽の知し
169 313p 屋を繞りて尽く桃を栽う
170 313p 屋外には一痕の淡月
171 313p 屋後桑榆の上
172 313p 屋後竹葉隔つ
173 313p 屋上竹葉覆ひ
174 313p 屋前竹葉垂れ
175 313p 起きて夢裡の声を求むれば
176 313p 牛を牽ける童子の外
177 313p 魚は餘照を衝きて躍り
178 313p 魚を釣るは月の黒きに乗じ
179 313p 恐らくは葉上の昨の題詩を消さん
180 313p 倦みて行厨を命じ松蔭に坐すれば
181 313p 潤は松径の蘚に分ち
182 313p 羨む莫かれ永豊の樹の
183 313p 羨む莫かれ洋洋たる万頃の波を
184 313p 中に愛竹の客有り
185 313p 中に檻泉の鏡よりも明らかたなる有り
186 313p 未だ飲まず 今年家醸の酒
187 313p 未だ工夫の詩書に到る有らず
188 313p 未だ采薇の歌を作らず
189 313p 未だ奪はず閑窓に一枕して眠るを
190 313p 未だ冬夜の長きを厭はざりしを
191 313p 未だ夜ならざるに空廊 鬼気寒し
192 313p 愈よ感慨の長きを添ふ
193 313p 有情未だ敢へて成仏を期せず
194 313p 老いては覚ゆ琴書深く味有り
195 313p 老いては親友の心知を語る無く
196 313p 偃蹇として江湖に老ゆ
197 313p 檐鈴動かず夜沈沈たり
198 313p 鬱を開き労を除き疾痊やす耐ふ
199 313p 烟雲合する処は村偏に遠く
200 313p 簷花を看んと欲して曉寒を怯る
201 313p 荀くも嶮路に由らざれば
202 313p 鶯は煙樹に蔵れて遥かなり
203 313p 鶯は舌の巧なるに因りて語は歌と成る
204 313p 鶯は柳梢に囀るも声尚は渋り
205 313p 鶯を聴きて朝に谷を出で
206 313p 鶯燕風情を助く

お・か
208 314p 影を山窓に息めて閑座して睡れば
209 314p 憶ふ昨は紅芳爛として庭に満ちしに
210 314p 恩賜の御衣今此に在り
211 314p 化して山房夜雨の声と作る
212 314p 化して龍と為らざるは何ぞ嗟くに足らん
213 314p 佳名浪りに得たるに非ざるを
214 314p 家貲未だ憲の貧に到らず
215 314p 家鳧は流を溯りて遠きも
216 314p 歌管して春臺に酔ふを
217 314p 河上の烟嵐碧紗を疊ね
218 314p 禍福は門無く人自ら召き
219 314p 禾穂黄雲美しく
220 314p 花陰地に満ちて午風和し
221 314p 花下の小茅屋
222 314p 花香暖霧を成し
223 314p 花草唯だ遊賞に縁りて譜し
224 314p 花木春過ぎて夏已に中す
225 314p 花柳繁き辺は春正に多し
226 314p 荷花月と同に白く
227 314p 課書忙しくして棲鴉と与に起き
228 314p 画牛の優劣誰か能く辨ず
229 314p 臥衣唯だ覚ゆ蕭然として冷たきを
230 314p 回る時に及び到るは毎に夕曛なり
231 314p 怪石仏頭仄き
232 314p 海城の寒柝月潮に生じ
233 314p 海底の紅輪影を飛ばし来る
234 314p 海内の文章布衣に落つ
235 314p 街居するも猶ほ覚ゆ塵喧に遠きを
236 314p 各自清渓に鑑みる
237 314p 覚えず雲来りて衣暗に湿ふを
238 314p 覚へず通身汗珠を綴るを
239 314p 郭を負ふ雲間の短径
240 314p 学若し成る無くんば復たとは遷らず
241 314p 褐衣空しく玉を抱き
242 314p 寒雲飛びて岫を出で
243 314p 寒空雪気慳なり
244 314p 寒月に九陌静なり
245 314p 寒星影は落ち一川明らかなり
246 314p 寒暖身に適し還た自由
247 314p 寒来り暑往き互に推移し
248 314p 寒哦して酒缸を煖む
249 314p 寒潭晩照の餘
250 314p 寒鴉枯木に点じ
251 314p 官退すれば更に蕭然
252 314p 漢祖の是非今尚ほ紛たり
253 314p 澗雨は林衣を濯ひ
254 314p 澗水春漲を添へ
255 314p 澗水清くして底を見
256 314p 閑臥しては雲林に似たり
257 314p 閑愁落日を悲しみ
258 314p 閑星北斗の城
259 314p 岩泉は石髪を梳る
260 314p 顔して賽瑤臺と曰ふ
261 314p 帰らんか頭上の巾
262 314p 却つて空濛蕭瑟より来るを
263 314p 却つて勝る春流の落花を泛ぶるに
264 314p 却つて樵径の滑なるを愁ふ
265 314p 却つて笑ふ残篇の狼藉して在るを
266 314p 却つて占む斯の郷の最上乗を
267 314p 却つて値ふ庭前梅綻ぶ時に
268 314p 却つて有り一拳海を駆るの勢
269 314p 却つて愧づ山中の翁の
270 314p 却つて蘆花を倩ひて絮と作して飛ばしむ
271 314p 鏡に照らして紅顔を惜しむも
272 314p 薫は徹る秋天の霽に
273 314p 自ら覚ゆ 坐し来ること久しく
274 314p 自ら衆嶽の宗たり
275 314p 自ら是れ枯腸禁じ得ず
276 314p 自ら太古の音有り
277 314p 自ら陳摶を以て使君と作し
278 314p 借りて餘照を将て山梁を渡らん
279 314p 重ねて膝前に侍するは夢寐の如し
280 314p 処るべきか将た出づべきかと
281 314p 嘗て椶櫚を愛して種うること幾株ぞ
282 314p 醸し得るは幾枝の花ぞ
283 314p 曾て聞く川上の歎
284 314p 曾て鷗盟を旧石磯に訂せり
285 314p 想ひ得たり当年簘笛の音
286 314p 鶴首の長缾は酒を注ぐこと遅し
287 314p 髪を梳けば雪纓に垂る
288 314p 彼の東園の草を鋤き
289 314p 悲しまざるは人の理に非ざるも
290 314p 必ずしも素琴を抱かざれ
291 314p 必ずしも門を鎖すこと牢からず
292 314p 風は起こるも幽樾に停まる
293 314p 風は芭蕉の樹を破る
294 314p 風は飛泉を攪して冷声を送り
295 314p 風は微雪を飄へし檐端に入る
296 314p 風は鞋底より雲を掃ひて迴る
297 314p 風を含める新縁は心をして恬ならしめ
298 314p 風を衝きて花樹に触れ
299 314p 風清く月白き時
300 314p 風生じ池水清し
301 314p 風無きに花自ら飛ぶ
302 314p 壁に挂く三重の竹秘閣
303 314p 壁に靠りて今古の事を尋思すれば
304 314p 翻つて前渓の底に在り
305 314p 和璧は真の宝に非ざるに
306 314p 仄かに樵歌を聴きては世縁を忘る
307 314p 寰宇頭を低れては何の見る所ぞ
308 314p 浣女は竹辺に喧し
309 314p 牆に傍ひて皆な竹を種え
310 314p 籬を隔てて野径開く
311 314p 轗軻未だ作らず四愁の詩

か・き
313 315p 葵扇を拈せんと欲して仍ほ安置し
314 315p 寒の裘と暑の葛と裁つこと何ぞ窄き
315 315p 寒を衝きて暁烟に立つ
316 315p 寒梅は池上に独り清臞
317 315p 寒流石上一株の松
318 315p 漢門霜冷やかに銅舵仆る
319 315p 環堵の中に蔵す無限の趣
320 315p 環堵人の到る稀に
321 315p 間門月影残れり
322 315p 閑に山を看るの笏を拄ふ
323 315p 閑は峰頭の雲に似
324 315p 閑中枕高くすべし
325 315p 閑亭独り坐して思悠悠
326 315p 閑歩す東西の塾
327 315p 閑眠忽ち醒め天未だ明けず
328 315p 閑来我も亦た去りて興に乗じ
329 315p 閑林に独坐す草堂の暁
330 315p 岸柳の秋風は遠塞の情
331 315p 眼中碌々たるは人皆な是れ
332 315p 奇言す吾が党の諸英俊
333 315p 奇語す都城の客
334 315p 奇才絶藝儔倫少なく
335 315p 奇書は趙璧に等しと
336 315p 機心已に息み 拙何ぞ妨げん
337 315p 機鳴り林響きて人家有り
338 315p 帰路桑麻を話す
339 315p 記せず酔中に新月上り
340 315p 貴賤区別ありと雖も
341 315p 起鳥三両声
342 315p 起舞は吾が事に非ず
343 315p 飢鳶腐鼠を嚇す
344 315p 掬する処 玉井の冰より清し
345 315p 菊は君子の餐に当つ
346 315p 菊残ちて賸香有り
347 315p 菊有り自ら開き仍ほ自ら苶れ
348 315p 客に対して七絃を鼓し
349 315p 客を謝して荒るるに任す林外の径
350 315p 客去り樽空しく燈又た微
351 315p 客至るも誰何する莫し
352 315p 客無く柴門是自ら扃し
353 315p 客有り来りて我に問ふ
354 315p 客有り来り談ず人世の事
355 315p 脚底は労すと難も眼底は佳
356 315p 窮しては知る天命の自ら能く運るを
357 315p 窮巷に吾が静を守り
358 315p 窮達何ぞ意に関せん
359 315p 窮達昇沈は豈に偶然ならんや
360 315p 窮通は人に在らず
361 315p 旧時の白きを改めざるに
362 315p 旧習未だ除かず君笑ふ莫かれ
363 315p 旧調今に猶ほ未だ忘れず
364 315p 旧伴新朋同に謝遣し
365 315p 旧遊は隔世の如く
366 315p 牛跡は籬落を侵し
367 315p 牛羊晩に下り来る
368 315p 去年の今夜清涼に侍し
369 315p 居を移し 今夜薜蘿に眠る
370 315p 居を卜す春暁の長流
371 315p 渠流 試みに溯す
372 315p 虚窓唯だ見る一燈明らかなるを
373 315p 漁翁網を挙げし処
374 315p 漁唱商歌都べて去り尽くし
375 315p 漁艇 釣蓑 鄙事に従ひ
376 315p 漁艇と閑鷗とに平分す
377 315p 漁童は沙際に聚り
378 315p 魚児斜日を噞ひ
379 315p 魚児相戯る意 如何ん
380 315p 喬松皎鶴を棲ましめ
381 315p 橋外の酒旗猶ほ未だ卓からず
382 315p 狂雲棟を擁して低れ
383 315p 胸臆須く古を貯ふべく
384 315p 蕎花白雪香し
385 315p 驚電窓を排して入る
386 315p 暁窓簾戸隔つ
387 315p 玉塵談餘僧は茶を献ず
388 315p 玉芙蓉を濯ひ出だせる
389 315p 玉露烏紗を湿す
390 315p 琴酒此に徘徊せん
391 315p 金鶏咿喔するも人寰は夜
392 315p 金州城外斜陽に立つ
393 315p 金鉄錚錚として耳辺に喧しく
394 315p 吟哦聊か情に適し
395 315p 九夏紅塵絶え
396 315p 君が為に一笑し衣を送り去らん
397 315p 君は是れ都下の人なるに
398 315p 君は川流に汲め我は薪を拾はん
399 315p 君を除けば豈に忘憂の朋有らんや
400 315p 君是れ花を護り花君を護り
401 315p 元来郡城に遠ければなり
402 315p 今古一曹植のみ
403 315p 樹を隔つ残鶯は猶ほ友を喚び
404 315p 樹落ち秋光新なり
405 315p 消えず四十七臣の魂
406 315p 聞説く三軍此より過ぐと
407 315p 霧に似煙に似還た雨に似
408 315p 霧昇りて林際白く
409 315p 来りて我が黒甜の牀を撼がす莫かれ
410 315p 来りて酌む松林の家
411 315p 咸陽の火一星を救はざればなり
412 315p 夾岸の霜楓晩煙を焼く
413 315p 棊罷みて山翁帰るに
414 315p 槿花の朝露看す将に尽きんとし
415 315p 蕈を探り行き行きて草莱に入り
416 315p 裘は敝れ黄金は尽き
417 315p h樹雲に連なりて秋色飛び
418 315p 鵂鶹声在り月前の枝に
419 315p 麇鼯暮声合す

き・く・け・こ

421 316p 雲か山か呉か越か
422 316p 雲の生ずるは翠徴よりし
423 316p 雲は屋端に傍ひて屯まる
424 316p 雲を披きて桂芝を尋ね
425 316p 雲を凌ぐは他年を期す
426 316p 雲移るも山動かず
427 316p 雲深くして帰るを得ず
428 316p 雲冷やかなり三千八百房
429 316p 煙は蓬窓に横はりて日漸く没す
430 316p 黄雲堆裏に白波起こるは
431 316p 黄河海に入りては再びは帰らず
432 316p 黄冠攲側し翠衣垂る
433 316p 黄鵠豈に翮を息めん
434 316p 黄昏一片蘼蕪の雨
435 316p 悔ゆらくは世塗に向かひて炎熱を衝き
436 316p 乾坤索寞として一たび悲歌す
437 316p 桔梗胡枝蟋蟀の外
438 316p 錦被は奇温なるも我が好に非ず
439 316p 琴は則ち山に対して横へ
440 316p 琴を抱きて晩暉に坐す
441 316p 金龍山畔江月浮かび
442 316p 金鱗映射す碧漣漪に
443 316p 吟歩は軽屐宜しく
444 316p 吟歩愁へず還た夜に入るを
445 316p 吟榻の薫風 茶熟する時
446 316p 句に耽りて長日を消し
447 316p 句を改むるは僧に従ひて議し
448 316p 句を哦し茶を啜りて夕陽に坐す
449 316p 空階一霎吟蛩雨のごとく
450 316p 空玄論ずるに足らず
451 316p 空山行き尽くして渓に傍ひて回る
452 316p 空山白楊落つ
453 316p 空山迢遞として夕陽多し
454 316p 空庭見ず猫児の睡るを
455 316p 空林宿島啼き
456 316p 空林風入りて人言を作す
457 316p 空杳として暮烟深し
458 316p 屈子の糧に充つるに非ず
459 316p 君子見るべからず
460 316p 薫風は散歩を牽き
461 316p 袈裟尽日薫る
462 316p 渓南天夕れんと欲す
463 316p 軽煙日を龍め薄く山を遮る
464 316p 軽吹孤琴に韻き
465 316p 軽雷声裏に早蛬鳴く
466 316p 軽露乱れて双腋より落ち
467 316p 軽篙蹙破す水中の山
468 316p 鶏犬を追ひ去りて天に昇らず
469 316p 鯨鰐舟路に横はり
470 316p 穴中は寸に盈たざるに
471 316p 月下に坐禅し花下に斟む
472 316p 月舟霧渚に移り
473 316p 月前の色を見ず
474 316p 月明宛かも似たり龍燈出づるに
475 316p 剣は峡月に乗じて鳴る
476 316p 検し来る往日手抄の書
477 316p 牽牛日淡く午猶ほ花あり
478 316p 研匣間に乗じて払ひ
479 316p 玄白は人の笑に従ひ
480 316p 絃歌して春夕を度らん
481 316p 交情は出でず梅花の外
482 316p 光陰の倏忽なるは箭の弦を離る
483 316p 光陰は荏再として梭を拋つに似
484 316p 光輝を分付し夜色多し
485 316p 好山我を迎へて笑ひ
486 316p 江旭曈曈として碧流に映る
487 316p 江湖に落魄して暗に愁を結び
488 316p 江湖は畢竟是れ吾が家
489 316p 江山は変革無きも
490 316p 江山自ら夢魂の通ずる有り
491 316p 江山未だ必ずしも吟哦を助けず
492 316p 江山幽夢家千里
493 316p 江上には相親しむ白鷗
494 316p 江上風涼しき夜
495 316p 紅雲忽ち長江を渡り去り
496 316p 紅顔も多病にして老い
497 316p 紅顔日月古り
498 316p 荒径依微として歩を進むること難し
499 316p 荒鶏乱鳴する莫かれ
500 316p 香雲暖雪の中より来ればなり
501 316p 香餌に因りて生涯を誤る勿かれ
502 316p 高歌す 行路難を
503 316p 高臥す 紙窓の中
504 316p 高士をして風直を減ぜしむる莫かれ
505 316p 高尚心は在りと雖も
506 316p 豪侈豈に期せんや万錢の食
507 316p 頃間一たび新涼の味を掬するも
508 316p 暮には宿す一枝の竹に
509 316p 薬を採るは秋の晴るるを喜ぶ
510 316p 薬を煮んとして前泉に汲む
511 316p 勁直は稟賦に出ず
512 316p 徑雪に屐は白きを穿ち
513 316p 渓雲屋を擁し黯くして開き難し
514 316p 渓雲凍りて開かず
515 316p 渓澗泉声響き
516 316p 渓間終日香魚を打し
517 316p 渓上月未だ沈まず
518 316p 渓声夜深くして急なり
519 316p 禊序の一篇は千古の妙
520 316p 缺月光は斜に半峰暗く
521 316p 螢雪奇と難も晷に如かず
522 316p 裙屐城に満ち春色を競ふも
523 316p 逕苔は雨に先ちて生ず
524 316p 鉤月耕雲古風を慕ふ


526 317p 惟れ荊と棘と路無きかと疑ひ
527 317p 衣は春風に別れて酒痕を減ず
528 317p 衣は湘流に遇ひて湿ひ
529 317p 黄鳥声稀にして睡覚むること遅し
530 317p 黄鳥鳴くは何れの処ぞ
531 317p 黄蘆は半ば老い風に力無く
532 317p 古今の興廃は一丘貉
533 317p 古渡月明らかに我が影を携へ
534 317p 古道垂楊の裡
535 317p 古墓 田と為り松柏摧かれ
536 317p 古来豪貴の者も
537 317p 古陵の松柏天飆に吼え
538 317p 古刹白雲幽なり
539 317p 呼吸還た疑ふ帝座に通ずるかと
540 317p 固守せん伝家の勤倹の風
541 317p 孤花露下に明らかなり
542 317p 孤吟して幽景を玩し
543 317p 孤愁鶴の春空に在るを夢む
544 317p 孤舟一夜思悠悠
545 317p 孤松は三尺竹は三竿
546 317p 孤鶴杳として跡無く
547 317p 孤燈明減して螢より小さく
548 317p 孤笻もて散歩して前坡に下れば
549 317p 戸外清流の水
550 317p 戸戸の明燈夜を催して作り
551 317p 故に幽逕を穿ちて生ず
552 317p 故らに百花深き処に向かひて啼く
553 317p 故人在りと難も皆千里
554 317p 枯坐幽スに対す
555 317p 枯木痩せて人の如し
556 317p 枯木白雲の裏
557 317p 湖景幽吟に入る
558 317p 湖山画の如く吟眸を豁くし
559 317p 湖北湖南暮色濃く
560 317p 胡蝶風涼しく秋も亦た夢み
561 317p 菰米は慳庖を助く
562 317p 五尺の小身渾べて是れ胆
563 317p 五典三墳積むこと多きを奈んせん
564 317p 午窓に枕を欹てて舒巻を看るに
565 317p 午路涼しき処を尋ね
566 317p 後先して暮鳥帰り
567 317p 梧桐葉尽き雨声乾く
568 317p 梧葉の秋声感餘り有り
569 317p 語了りて忽ち高歌し
570 317p 交遊は異代を懐ひ
571 317p 光風霽月今猶ほ古のごときも
572 317p 公孫弾丸を挟まん
573 317p 功名首を回らせば総べて空空
574 317p 功名富貴も亦た多無し
575 317p 功名富貴終に何事ぞ
576 317p 江天暮れんと欲し雪霏霏たり
577 317p 江辺春暖かに青莎長じ
578 317p 江摇らぎ月湧き金龍流る
579 317p 皇墳と聖経とを棄擲し
580 317p 稿は夏日に随ひて詩課を増し
581 317p 紅心瑣瑣たり木梢の蘿
582 317p 紅塵到らず梵王の家
583 317p 紅葉は魚よりも多し
584 317p 紅輪半夜に生じ
585 317p 荒遊を楽しみて歳華を擲つ莫かれ
586 317p 行人一断して艸萋萋たり
587 317p 行蔵何ぞ必ずしも辨ぜん
588 317p 行路信に自ら難し
589 317p 香を送りて終日東風起こり
590 317p 香稲熱する辺の蕎麦の花なり
591 317p 香風地に満ち人を襲ひ来る
592 317p 高節曾て移らざればなり
593 317p 高節餘清有り
594 317p 高低八九家
595 317p 高堂に近づきて宿する莫かれ
596 317p 高風誰か継ぐべき
597 317p 鴻文の誠意伯
598 317p 此に到りて真源を覓む
599 317p 此の花若し唐園の裏に在らば
600 317p 此の間房を借りること恰かも一年
601 317p 此の際皆な詩料
602 317p 此の処聊か応に我が纓を濯ふべし
603 317p 此の松誰か種え又た誰か看る
604 317p 此の心聊か自ら比す
605 317p 此の法禅ならず又た仙ならず
606 317p 此の幽人の家を妝はん
607 317p 此より五千三百自里
608 317p 試みに看よ野趣の長きを
609 317p 試みに月中に向かひて看よ
610 317p 試みに滄洲の路を問ふ
611 317p 事は飛鳥の如く尋ぬるも跡無ければ
612 317p 事忙しきに臨みし時尤も味有り
613 317p 心は蟲の上爻を期す
614 317p 心静なれば境も自ら静に
615 317p 尽く是れ後人流涕の痕
616 317p 是れ亦た間人日課の中
617 317p 請ふ看よ健緑亭亭の色
618 317p 請ふ看よ今の世も亦た之の如きを
619 317p 請ふ看よ神馬の功を
620 317p 請ふ看よ人間行路の難きを
621 317p 苔を啄み水を飲み自ら従容
622 317p 苔を破る新筍は又た児を生ず
623 317p 苔摇らぎて魚在るを識り
624 317p 壷天の日月は太だ遅遅たり
625 317p 頭を回して月痕を看れば
626 317p 頭を低るるも君笑ふ莫かれ
627 317p 之に対して朝タを送る
628 317p 之に対して吝鄙を消さん
629 317p 之を江海の底に置くも
630 317p 之を悲しむも又た何ぞ益あらん
631 317p 之を誦して憂愁を排し
632 317p 兀坐し独り悲歌す
633 317p 恍として疑ふ身は人郷に在らざるかと
634 317p 皓鸞乗ずべからざれば

こ・さ・し
636 318p 衣を振るふ水石の間
637 318p 去りて春澗の薇を尋ぬ
638 318p 去りて前山一帯の雲と作る
639 318p 幸ひに是れ先生未だ身を売らず
640 318p 今朝眼を転ずれぼ已に飄零す
641 318p 今朝旧を憶ひ謾ろに咨嗟す
642 318p 今朝鐘声の緩かなるを認め得たる
643 318p 今日君の酔に乗じ
644 318p 今晩松魚初めて市に上り
645 318p 今夜は白石を煮るならん
646 318p 沙岸人は帰り漁市散じ
647 318p 沙鳥は飛ばず人見えず
648 318p 沙底に頭を擡げ磊砢として簇す
649 318p 沙汀南望すれば煙波浩たり
650 318p 沙田千畝馬牛瘦せ
651 318p 坐して見る隣園桃李の春の
652 318p 坐して穀帛を糜するは更に無用
653 318p 坐して書帷を守りて睡を得ること遅し
654 318p 坐して鶴雛の還るを待つ
655 318p 坐し来りて更に嫦娥の手を借り
656 318p 再に江郎夢裏の花を吐かんことを
657 318p 細雨 風に随ひ斜に座に入り
658 318p 細風竹を穿ちて書声を送る
659 318p 菜花黄半ば謝し
660 318p 昨雨十分に膏沢足り
661 318p 昨日は寒風今日は雨
662 318p 昨日一書を借るは
663 318p 昨夜月明らかに何れの処にか宿せる
664 318p 匙を翻す白雪は新稲を炊ぎ
665 318p 撮土も九畹に同じく
666 318p 三叉中断す大江の秋
667 318p 三載長安の市
668 318p 三尺の松魚海を出で
669 318p 三尺の盆中水多からず
670 318p 三秋爽気清し
671 318p 三百餘旬此くの如く度る
672 318p 三宝の声一鳥に聞く
673 318p 三面の高墻小園を護る
674 318p 山雲濃暖にして白堆を成し
675 318p 山園は村落の僻
676 318p 山翁は遊人を見るに慣れず
677 318p 山翁相対して賓主無く
678 318p 山居日日恰かも相同じく
679 318p 山禽は哢り倦みて夕陽残す
680 318p 山禽叫断して夜寥寥
681 318p 山行六七里
682 318p 山斎微雨静かに
683 318p 山斎夜冷厳しく
684 318p 山寺春を尋ねて春寂寥
685 318p 山色と山形と
686 318p 山色全く晴れ都べて月色
687 318p 山厨煙火晩く
688 318p 山水宜しく応接すべし
689 318p 山水清霊の気を養ひ来り
690 318p 山川画の如く秋に入りて新たに
691 318p 山川草木転た荒涼
692 318p 山川暮色に逢ひ
693 318p 山中には万点の梅花
694 318p 山鳥は窓前に時に剥啄し
695 318p 山鳥何れの処より来る
696 318p 山房人見えず
697 318p 山林に生涯有り
698 318p 山屐涼に乗じて蘇径斜なり
699 318p 山嶽崩すべく海翻すべきも
700 318p 山霤穿ちし痕風を発さんと欲す
701 318p 山鶯処処に啼く
702 318p 蚕眠の細字もて烏絲に写く
703 318p 残稲全収す薄暮の間
704 318p 残雨 竹 烟を浮かぶ
705 318p 残雲剰霧 碧 囲を成す
706 318p 残花落ち尽くし残春を送り
707 318p 残月影横はる辺
708 318p 残燈明滅す隔隣の墻
709 318p 残螢は暗水に依り
710 318p 残螢壁に粘して孤燈影あり
711 318p 鹿は竹園に傍ひて行く
712 318p 柴桑の酔に供するに非ず
713 318p 柴扉曉に出づれば霜雪の如し
714 318p 柴門常に開かず
715 318p 遮莫れ家郷遠征を憶ふ
716 318p 酒に対しては当に歌うべく貧を説く莫かれ
717 318p 酒を温むる火は栗を焼く火と分かち
718 318p 酒有り只だ須く酔ふべし
719 318p 酒竭きて客も亦た去り
720 318p 盛んに水徳を称するは真に笑ふに堪へたり
721 318p 醒め来りては酒を飲み酔ひ来りて
722 318p 醒め来れば残日西墻を下る
723 318p 如かず濯濯として春暉に映ずるに
724 318p 頼ひに老妻の能く酒を釀す有れば
725 318p 咨嗟方に駭く星躔の近く
726 318p 嗟す我今何の楽しむ所ぞ
727 318p 嗟す我今何の喜ぶ所ぞ
728 318p 嗟す我今何の懼るる所ぞ
729 318p 嗟す我今貧にして書無く
730 318p 崑山随処玉に非ざる莫かりしを
731 318p 蔡中郎に遇ふ莫かれ
732 318p 蹉跎として世路に違ひ
733 318p 歲晚天寒き処
734 318p 歲晚天寒く誰か是れ友なる
735 318p 篙を停め回首して孤松を問ふ


736 319p 且く称ふ三径の老元亮
737 319p 且く尽くさん生前酒一盃
738 319p 且く芙蓉の夢を仮り
739 319p 閑に乱帙を収めて疑義を思ふ
740 319p 暫く一枝の筇を拄ふ
741 319p 四十年間微しく飲を節すれば
742 319p 四野の風光は無限に好く
743 319p 市朝の辺に到らざるを
744 319p 指上に数へ過ぐ多日月
745 319p 指点す烟波の間
746 319p 斯文未だ地に委せず
747 319p 枝枝爛漫として牆を隔てて新なるを
748 319p 枝上の晩鶯啼き歇む時
749 319p 死して厳根に在れば骨も也た清からん
750 319p 死に任じ生に任じて為す所無く
751 319p 死生は命有り我奚んぞ疑はん
752 319p 紫石稜稜として電人を射る
753 319p 詩酒の親交は但だ両三
754 319p 詩酒能く情味をして淡からしめ
755 319p 詩書堆裏煩喧を避く
756 319p 詩成るも白雪孤なり
757 319p 詩天茶候の良辰
758 319p 詩篇独り任す偶然成るを
759 319p 詩魔は病魔に譲る
760 319p 児曹好し保護せよ
761 319p 児孫の為に美田を買はず
762 319p 児童誇る莫かれ乃翁の嬾
763 319p 自然に喜も無く亦た憂も無し
764 319p 自然幽意生ず
765 319p 失馬の悲歓人更に迷ふ
766 319p 室を築きて市井に在るも
767 319p 斜陽 鴉 樹を認め
768 319p 斜陽一たび照らし来れば
769 319p 斜陽麦隴に横はり
770 319p 煮茶の烟起こり林霏を湿す
771 319p 邪法邦を迷はし唱へて終へず
772 319p 弱水渺として求め難し
773 319p 主人の屋を穿たず
774 319p 朱夏の消息を報知するは
775 319p 朱門歌舞の筵に到らざるを
776 319p 種種花は開き種種鳴けり
777 319p 酒家猶ほ未だ扃さず
778 319p 酒香の茅店杏花の時
779 319p 酒中去輪沈む
780 319p 樹竹悉く秋声
781 319p 樹竹春に逢ふ旧隠栖
782 319p 樹杪に月亭亭たり
783 319p 修竹青雲を払ふ
784 319p 修篁何ぞ歌高たる
785 319p 愁聴す三更涓滴の雨
786 319p 洲蘆の夜雨は他郷の涙
787 319p 秋雨茅亭客の過る無く
788 319p 秋光眼に満つ簾を撥ぐる時
789 319p 秋山一路経過のタ
790 319p 秋思の詩篇始独り膓を断つ
791 319p 秋色 池荷に老ゆ
792 319p 秋心偏へに月中に向かひて生ず
793 319p 秋水は磨したる明鏡のごとく
794 319p 秋水平野を界し
795 319p 秋声遠きより来る
796 319p 秋声澗戸を驚かし
797 319p 秋堂の風露早涼の初
798 319p 秋風に白髪三千丈
799 319p 秋風吹き断たず
800 319p 秋蠅は賈島のごと痩せ
801 319p 終蔵街中に住み
802 319p 終日語言無く
803 319p 終日孱顔に対す
804 319p 終日澹然として榻に憑りて眠る
805 319p 習懶唯だ睡を成し
806 319p 衆影孤月に帰し
807 319p 衆星皆な光を滅す
808 319p 十年の蹤跡烟霞に負きしを
809 319p 十年実学無く
810 319p 十分に秋光を占む
811 319p 十有三春秋
812 319p 十里風は腥し新戦場
813 319p 従来温飽は雄志を害ふ
814 319p 従来此れは是れ我が家の伝
815 319p 夙昔男児の志
816 319p 宿鷺眠鴎は倶に是れ侶
817 319p 熟見すれば翻飛せる海島の群なり
818 319p 熟路は趣を成し難く
819 319p 出処は何の必とする所ぞ
820 319p 出入時無く西復た東す
821 319p 春雨真に喜ぶに堪へたり
822 319p 春雨薬苗肥ゆ
823 319p 春雲は絮の如く雨は絲の如く
824 319p 春煙一道分かつ
825 319p 春街人家を鎖す
826 319p 春澗斜に水村に通ず
827 319p 春禽啼破して夢魂残し
828 319p 春事怱怱として別恨成る
829 319p 春酒花に傍ひて斟む
830 319p 春風客を吹きて到り
831 319p 春風猶ほ未だ江州に到らず
832 319p 書衣暖に向かひて開く
833 319p 須臾に風起り吹き将ち去り
834 319p 須臾も未だ背へて閑居に伴はず
835 319p 霜に爛れたるも瓜餐ふべし
836 319p 霜は軍営に満ち秋気清し
837 319p 霜は早く園休に柿栗肥え
838 319p 霜落ち滄江秋水清く
839 319p 日月の往来は両擲梭
840 319p 日月中峰を避く
841 319p 牆陰の残雪尚ほ堆を成す
842 319p 茵を移して独り花前に就きて斟めば
843 319p 菘園葱畦路を取ること斜に
844 319p 翛然として善く涼を引き


846 320p 詩を思ひて人は夕陽の船に在り
847 320p 詩を題すれば墨は膩滑に
848 320p 詩を題せんとして小箋を展べしに
849 320p 時誉は由来馬耳の風
850 320p 識らず胚胎するは幾種の紅ぞ
851 320p 処処の鹿声尋ぬるも得ず
852 320p 曙色未だ全くは明らかならず
853 320p 書を読みて空堂に在り
854 320p 書を読む燈は麻を積ぐ燈と共にす
855 320p 書を売り剣を売り家貲尽くるも
856 320p 書を拋ちて掃うに懶し几頭の塵
857 320p 書巻を除くの外は百皆な厭ひ
858 320p 書窓借りんと欲す魯陽の戈を
859 320p 徐生当日仙を求むる処
860 320p 小園に思は澹然たり
861 320p 小蟹は江浦に生じ
862 320p 小眠す南北の楼
863 320p 尚友す書千巻
864 320p 承麈一簟花紋古り
865 320p 松陰深き処茅菴を占め
866 320p 松雲過ぐる処蓬門暗く
867 320p 松下の燈光は孤廟静かに
868 320p 松蓋千秋の影
869 320p 松間の落照は葵花に映ず
870 320p 松渓秋雨歇み
871 320p 松根に暫く箕踞す
872 320p 松籟茶鼎に帰し
873 320p 松蕈山を断ちて銭に直せずと
874 320p 松蘿烟靄の旧茅廬
875 320p 松醪は暢飲に供し
876 320p 松醪復た榼に満つ
877 320p 樵蹊は世間と通ぜず
878 320p 湘簾半ば捲く閑窓の午
879 320p 祥雲と看做せるは是れ此の花ならん
880 320p 蕉影窓に揺れて夢を結ぶこと遅し
881 320p 蕉葉は懸泉 荷は珠を転じ
882 320p 上帝高居す白王臺
883 320p 丈夫は玉砕甎全を恥づ
884 320p 城市も亦た深林
885 320p 城市東臺隔つ
886 320p 触処に懐を放たば聊か誤しむべし
887 320p 食肉には断じて知る此の味無きを
888 320p 心事は雲と与に閑なり
889 320p 心中に遊び遍し旧山川
890 320p 新荷葉葉已に銭を成せり
891 320p 新交更に締するは寒螿有り
892 320p 新草尖は抽んず細雨の中
893 320p 新築は頗る幽雅に
894 320p 新築は団焦小さく
895 320p 新年も日月はロ只だ尋常なるに
896 320p 新涼早に已に郊墟に到る
897 320p 新妝相妬まず
898 320p 晋唐の帖は学び難きも
899 320p 深巷驚尨吠ゆ
900 320p 深山還た啓蟄
901 320p 深山雪夜艸庵の中
902 320p 深村小巷誰有りてか経る
903 320p 深林食に乏しと雖も
904 320p 深壑時に為す龍の一吟
905 320p 神龍棲み老ゆ洞中の淵
906 320p 秦廟草荒れ石馬を埋め
907 320p 身後期するを須ひず
908 320p 人海の風波何ぞ論ずるに足らん
909 320p 人間の炎と涼とを閲尽し
910 320p 人間の佳況は得難きに非ず
911 320p 人間の事を話す莫かれ
912 320p 人間の得失総ベて聞く無し
913 320p 人間多少功名の夢
914 320p 人間到る処青山有り
915 320p 人間復たとは伏羲の時無し
916 320p 人間別に有り四時の春
917 320p 人間万事休むに如かず
918 320p 人間無用の書を焚き尽くすべき
919 320p 人事此くの如き有り
920 320p 人世は興亡有り
921 320p 人生の天定なるは身前に在り
922 320p 人生は真に過客
923 320p 人生五十功無きを愧づ
924 320p 人生自ら涯有り
925 320p 人生生死有り
926 320p 人声已に絶え只だ泉声のみ
927 320p 人籟寥寥として絶え
928 320p 尽日無言に好く相対するも
929 320p 生涯は馬鬣に封じ
930 320p 生涯只だ是れ烟波の上
931 320p 知らず何れの路か桃源なるを
932 320p 知らず何処の寺
933 320p 知らず此の意誰と与に論ずるかを
934 320p 知らず春色の人間より去れるを
935 320p 知らず春日の長きを
936 320p 知らず新霽の日
937 320p 知らず童子の燈に点じ来るを
938 320p 知らんと欲す離別の恨
939 320p 知る是れ夜来微雨過ぎしを
940 320p 知る他の淅瀝は渾べて無頼にして
941 320p 知る他は是れ蝴蝶なるを
942 320p 知る汝が鶏群に長く蹤を絶つを
943 320p 如今玩弄す升平の日
944 320p 悄悄たる愴心の曲
945 320p 憔悴せる千株は姿態微にして
946 320p 瀟洒の精神冷淡の姿
947 320p 瀟瀟驟雨を聞く
948 320p 牀を連ねて相対せしに人何くにか在る
949 320p 牆外数枝の梅
950 320p 蕭条たる身世黯心傷る
951 320p 蕭条たる破屋も又た新春
952 320p 蕭瑟たる秋声聴くべからず
953 320p 逍遥して心自ら間なり
954 320p 韶華に草樹催すを
955 320p 裊裊として行雲起こり

し・す・せ
957 321p 既に栄途を擲ちて退閑に甘んずるも
958 321p 既に柘且つ桑と 村有るを知る
959 321p 吸ひ来りて訝る是れ金茎の露かと
960 321p 勺木も増すべからず
961 321p 寂寂たり幽人の宅
962 321p 省せず三春夢裏に過ぐるを
963 321p 進むに当たりて毎に瞿瞿たり
964 321p 垂垂として枝を圧して開くを
965 321p 垂老春に逢ひ偏に睡を愛す
966 321p 水晶簾外月玲瓏たり
967 321p 水中の孑子
968 321p 水天髣髴青一髪
969 321p 水面痕を留めず
970 321p 水紋簟滑らかにして涼気生じ
971 321p 炊煙墟里に上り
972 321p 睡郷の巡撫は是れ官銜
973 321p 睡味をして香しからしむるを要す
974 321p 睡餘一事無く
975 321p 翠露斜斜として葛巾に滴る
976 321p 衰眼春に逢ひ別に花有り
977 321p 衰遅常に納る後生の侮
978 321p 酔は淡雲に入りて醒む
979 321p 酔書は禿毫を愛す
980 321p 酔生夢死も知らず
981 321p 酔来竹を写くに蘆葉に似たり
982 321p 酔裏知らず風雪の寒きを
983 321p 酔餘の静坐は黙して言を忘る
984 321p 酔餘杖を扶きて吟情を寄す
985 321p 数行の過雁月三更
986 321p 数尺の芸窓雑樹の隈
987 321p 世事を将て胸次に繋けざれば
988 321p 世事嘗むるに飽き貧に味有り
989 321p 世事那んぞ説くに堪へん
990 321p 世事紛として朝日に従ひて生ず
991 321p 世途は俗に違ひて遠く
992 321p 世途は畢竟羊腸の険
993 321p 世務久しく相違ふ
994 321p 勢盛んなれば則ち衰ふるも早く
995 321p 征馬前まず人語らず
996 321p 性迂にして当時を補ふ無し
997 321p 晴江秋浄く碧天を涵す
998 321p 清影嵐翠に和し
999 321p 清渓三百曲
1000 321p 清心は水に喻ふべし
1001 321p 清尊且く自ら酌む
1002 321p 清貧の二字は是れ伝家なればなり
1003 321p 清貧聊か慕ふ浣花渓
1004 321p 清風一榻を共にするを
1005 321p 清風三径の竹
1006 321p 清風樹に満ち雨声来る
1007 321p 清風貯へ得て満襟涼し
1008 321p 清風鶴唳白雲の中
1009 321p 清風無限に好し
1010 321p 清風面を払ひて幽閑を楽しみしを
1011 321p 清風葉葉涼し
1012 321p 清流奇石 緑 彎を縈り
1013 321p 清露摶として将に滴らんとし
1014 321p 清唳して時時稿衣を刷くを
1015 321p 清晨戸を䦱きて望めば
1016 321p 清晨自ら軒を掃ふ
1017 321p 生事の艱虞なるは舟の水を泝り
1018 321p 声心雲水倶に了了
1019 321p 声声自ら名を報ぐ
1020 321p 西渓徐かに小橋を度りて行く
1021 321p 西江の水は東江の岸を拍ち
1022 321p 西斎は纔かに数笏
1023 321p 西山に薇を采らんことを憶ふ
1024 321p 西山の最高頂
1025 321p 西山近ろ樵夫の信有りて
1026 321p 西土の牡丹徒らに自ら誇るは
1027 321p 西南の檐宇漸く冥冥
1028 321p 西風に陵轢せらるるも未だ肯へて零ちず
1029 321p 西風何れの処にか帰る
1030 321p 西風落葉を吹き
1031 321p 西来の祖道我東に伝ふ
1032 321p 醒人は来り哭し酔人は歌ふ
1033 321p 青山は厭はず読書の人を
1034 321p 青山高く聳ゆ白雲の辺
1035 321p 青山座に入り来ればなり
1036 321p 青山初めて已に曙け
1037 321p 青山独り語るべし
1038 321p 青苔地上に紅無数
1039 321p 青鸞千仞に飛び
1040 321p 静は松頂の鶴の如し
1041 321p 静観と寂聴と
1042 321p 静坐して幽馥を聞かば
1043 321p 静坐禅機を悟る
1044 321p 静中の風景は尚ほ依然たり
1045 321p 静夜長に安坐し
1046 321p 静裏空しく驚く歳月流るるを
1047 321p 脆紅無数欄干を溼す
1048 321p 石火光中又た一年
1049 321p 石罅苔間掃へども窮まらず
1050 321p 積雪の山中昼扉を掩ひ
1051 321p 曾来老天に任せん
1052 321p 即ち知る家は深渓の辺に近きを
1053 321p 便ち看る猿子の山庭に満つるを
1054 321p 墨乾くも几上に詩は湿いを留め
1055 321p 已に開きし花は羨む未だ開かざる花を
1056 321p 已に吾が貌の醜を成し
1057 321p 已に秋声を送りて客牀に到る
1058 321p 已に松間の逕を過ぎ
1059 321p 已に人間世に住みたれば
1060 321p 已に甕を抱くの機を忘れ
1061 321p 晨露荷に上りて円なり

せ・そ・た
1063 322p 芹は青く魚は白く水方に肥え
1064 322p 桑弧四方を事とす
1065 322p 桑田碧海は須臾の夢
1066 322p 坐に誦す招隠の篇
1067 322p 坐ろに憶ふ天公世塵を洗ふかと
1068 322p 寂歴たり中宵の後
1069 322p 寂歴として軒楹に映る
1070 322p 寂寥たり塵外の境
1071 322p 寂寥聴くに堪へたり清宵の雨の
1072 322p 世上の寒暄曾て管せず
1073 322p 世上紛粉として幾変遷ぞ
1074 322p 世情は真に蠟を嚼む
1075 322p 世塵の侵すを受けず
1076 322p 世俗の紅塵飛び到らず
1077 322p 昔夢醒め難きは痩蝶に同じく
1078 322p 石苔雨に沐し滑にして攀じ難く
1079 322p 拙は是れ逃名の策
1080 322p 接輿の狂を学ぶに似たり
1081 322p 節序須臾に換はるも
1082 322p 雪花吹き洒ぐ小茅椽
1083 322p 雪華幾寸ぞ新阡を没し
1084 322p 雪景殊に描くベし
1085 322p 雪月風花の佳景
1086 322p 雪冰を吹き散らし来りて雹と作り
1087 322p 絶巓縹緲たり有無の中
1088 322p 仙客来り遊ぶ霊外の巓
1089 322p 仙萼は俗客の知るに縁る無し
1090 322p 先生黙黙として総べて喑の如くならむ
1091 322p 千古の英雄皆白骨
1092 322p 千古一言もて秘訣を伝ふ
1093 322p 千紅尽きし後一花尊し
1094 322p 千載青史に列するを得ん
1095 322p 千載天真を存す
1096 322p 千載老柴桑に
1097 322p 千秋の積雪蓬莱を擁す
1098 322p 千声一休に集まる
1099 322p 千年名独り伝ふ
1100 322p 千峰皓月流る
1101 322p 千林の霜葉夜飄零し
1102 322p 千嶂蒼蒼として暮色凝り
1103 322p 尖風破窓を鑽す
1104 322p 浅水柔沙一径斜に
1105 322p 前浦空中一簇の雲
1106 322p 前朝を問はんと欲するも仏は語無く
1107 322p 前峰月上り竹窓明なり
1108 322p 全山の体を見ず
1109 322p 曾遊回首すれば滄桑を感ず
1110 322p 疏影登前横又た斜
1111 322p 疏花草席に点ず
1112 322p 疏鐘枕頭に到る
1113 322p 疏網の曬餘 三画家
1114 322p 疏木風声緊に
1115 322p 疏簾の微雨 眠 醒めし後
1116 322p 疏簾半ば捲き意は依稀たり
1117 322p 疏簾夜色沈たり
1118 322p 素節微徴たり簪上の髪
1119 322p 蘇武 羝を牧す十九年
1120 322p 双双鷺水に眠り
1121 322p 双蝶相牽きて菊離に到る
1122 322p 双跏して習静す東窓の下
1123 322p 早晩誰か能く寄栖を免れん
1124 322p 窓間に三五枝を添へ得たり
1125 322p 窓前数竿の竹
1126 322p 窓前誰か報ず秋風到ると
1127 322p 窓竹は風に後れて動き
1128 322p 窓底に硯塵を掃ふ
1129 322p 糟粕嘗め来りて愚は益す愚に
1130 322p 草履倦時に休む
1131 322p 蒼顔鉄の如く鬢銀の如し
1132 322p 蒼蒼として塵に染まず
1133 322p 蒼苔已に痕有るを
1134 322p 蒼洋碧落鴻濛に接す
1135 322p 霜魚は玉を斫り 雪 盤に堆く
1136 322p 霜後嫣然として口を開きて笑へば
1137 322p 霜鐘五更に響き
1138 322p 霜風蕭瑟たり蘆荻の洲
1139 322p 霜林北斗懸り
1140 322p 促促たり籠中の鳥
1141 322p 俗習風を成し歳を賀するに忙し
1142 322p 村村春社散じ
1143 322p 村店を過りて微酔を買はんと欲し
1144 322p 村烟竹色有無の間
1145 322p 苔衣敗壁を装ひ
1146 322p 苔気涼露を吹く
1147 322p 苔痕雨を経て香壇に上り
1148 322p 大塊能く容る無用の人
1149 322p 大湖闊しと雖も漁網遍し
1150 322p 大嶽削成す三万丈
1151 322p 背を晴簷に炙りて一たび欠伸す
1152 322p 負かざれ平生意気豪なるに
1153 322p 夕陽に到らざれば人の知らざるを
1154 322p 夕陽纔かに斂り飛螢乱るるは
1155 322p 截下せる残箋軽ろしく棄つる莫かれ
1156 322p 棗心の小筆は牋に書すること細やかに
1157 322p 淙淙として寂寥に灑ぐ
1158 322p 淙淙として石矼を漱ふ
1159 322p 滄波両岸秋風起こり
1160 322p 灑ぎて吟窓に向かひて睡魔を破る
1161 322p 銛鋒を退すと雖も軽ろしく棄つる莫かれ
1162 322p 簌簌たる声中又た秋を送る
1163 322p 蟬は落日の山に喧し
1164 322p 蟬は槐樹に鳴くも韻猶ほ慳る

た・ち

1166 323p 惟だ黄麗のみ人意を解する有りて
1167 323p 惟だ寒流の埋め得ざる有りて
1168 323p 為に憐む雲外松巣の鶴の
1169 323p 起ちて看れば月は霜の若く
1170 323p 起ちて禅榻を尋ねて清風に臥す
1171 323p 起ちて点ず読書窓下の火
1172 323p 近ろ僧社の新蒲席に参じ
1173 323p 偶ま逢へる未見の奇書
1174 323p 偶ま坐して公事無く
1175 323p 高き処は元身を置くの地に非ず
1176 323p 忽ち屋瓦に跳び階苔に点ず
1177 323p 忽ち驚風に掀起せられ去り
1178 323p 忽ち玄 忽ち素にして斜曬に映ず
1179 323p 忽ち風に吹かれ又た乱れ飛ぶ
1180 323p 忽ち風に吹き去らる
1181 323p 忽ち忘る皎月明河の夜
1182 323p 忽ち有り樵舟の峡を穿ちて下る
1183 323p 忽ち緑雲の只尺に生ずる有りて
1184 323p 縦ひ幽期有るも約を踐むこと難し
1185 323p 他の古狂と喚ぶに従はん
1186 323p 他の絶世の色を借りて
1187 323p 多事なり巣許の輩の
1188 323p 多少の残花猶ほ自ら開けばなり
1189 323p 多年の古竈 人煙断え
1190 323p 多累争でか能く散仙に比せん
1191 323p 多愧す故山の雲の
1192 323p 太倉の粟を啄まず
1193 323p 太白船に当たりて明は月に似たり
1194 323p 堕落す汚泥糞土の中に
1195 323p 退之馬を駆る八千里
1196 323p 隊隊の香魚往復して還る
1197 323p 大児小女総ベて相随ふ
1198 323p 大石は晴るるも猶ほ湿ひ
1199 323p 大唐の天子真に痴絶
1200 323p 大麓の風雷白日にも迷ひ
1201 323p 宅を相しては既に三遷す
1202 323p 沢畔帰漁に逢ひ
1203 323p 濁醪安んぞ得ん一杯の温を
1204 323p 只だ一片の石を餘すのみ
1205 323p 只だ寒燈の寂寞を憐れむ有りて
1206 323p 只だ言ふ凝神して坐馳せざるを
1207 323p 只だ古人の心を見る
1208 323p 只だ須く酔人を恕すべし
1209 323p 只だ世と疏なるに縁り
1210 323p 只だ白雲の裏に在り
1211 323p 只だ風裏の香を聞き
1212 323p 但だ見る双黄鳥の
1213 323p 但だ此の心をして平且つ正ならしめば
1214 323p 但だ幽香を認めて花を見ず
1215 323p 誰か謂ふ秦火き得たりと
1216 323p 誰が屋の孤燈か人未だ寐ねず
1217 323p 誰か奇品を伝へて浩然を養はしむ
1218 323p 誰か言ふ天上に白雲閑なりと
1219 323p 誰か言ふ猶ほ忘憂の物を獲たりと
1220 323p 誰か主人の心を問はん
1221 323p 誰か成さん五色天を補ふの功
1222 323p 誰か知らん永叟理餘の物にして
1223 323p 誰か知らん高臥の安くして
1224 323p 誰か知らん東帝回春の処は
1225 323p 誰か東海の水を将て
1226 323p 誰か能く此の緑陰を趁ひ来る
1227 323p 誰か也た賦を作るの才ぞ
1228 323p 誰か憐む孤帳塞檠の下
1229 323p 淡墨の寒林と濃墨の鴉と
1230 323p 短長意に随ひて緑なるを
1231 323p 端居物化を観
1232 323p 胆気は壮時自ら誇るに堪へたるも
1233 323p 断烟疏樹愁に堪へず
1234 323p 暖煙柳浦に迷ひ
1235 323p 男子徒死する莫かれ
1236 323p 男児志を立て郷関を出づ
1237 323p 地に蟠つて三州尽き
1238 323p 地隠は天隠に慙ぢ
1239 323p 地下若し知る有らば
1240 323p 池亭の驟雨乍ち来る時
1241 323p 池塘草色加はる
1242 323p 池風は緑水を行り
1243 323p 稚竹烟中に上り
1244 323p 竹を透かし藤を穿ちて各の光を競ふ
1245 323p 竹外に一星燈火明かし
1246 323p 竹外暗に香を聞き
1247 323p 竹梢の残月影微かに明るし
1248 323p 竹石と閑交を結ぶ
1249 323p 竹葉翠長じて寒ければなり
1250 323p 竹裏の両三家
1251 323p 竹裡の懸泉は石髪に濺ぎ
1252 323p 茶は則ち山に対して煮る
1253 323p 茶を煎ずれば雲榻を繞り
1254 323p 中宵風用過ぎ
1255 323p 中心何か有る不平の事
1256 323p 中天玉鏡を懸け
1257 323p 中峰の雨雪晴空に散る
1258 323p 仲宣が千古の恨を写さんと欲する
1259 323p 直ちに黄昏に到るも猶ほ未だ醒めざるを
1260 323p 直ちに総州に向かひて白雲と為る
1261 323p 唯だ禁酒の約を為すのみにして
1262 323p 唯だ古人に対するを喜ぶ
1263 323p 唯だ山の深きに入るを求めしは
1264 323p 唯だ有り夜猿の清き
1265 323p 唯だ烟中の琴を聞くのみ
1266 323p 唯だ缺く胸中灑落の人
1267 323p 澹然として道心を澄ましむ
1268 323p 臺上流耀澄み
1269 323p 蟲語庭に満ち元自ら楽しめるに
1270 323p 貪遊の客有るが為に
1271 323p 躊躇たり国を去るの情

ち・つ・て・と

1273 324p 燕は風簾を逐ひて入り
1274 324p 沓嶂は春の臨むを憶ひ
1275 324p 月に対して千古を思ひ
1276 324p 月は花梢に上り清影移り
1277 324p 月は鎌影を横へ亦た西還す
1278 324p 月は照らす鶺鴒原上の霜
1279 324p 月は白し蘆花浅水の秋
1280 324p 月は落つ文珠堂裏の鐘
1281 324p 月を踏みて夜山に帰る
1282 324p 月淡くして海棠陰し
1283 324p 月落ち人煙曙色分かる
1284 324p 月落ち梅花白し
1285 324p 作らず鴎波無節の枝を
1286 324p 手づから山色を招きて樽前に坐す
1287 324p 手は落紅を摘み心最も憐む
1288 324p 就きて将に捧飲せんとすれば手先づ亀す
1289 324p 終焉に其れ北邙
1290 324p 重陽過ぎし後小春の前
1291 324p 杖を投じては松根に倚る
1292 324p 杖を拄き来り尋ぬ老圃の家
1293 324p 早に無心の草木の知る有り
1294 324p 樗散素より甘んず布衣に終るを
1295 324p 朝陽梧桐有り
1296 324p 潮水帰来し人事改まり
1297 324p 蝶は翅の寛きが為に飛べば便ち舞ひ
1298 324p 蝶戱れ蜂遊びて山日斜なり
1299 324p 長橋一半星文を限る
1300 324p 長吟逸興に乗じ
1301 324p 長風忽ち嶽雲を払ひ来る
1302 324p 長林は午なるに昏からんと欲す
1303 324p 長蘿蛇足伸ぶ
1304 324p 鳥語は皆な天籥
1305 324p 鳥雀林を出でて鳴く
1306 324p 直語何ぞ綺を容れん
1307 324p 墜葉紛粉として林月鳴り
1308 324p 墜葉紛紛として笠を撲ちて鳴り
1309 324p 通宵睡を攪して百憂牽く
1310 324p 釣を罷め誰が舟か釣磯に傍ふ
1311 324p 釣を北池の潯に垂る
1312 324p 鶴は蘋渚に当たりて立ち
1313 324p 亭亭何の似る所ぞ
1314 324p 庭院人無く春昼永く
1315 324p 挺然として善く俗に鍳たり
1316 324p 鄭老蘭を画きて土を画かず
1317 324p 釘頭土を穿つも看て認め難く
1318 324p 的皪たる梅花濃淡の外
1319 324p 鉄劃銀鉤亦た珍とするに足る
1320 324p 典型千古沂公有り
1321 324p 天に連なりて忽ち下る深川の水
1322 324p 天は故らに清閑を与ふ
1323 324p 天を挿して八葉重なる
1324 324p 天恩只だ林間に在ること久しく
1325 324p 天下の事を談ぜず
1326 324p 天橋の勝境是れ仙蹤
1327 324p 天公も亦た吾が生を怜むや否や
1328 324p 天公応に梅花の笑を買ふべく
1329 324p 天公更に游戯し
1330 324p 天工削出して玉蓮崇く
1331 324p 天質自ら此くの如く
1332 324p 天真自ら楽しむを知り
1333 324p 天晴れて水影深し
1334 324p 天地の間に俯仰するに
1335 324p 天地は幾滄桑ぞ
1336 324p 天地は逆旅のみ
1337 324p 天地は窮途に哭く
1338 324p 天地始終無く
1339 324p 天地双蓬鬢
1340 324p 天長く漠漠として空し
1341 324p 天風桂花を落とす
1342 324p 天風髪を吹き飛雪の如く
1343 324p 天方寸をして虚舟に似せしめ
1344 324p 点点として吟衣に滴る
1345 324p 点点として波に随ひて浅灘を下る
1346 324p 田洫は漣影を分かち
1347 324p 登高能く賦すは今誰か是れなる
1348 324p 凍月一痕白し
1349 324p 凍鼓は声を成さず
1350 324p 東海に名葩有るを知らざればなり
1351 324p 東岸と西岸と
1352 324p 東君我をして遺賢を訪はしむ
1353 324p 東山に高臥するは謝公に異なり
1354 324p 東西に馳逐して白頭に到る
1355 324p 東窓に日の生ずるを待つ
1356 324p 東村又た西郭
1357 324p 東南の向背の山を画き出だせり
1358 324p 東臺の春色漸く冲融せり
1359 324p 桃花水暖かにして軽舟を送り
1360 324p 桃花多き処是れ君が家
1361 324p 桃花路を夾みて頭を回らさず
1362 324p 桃李紛紛として流水来り
1363 324p 燈火数ば油を添へ
1364 324p 燈花鉄檠に墜つ
1365 324p 燈痕夢影夜初めて涼し
1366 324p 当心一抹の檀
1367 324p 到処郷と為し情を忘る
1368 324p 陶鶏瓦犬は世間に多し
1369 324p 陶然として偶酔を成せば
1370 324p 毎に山川を歴て収拾し帰り
1371 324p 枕山の楼は峡猿の声に入る
1372 324p 露を帯びて葵葉を烹る
1373 324p 濤声地を動す北溟の風
1374 324p 笻を停め惆悵して斜揮に立つ
1375 324p 筇に倚り随処に潺湲を弄す
1376 324p 躕を隔てる燈火は螢より小さく

と・な・に・ね・の

1378 325p 為す有る者は必ず為さざる有り
1379 325p 遠く塞土の客と為る
1380 325p 何ぞ解嘲を著するを須ひん
1381 325p 何ぞ怪まん瑰奇は石も亦た稀なる
1382 325p 何ぞ閑愁を著けて酒壷に対せん
1383 325p 何ぞ及ばん閑人の閑餘り有りて
1384 325p 何ぞ塵累の侵すを嫌はん
1385 325p 何ぞ曾て意を用ひて尫羸を患へん
1386 325p 何ぞ知らん老拙都べて事無く
1387 325p 何ぞ当に祖龍の手を倩ひ得て
1388 325p 何ぞ必ずしも行路難からん
1389 325p 何ぞ必ずしも斯の時主人を問はん
1390 325p 何ぞ妨げん吟朋少なきを
1391 325p 何に由りてか俗情を洗はん
1392 325p 何に由りてか碧山に栖むと
1393 325p 何の策ありてか幽愁を破らん
1394 325p 何を以てか坤乾を正さん
1395 325p 何物か盂盤に上る
1396 325p 願はくは塵世の累を辞し
1397 325p 根を移して禁城に入るを
1398 325p 歳去り歳来るも徒らに詩を詠むのみ
1399 325p 歳晩るるも吾は奔走の人に非ず
1400 325p 采りて枕中の宝と作し
1401 325p 時に看る蛛絲の小軒を度るを
1402 325p 時に好句を吟じて友を迎へ
1403 325p 時に詩句を将て磨礱を費す
1404 325p 時に晴窓を掃ひ手づから墨を磨し
1405 325p 時に西山の翁と
1406 325p 時に亦た飛来して酒の中に帆す
1407 325p 時に吏人に問はる
1408 325p 時有りて還た独り酌む
1409 325p 時有りて人酒を送りければ
1410 325p 斜に千竿に入り一径通じ
1411 325p 人情の疏密は病中に知る
1412 325p 図書三百六十日
1413 325p 図書堆裏に微躬を托し
1414 325p 図南の鵬翼何れの時にか奮はん
1415 325p 睡を貪る鳧離は猶ほ母に傍ひ
1416 325p 説くを休めよ先生 生計拙と
1417 325p 長く他人に菀枯を問はるるを免れん
1418 325p 長く幽人と臭味同じ
1419 325p 鳥は晩晴を喜びて鳴く
1420 325p 鳥は未だ喬きに遷らず花は未だ開かず
1421 325p 庭に閑花有りて秋自ら好く
1422 325p 泥を掀げし土筆は競ひて芽を抽んづ
1423 325p 徒杠は落漲の痕
1424 325p 渡口の漁家将に夕照ならんとし
1425 325p 都下の事を解せざるを
1426 325p 東風は唯だ此の梢頭に在るのみ
1427 325p 東風処処に楊花を起こす
1428 325p 東隣酒賒すベし
1429 325p 藤蔓頹牆を補ふ
1430 325p 同袍友有り自ら相親しむ
1431 325p 銅瓶手づから挿す一枝の花
1432 325p 得失唯だ応に寒翁に問ふべし
1433 325p 得失両ら相忘る
1434 325p 独居却つて禅に似たり
1435 325p 独行踽踽として誰が門にか向かふ
1436 325p 独坐無聊早に扃を掩ふ
1437 325p 独坐幽姿を歎ず
1438 325p 独酎無卿を慰む
1439 325p 独立して原競ふ無く
1440 325p 読書の臭味は未だ全くは無からじ
1441 325p 読書万巻始めて神に通ずと
1442 325p 南郊十里帰程に向かひ
1443 325p 南人遠く寄す白醪酒
1444 325p 南畝農初めて勧め
1445 325p 南窓暇日塵牀を払ひ
1446 325p 南風吹き動かし水紋斜なり
1447 325p 南嶺の雲は北嶺の阿に迷ふ
1448 325p 南溟には煙波有り
1449 325p 二物偏へに能く勲を策す
1450 325p 日午寂として人無く
1451 325p 日夕秋声を起こす
1452 325p 寧ぞ若かん晴潭に落花を吹くに
1453 325p 年寿幸ひに回の短きを過ぎ
1454 325p 農談して且つ頰を緩む
1455 325p 波に垂るるに老柳無く
1456 325p 半ばは苔径に奔り半ばは空に翻へる
1457 325p 飛ぶを学びし燕子は已に巣を離る
1458 325p 眠らずして愁夜永く
1459 325p 眠少なくして夢偏に多し
1460 325p 眠醒め香燼え茶熟し
1461 325p 眠来りて枕に就くも未だ安穏ならず
1462 325p 友を携へ同に登る江上の楼
1463 325p 猶ほ花市を尋ねて閑銭を擲つを
1464 325p 猶ほ看る痴雲の未だ晴を放たざる
1465 325p 猶ほ間愁の拋ち得ざる有りて
1466 325p 猶ほ残芳を覓めて晩煙を度る
1467 325p 猶ほ楼上の夜を貪り
1468 325p 留まりて人間に住して嬾仙と作る
1469 325p 嫩荷水に粘きて水池に盈ち
1470 325p 嫩涼生ずる処影婆娑たり
1471 325p 蠹残の東坡の策
1472 325p 歲寒くして伴有るは果然として是れ

の・は

1474 326p 果たして看る蜻蛉は是れ
1475 326p 花に濺ぎ仍ほ柳に濺ぎ
1476 326p 花は屏障たり草は茵たり
1477 326p 花は籬柵に開く秋
1478 326p 花は顚狂を作して午風を逐ひ
1479 326p 花を移すは婦と共に謀る
1480 326p 花を看て少年を惜しむ
1481 326p 花を著くるは稀疏と雖も
1482 326p 花開けば万人集り
1483 326p 花尽くるも牀頭に夢尚ほ香し
1484 326p 花尽くれば一人も無し
1485 326p 花痩せ蝶来る少なく
1486 326p 花有りて此の地久しく君を留む
1487 326p 花落ちて黄泥に委ぬ
1488 326p 花落ちて吟榻を樸つ
1489 326p 花落ち鳥啼き春昼閑なり
1490 326p 花落つるも水心無し
1491 326p 始めて悟る真源は行き到らざるを
1492 326p 始めて識る従前鹵莽に過ぎ
1493 326p 始めて消えざる雪を餘す
1494 326p 春に問ふも春語らず
1495 326p 春の帰る処を迹ねんと欲し
1496 326p 春は落花の為に秋は墜紅に
1497 326p 春回るも是れ拝趨の身ならず
1498 326p 将た謂ふ南郊は春已に闌きたりと
1499 326p 絶だ月下に看るに勝れり
1500 326p 濃淡新林に靄す
1501 326p 農談は几筵に接す
1502 326p 波際の連檣影動揺す
1503 326p 破屋蕭閑自ら真を養ひ
1504 326p 破家今我帰夢無く
1505 326p 破窓寒は徹す五更の風
1506 326p 芭蕉に上らんと欲するも自由ならず
1507 326p 芭蕉の大葉は乱旗のごと青し
1508 326p 背指す孤鴻没せんとするの頭
1509 326p 背毛は軽黒に腹毛は白く
1510 326p 梅花の時節尚ほ春寒なればなり
1511 326p 梅花の面を見んと欲し
1512 326p 梅花月を帯び一枝新なり
1513 326p 梅花地に墜つれば枝に上らず
1514 326p 梅月嬋娟として夜を奈何んせん
1515 326p 梅枝幾処か籬を出でて斜に
1516 326p 梅時雨を喜ぶは只だ蝸牛
1517 326p 梅窓に巻を掩へば日将に西せんとす
1518 326p 売餘の鉄崖の詩
1519 326p 白雲客を引きて山巔に到る
1520 326p 白雲紅葉千山に満つ
1521 326p 白雲山上白雲飛び
1522 326p 白雁は高く飛び月に声有り
1523 326p 白首故人非なり
1524 326p 白雪千秋に凍る
1525 326p 白扇倒まに懸く東海の天
1526 326p 白日西流して老を奈何んせん
1527 326p 白髪の遺臣楚辞を読む
1528 326p 白髪は青陽に慚づ
1529 326p 白髪も亦た多情
1530 326p 白髪乾坤新なり
1531 326p 白蘋紅蓼は定めて何れの灘ぞ
1532 326p 薄俗は我に与らず
1533 326p 薄飯と麤茶と飽くこと多からず
1534 326p 薄暮に庭芳に対す
1535 326p 八尺の身材曲がりて弓に似たり
1536 326p 八朶の芙蓉面に当たりて開く
1537 326p 八朶斉しく開き各の雄を競ふ
1538 326p 半年餐ひ飽く露華の白
1539 326p 半夜酒醒め人見えず
1540 326p 半夜幽懐誰に向かひてか説かん
1541 326p 半輪の明を惜しまんと欲す
1542 326p 半簾の斜月水よりも清く
1543 326p 半牀の涼影満簾に明らかなるを
1544 326p 半鐺の活水に団黄を瀹
1545 326p 繁英下に向かひて幽香を発す
1546 326p 飯後近来眠るを例と作し
1547 326p 晩間の一雨暑纔かに醒め
1548 326p 晩際門を俺ひて債主を防ぎ
1549 326p 晩風竹を穿ちて細かく
1550 326p 晩来何者ぞ門を敲き至るは
1551 326p 晩来転た細微
1552 326p 晩饌は猫頭を薦む
1553 326p 盤中軽く転ず珊瑚の燼
1554 326p 盤礡衣裳を解き
1555 326p 蛮国を征せんとするも未だ成功せず
1556 326p 放ちて江流に入れば喜知るべし
1557 326p 蜂は愁ひ鶯は恨む薫風の裡
1558 326p 蜂狂い蝶乱るるは若為んの情ぞ
1559 326p 万巻風塵に老ゆ
1560 326p 万頃の烟波誰か是れ主なる
1561 326p 万重の心事は竟に徒然
1562 326p 万水各の影を分かち
1563 326p 万層の雪底に歳寒の心
1564 326p 万里秋天碧し
1565 326p 万里舟を泊す天草の洋
1566 326p 万緑合する辺孤島隠れ
1567 326p 万壑寒風転じ
1568 326p 万錢価を論じ豈に高しと言はんや
1569 326p 緬に想ふ山中の人
1570 326p 葉は簾櫳に墜つる夜
1571 326p 遥かに知る楽郊の客の
1572 326p 梁に巣くふ乳燕は母を相呼び
1573 326p 林は白く四隣鷄已に鳴き
1574 326p 林深く鳥集る多し
1575 326p 愧づらくは悔い来ること遅く只だ自ら憐れむを
1576 326p 潘岳聞き来りて鬢応に雪なるべし
1577 326p 翮を挙ぐれば四隅に触る

ひ・ふ
1579 327p 一たび去りて風雲応に日有るべし
1580 327p 一たび思ふ少年の時
1581 327p 臥して看る流螢の縁苔に点ずるを
1582 327p 臥して見る微風の竹梢を度るを
1583 327p 久しく松桂の盟に負き
1584 327p 久しく待つ扶摇万里の風を
1585 327p 舟は已に螺を吹きて去り
1586 327p 深く掩ふ竹間の扉
1587 327p 人に向かひて復たとは窮忙を説かず
1588 327p 人に枉げて秋を恨むの声と作さる
1589 327p 人の曲節を添ふるを恐る
1590 327p 人の離下に傍ふを嫌ひて
1591 327p 人の憐むを乞はず祇だ自ら憐む
1592 327p 人は屋後より橋を過ぎ去り
1593 327p 人は河清を俟つも寿 幾何ぞ
1594 327p 人は言ふ行路難しと
1595 327p 人は今老大を忘れ
1596 327p 人は識らむ当年の圯上の翁なりしを
1597 327p 人は垂柳の村に帰る
1598 327p 人は方に閘を放ちて来る
1599 327p 人到る無き処善く眠を呼ぶ
1600 327p 人来りて戯鳥没し
1601 327p 吹きて万点を飄す後山の風
1602 327p 吹きて薜蘿の衣に入る
1603 327p 吹き送る叡山雲裏の鐘
1604 327p 吹き到るは幾番の花信風ぞ
1605 327p 船遠く間間として去り
1606 327p 船渡りて緑萍沈む
1607 327p 踏み遍し紅叢と緑蕪と
1608 327p 独り空田を守る老案山
1609 327p 独り見る貪心有るを
1610 327p 独り昏迷せる蝶の未だ醒めざる有り
1611 327p 独り星間の鏡を以て
1612 327p 独り東遊の客と作り
1613 327p 独り風林に臥すれば睡味長く
1614 327p 独り怜む細菊荊扉に近きを
1615 327p 日は出づ扶桑東海の隈
1616 327p 日は落ちて山光近く
1617 327p 日は落ち香臺帰鳥閑かに
1618 327p 日びに白雲と侶となり
1619 327p 日出でて興き 日入りて眠る
1620 327p 日長くして垂柳は三眠す
1621 327p 日日江村酒もて飲を極む
1622 327p 日暮るれば自ら帰来す
1623 327p 日暮れて東風雨を吹くこと急なれば
1624 327p 悲歌して玉壺を叩く
1625 327p 比隣も尽く豪華ならん
1626 327p 飛雲は脚底を過ぎ
1627 327p 微影上弦の月
1628 327p 微吟歩を移して横斜を踏む
1629 327p 微月光斜にして河漢澹く
1630 327p 微酔餘年を楽しむ
1631 327p 微白東に生ずる処
1632 327p 微蟲細草名を知らず
1633 327p 眉雪の老僧時に帚くを輟め
1634 327p 美蔭聊か娯むべし
1635 327p 筆研に任すの餘は一も堪へず
1636 327p 百尺簷に沿ひ翠羅を展べ
1637 327p 百難身を侵すも身未だ死せず
1638 327p 百年の人壽飄挨に似たり
1639 327p 百年の日月流電の如く
1640 327p 百年の風月 独り精神
1641 327p 百年は一夢の間
1642 327p 百年其れ奈何ん
1643 327p 百納の琴は膝に横へて弄し
1644 327p 百里毫芒を見る
1645 327p 百両の黄金何ぞ換ふべけん
1646 327p 百卉は茵の如く脚の過ぐるに任す
1647 327p 氷柱幾条ぞ垂れて地に到る
1648 327p 廟謨終に若何んぞ
1649 327p 病身別事無く
1650 327p 病餘猶ほ酒を止めたれば
1651 327p 婦子朝来甑麈を掃ひ
1652 327p 富貴なるも驕色無く
1653 327p 扶桑の六十州
1654 327p 浮雲一片扁舟に落つ
1655 327p 浮雲岫を出でて幾時か還る
1656 327p 浮生一病身
1657 327p 浮生懶散君怪しむを休めよ
1658 327p 楓落ちて遺錦無く
1659 327p 楓楫霞浜に泛ぶ
1660 327p 風月閑懐詩一嚢
1661 327p 風光惨憺たり海の潯
1662 327p 風枝栖めども穏かならず
1663 327p 風趣は纔かに存す酒味の中
1664 327p 風色坐来にして休み
1665 327p 風塵に来往す多少の客
1666 327p 風塵一草堂
1667 327p 風霜文字の気を消受したれば
1668 327p 風物を静観して年の遷るに感じ
1669 327p 風流自ら覚ゆ更に清奇なるを
1670 327p 風盧は蟹眼を烹
1671 327p 風簷 樹葉を翻し
1672 327p 仏天は平等大慈悲にして
1673 327p 物態は沙を摶めるに似
1674 327p 物理の是非は閑裡に得
1675 327p 偏に王孫墓上に傍ひて多し
1676 327p 無事の閑人二老に慙づ
1677 327p 俯しては潭水の清きを憐み
1678 327p 緡尽きて運深きを覚ゆ
1679 327p 霏霏として微雨斜なり
1680 327p 霏霏漠漠として更に紛紛たり
1681 327p 飄蕭す有鬢の一頭陀
1682 327p 麋鹿朝に伏する攸
1683 327p 閩洛に君子有り

ふ・へ・ほ・ま・み
1685 328p 蒲団行処に具へ
1686 328p 還た雲漢の津に浮かぶ
1687 328p 還た竹裡の門を尋ぬ
1688 328p 湖は際す寺門の東
1689 328p 骨の聳なるは更に嶙峋たり
1690 328p 骨を埋むるに何ぞ期せん墳墓の地
1691 328p 自ら以て大廈と為す
1692 328p 自ら笑ふ休すべきに 休未だ得ざるを
1693 328p 自ら信ず君に対して愧色無きは
1694 328p 自ら珍とす斯の癖は古今に無しと
1695 328p 自ら天慵を縦まにして世と疏なり
1696 328p 自ら無用に甘んじ柴関に臥す
1697 328p 自ら憐れむ酒量年に随ひて減じ
1698 328p 自ら嗤ふ新茗功を呈せざるを
1699 328p 従す它の軟脚にして行歩し難く
1700 328p 松を穿ち竹を繞りて庭前に到る
1701 328p 信なるかな君子の名
1702 328p 信なるかな古人の言
1703 328p 水到らば渠は自ら成る
1704 328p 水有れば月来り宿し
1705 328p 星見えて樹梢昏し
1706 328p 正に是れ悟桐落葉の声
1707 328p 先づ添ふ園中の趣
1708 328p 先づ明珠百斛を擲ち来る
1709 328p 窓を開きて青山に対すれば
1710 328p 窓を開くれば残月中庭に満つ
1711 328p 貧しくして知る風月相違はざるを
1712 328p 瓶水に時に影を移し
1713 328p 浮名竟に衣を払ふ
1714 328p 封疆長く酔郷と分かたん
1715 328p 復たとは紅塵の此の翁を侵す無し
1716 328p 復たとは残紅の苔に糝する無し
1717 328p 分に随ひ自ら知る適意多きを
1718 328p 分明なり水墨もて瓊姿を写す
1719 328p 分明に看るは是れ真か画か
1720 328p 噴前満地草苔湿ふは
1721 328p 紛粉として桃李低し
1722 328p 文拙にして後世に伝へ難く
1723 328p 平生の長処は催だ一を餘すのみ
1724 328p 平生の憂苦の為に移さず
1725 328p 平生三蕉葉に過ぎざるに
1726 328p 平生著るに慣る木綿の裘
1727 328p 平湾無数青螺を点ず
1728 328p 壁上徐かに飄ふ篆隷の煙
1729 328p 碧海の中央六里の松
1730 328p 碧漢黄鶴遥かに
1731 328p 碧天に向かひて玉笛を吹かんと欲すれば
1732 328p 別に杞憂の在る有り
1733 328p 瞥見す大魚の波間に躍るを
1734 328p 片石も深山の如し
1735 328p 片石玲瓏たり浅瀬の中
1736 328p 鞭声粛粛夜河を過り
1737 328p 歩は清影を牽きて遠く
1738 328p 歩は流水に随ひて源泉を覓め
1739 328p 墓碑猶ほ競ふ石の高低を
1740 328p 暮雲長く山径を繞り
1741 328p 暮煙遠村を分つ
1742 328p 暮靄纔かに収まり片月残り
1743 328p 峰巒洞穴 神工を具ふ
1744 328p 抱膝 思悠たるかな
1745 328p 抱痾も亦た自ら好く
1746 328p 捧持して毎日餘香を拝す
1747 328p 放歌し還た独往するは
1748 328p 方書薬物生涯と作す
1749 328p 方寸淡として水の如し
1750 328p 法螺法吹き落とす中峰の月
1751 328p 芳槿は敷栄するも只だ片時のみ
1752 328p 望尽す青山の水流に傍ふを
1753 328p 北辰直下に銅標を建てん
1754 328p 北邙山上暮鴉啼き
1755 328p 殆んど是れ宝山に手を空しくして回る
1756 328p 奔競は固より已に厭ふも
1757 328p 枕を側て中宵独り惨然たり
1758 328p 亦た高逸を心すること無し
1759 328p 亦た人の毁るを畏れず
1760 328p 又た何れの山の石上に向かひてか眠る
1761 328p 又た窮鬼と偕に徂年を餞る
1762 328p 又た此の心の頑を作す
1763 328p 満園藉くが如く淡煙籠む
1764 328p 満眼唯だ氷玉
1765 328p 満渓の螢火香黄に乱れ
1766 328p 満江の明月満天の秋
1767 328p 満山の花影は淡く将に無からんとす
1768 328p 満室の蒼蠅掃へども去り難し
1769 328p 満身の花影南朝を夢む
1770 328p 満身の疏影清きこと水の如く
1771 328p 満身還た白雲を帯びて帰る
1772 328p 満窓の秋影涼洗ふが如く
1773 328p 満窓の晴日鶯を聴きて眠る
1774 328p 満袖の霜華雪の如く白く
1775 328p 満地の青苔点塵無し
1776 328p 也た杏花に入りて去る
1777 328p 扁舟五湖の興を動かして
1778 328p 扁舟住らず天水の如し
1779 328p 茉莉の細花は涼雪のごと白く
1780 328p 茉莉花開き満院香し
1781 328p 蹣跚たる酔歩人の扶くるに任せ
1782 328p 簠を出づる藍珠は晩面を煮たるなり

み・む・め・も・や・ゆ
1784 329p 以て菊と蘭とを栽う
1785 329p 眼 已に昏昏として鬢已に絲なり
1786 329p 眼は驚く歳月暫時に遷るを
1787 329p 眼は新緑を看て情頼る無く
1788 329p 空しく嗟す芳餌の下
1789 329p 元是れ洛陽城裡の花なるに
1790 329p 最も喜ぶ清宵燈一点
1791 329p 山に登りて山を写かんと欲するも
1792 329p 山に登るは恰かも似たり書生の業の
1793 329p 山に傍ひ水に沿ひ路攲斜し
1794 329p 山の半腹に躋攀し
1795 329p 山は仙女の如く臞せて逾よ好く
1796 329p 山は白頭ならざるに人は白頭なるを
1797 329p 山を愛しては頻りに門を出で
1798 329p 耳は鳴りて常に蝉を聴く
1799 329p 自ら笑ふ春を嬉しみ情未だ尽きず
1800 329p 若し人間の名利の事を問はれなば
1801 329p 身は痩せて蝨を生ぜず
1802 329p 身を世外に寄せ荊扉に臥す
1803 329p 水に浴する間 鴎は人を避けず
1804 329p 水に臨み扉を掩ひし三四家
1805 329p 水は空江に落ち澹として流れず
1806 329p 水は蹊頭に到りて竹を穿ちて通ず
1807 329p 水は䆳渓に出で雲は岫に出で
1808 329p 水を汲み芳茶は自ら煎る
1809 329p 水を渡り林を穿ち往き又た還る
1810 329p 水下り斜陰砕け
1811 329p 昔道ふ長安は弈棊に似たりと
1812 329p 村村の喧鼓 秋成を賽す
1813 329p 病みては覚ゆ婦の言の還た聴くべきを
1814 329p 病みて筆耕墨鋤を廃す
1815 329p 物小なれば識も亦た微にして
1816 329p 漫りに仙集を求めて蓬溟を究む
1817 329p 妙は有無の間に在り
1818 329p 妙香は風を逆へんと欲し
1819 329p 妙処豈に説き易からんや
1820 329p 妙年君楽しまざれば
1821 329p 夢裏の清遊は行く意に愜ひ
1822 329p 夢裡に山鶏暁天を報ず
1823 329p 夢裡忽ち疑ふ風雨至るかと
1824 329p 無限の春風恨未だ消えず
1825 329p 無限の風光誰か買ひ得たる
1826 329p 無心に碧蘿縈る
1827 329p 無数の深花自ら落ち
1828 329p 冥棲 春已に闌き
1829 329p 名節清時に乏しく
1830 329p 名帖双鉤字画昏し
1831 329p 名利を求めず貧を憂へず
1832 329p 明月新たに懸かる万里の流
1833 329p 明時何ぞ用ひん麒麟に画かるるを
1834 329p 明窓と浄几と
1835 329p 明窓に暗雨を聞き
1836 329p 明朝下らんと欲す 巌前の路
1837 329p 明朝去りて水雲の身と作る勿かれ
1838 329p 明朝又た来り飲め
1839 329p 明日君醒むる処には
1840 329p 綿衣と藤杖と竹皮冠となり
1841 329p 模糊たる花影窓櫺に上る
1842 329p 目前如し遣るべくんば
1843 329p 目送す鴈行の連なるを
1844 329p 門は澗流の清きに対す
1845 329p 門を設くるも常に掩はず
1846 329p 門を入り先づ問ふ花恙無きやと
1847 329p 門巷蕭条として夜色悲しく
1848 329p 門前時に蟲を売り過ぐる有り
1849 329p 門前不尽の流水
1850 329p 夜雨に青燈五十年
1851 329p 夜気亡びず心自ら清し
1852 329p 夜寂従来昼喧に勝れり
1853 329p 夜色岩楼に満つ
1854 329p 夜半雲来るも窓は知らず
1855 329p 夜蛬は孟郊のごと寒し
1856 329p 野営も亦た解す春を尋ぬるの意
1857 329p 野煙に衣は青を帯ぶ
1858 329p 野水一渓鴎鷺間なり
1859 329p 野老相逢ひ若し相問はば
1860 329p 野雉人に驚きて起こり
1861 329p 野鶩泥溝に拠り
1862 329p 野蔌山肴有る所に従ひ
1863 329p 薬名却つて病多の為に諳んず
1864 329p 薬欄風暖かく花に背きて眠る
1865 329p 薬塢に鋤を携ふれば風始めて暖かく
1866 329p 薬盧煙断えて紙窓虚に
1867 329p 柳を隔つ香羅は雑沓して過ぎ
1868 329p 幽園は日に渉るを欣ぶ
1869 329p 用ひず人間の是非を説くを
1870 329p 用ひず名園数畝の寛
1871 329p 緑は薬欄の苗を挺んづ
1872 329p 緑は揺らぎ黄は綻び春柔を弄し
1873 329p 嶺は環る村落の北
1874 329p 路は炎暑を逃れ叢筠に入る
1875 329p 路は迷ふ春草池塘の雨
1876 329p 路は羊腸に入り石苔滑かに
1877 329p 浪りに説く書を読み聖賢を学ぶと
1878 329p 已みぬ腰間の剣
1879 329p 暝色遠く天末より至り
1880 329p 朦朧たる月色有無の中
1881 329p 稍や憐む中夜の夢の
1882 330p タには江潮の㵼ぐを怕る

ゆ・よ・ら・り

1884 330p 因りて憶ふ去年此の節に当たりては
1885 330p 往きて到る杳冥の中
1886 330p 喚びて清時の一逸民と做す
1887 330p 喜び得たり園居夏と宜しきを
1888 330p 欣びて聞く香韻の遠く風に随ふを
1889 330p 呼びて作す驚風騒雨の天
1890 330p 鯉魚風は起こる江頭の晩
1891 330p 好し便腹を摩して桑麻を話せん
1892 330p 行きて源頭に到れば却つて惘然たり
1893 330p 行きて山家に到れば午正に分し
1894 330p 行きて野水の源を窮む
1895 330p 行きて野水の源を窮む
1896 330p 行き尽す自雲裡の路
1897 330p 行くに車馬無く首に冠無し
1898 330p 所以に古の達者は
1899 330p 所以に美酒を飲み
1900 330p 酔ひて醺然に至り各の肱を曲ぐ
1901 330p 酔ひ来りて試みに青筠の杖を握れば
1902 330p 世に処しては贏つ所は唯だ白髪
1903 330p 世を挙げて孤寒を忌むも
1904 330p 逝く者は奔波に似たりと
1905 330p 逝く者は已に水の如し
1906 330p 雪は山堂を擁して樹影深く
1907 330p 雪は白し比良山の一角
1908 330p 雪は紈素の如く煙は柄の如し
1909 330p 雪を帯びて未だ全くは別たず
1910 330p 漸く覚ゆ陽和遍く
1911 330p 読みて奇文会心の処に到れば
1912 330p 能く寒士の寒に伴ふ
1913 330p 能く此の曲を聴くは幾人か多き
1914 330p 能く山中の意を解せり
1915 330p 能く饑寒を忍ぶは人に譲らず
1916 330p 夢は断ち山房夜更に長く
1917 330p 夢は破れ山村夜未だ央ばならず
1918 330p 夢は落つ湘江の曲に
1919 330p 夢無くして魂の清きを覚ゆ
1920 330p 尤物多きを須ひず
1921 330p 夜は閑窓に坐して茶を喫す
1922 330p 夜寒くして頭は更に重く
1923 330p 夜深けて人は龍燈の出づるを待ち
1924 330p 夜涼しくして時に風に吹き墜とされ
1925 330p 輸す他の一領の縁簑衣に
1926 330p 幽を愛するは一癖と成り
1927 330p 幽花古柏に間り
1928 330p 幽禽睡熟す碧巌の前
1929 330p 幽襟偶爾小窓に凭る
1930 330p 幽径草濡れ残滴少なく
1931 330p 幽香は孤鶯の宿するを待つに似
1932 330p 幽寂人の問ふ無く
1933 330p 幽情一片人の知る少に
1934 330p 幽窓に書を読むを罷め
1935 330p 幽窓友を延き玄を談ずるを助めん
1936 330p 幽庭の夜色餘清有り
1937 330p 幽夢初めて回りて五更に近し
1938 330p 幽篁一丘を分かつ
1939 330p 幽逕千竿の竹
1940 330p 悠然として意自ら楽しむ
1941 330p 悠然として人に背きて去る
1942 330p 由来心の画は
1943 330p 遊禽来往す落花の辺
1944 330p 容華駒隙の如し
1945 330p 庸工の刻削を加ふるを免れ得て
1946 330p 揚揚たる意気春風に駕す
1947 330p 楊紀をして海棠に比せしめざりしに
1948 330p 葉間に累累として蝟毛青く
1949 330p 来人の屐を著けざるは
1950 330p 雷を駆り雨を行るは徒だ辛苦
1951 330p 雷用中宵に起こり
1952 330p 絡緯声中夜書を読む
1953 330p 落花枝上に声を停めず
1954 330p 落花深き処南朝を説く
1955 330p 落花簾外日低るること遅く
1956 330p 落日雲を看て独り欄に倚る
1957 330p 落日山外の樹
1958 330p 落筆但だ新を要す
1959 330p 落落たり長松の下
1960 330p 乱石雲を排して自在に横はる
1961 330p 乱竹窓を敲きて晩に声有り
1962 330p 蘭は君子の佩と為し
1963 330p 利名の第一関を踰えんと欲す
1964 330p 利名情或は牽く
1965 330p 梨花彫を弄し白層層
1966 330p 流景坐ろに暮と為り
1967 330p 流水と落花と
1968 330p 流水斜陽を帯ぶ
1969 330p 流水人を撩りて洞口に迷ひ
1970 330p 流水桃花を隔つ
1971 330p 六旬猶ほ老親に事ふ
1972 330p 六籍共に儼然たり
1973 330p 慵臥元病に非ず
1974 330p 懶は知る省事の方なるを
1975 330p 懶睡も応に尸素の責無かるべし
1976 330p 懶性唯だ酒に耽り
1977 330p 杳然として去りて顧ず
1978 330p 瑶琴弾じ罷みて雲は戸を窺ひ
1979 330p 瑶草漸く階を侵し
1980 330p 籬下の黄菊は地に委すること多し
1981 330p 蘿月落つる時潭水澄む
1982 330p 蘿窓を啓かんと擬して又た復た関す

り・れ・ろ・わ
1984 331p 履歴は羊腸転ず
1985 331p 離離として竹実赤し
1986 331p 流星光底に長蛇を逸せんとは
1987 331p 龍剣霜を凌がんと欲す
1988 331p 龍跳虎臥又た鸞騰
1989 331p 両岸の秋風二州を下る
1990 331p 両両 犢 塘を過ぐ
1991 331p 凌霄一万三千尺
1992 331p 梁王は葅醢淮陰は戮せられ
1993 331p 涼は水源の村に在り
1994 331p 涼は水源の村に在り
1995 331p 涼は前渓の雨に送られ
1996 331p 涼を尋ぬるは何れの処か好き
1997 331p 涼を尋ぬるは何れの処か好き
1998 331p 陵谷頻りに遷る一酔の中
1999 331p 緑陰は暑消すに耐ふ
2000 331p 緑陰坐ろに改む餞春の詩
2001 331p 緑除深処に呼ぶを
2002 331p 緑水半巌の苔
2003 331p 緑苔の痕を破るを恐るればなり
2004 331p 緑髪も須臾に白からむ
2005 331p 緑綺の琴緑水の歌
2006 331p 林間には自ら囀る黄鳥
2007 331p 林間又た水辺
2008 331p 林居趣自ら長し
2009 331p 林日は紅梅を度る
2010 331p 林鳩声裡に午晴開き
2011 331p 林風は吹き倒す酒葫蘆を
2012 331p 林葉風に飄り瑟瑟として鳴り
2013 331p 臨水の館は江雁の翼に連なり
2014 331p 隣を卜せるは一度に非ず
2015 331p 嶺雲渓月枯禅に伴ふ
2016 331p 凛凛たる璚姿蒼玉の中
2017 331p 寥寥たり秋暮の天
2018 331p 蓼花半ば老ゆ野塘の秋
2019 331p 嘹嘹として犬は吠ゆ竹籬の竇
2020 331p 簾を隔つ啼鳥は誰か聴く
2021 331p 鎌府の牆に䦧ぐの心に同じからざればなり
2022 331p 冷笑す淵明の昨非を論ずるを
2023 331p 零砕たる二三冊のみ
2024 331p 霊苗毒草一斉に肥ゆ
2025 331p 連宵の情話交も悲喜し
2026 331p 櫪に伏すること看て此くの如く
2027 331p 露華野草に凝り
2028 331p 露臥す延元陵下の月
2029 331p 露気冷香を浥すを
2030 331p 露葉夢応に寒かるべし
2031 331p 楼上無心の白雲
2032 331p 狼藉として残花湿う
2033 331p 老屋雨蒸して木耳生ず
2034 331p 老懐世に於て渾べて味無く
2035 331p 老還長に羨む管寧の賢
2036 331p 老愁 葉の如く掃ふも尽き難く
2037 331p 老松は挺立して能く千歳
2038 331p 老松路を爽みて差参して出で
2039 331p 老晩強ひて扶けて此の遊を為し
2040 331p 老夫衰へて力無く
2041 331p 老来殊に覚ゆ山中の好きを
2042 331p 老来情味淡く
2043 331p 老来世事心と与に空しく
2044 331p 老鵵は幽岑に叫ぶ
2045 331p 論ずるを休めよ舟楫江湖険なりと
2046 331p 論ぜず鐘鼎と山林とを
2047 331p 爐を囲む六曲の紙屏風
2048 331p 蘆荻花飛び秋色老い
2049 331p 蘆蒲蛍は照らし水漫漫
2050 331p 隴麦 緑 雲の如し


2051 331p 矮籬風圧して牽牛掛かり
2052 331p 我が意閑澹に帰し
2053 331p 我が家の遺法人知るや否や
2054 331p 我に小葫蘆有り
2055 331p 我に先んじて前峰に到る
2056 331p 我に先んじて蟲声不平を訴ふ
2057 331p 我に有り一壷の酒
2058 331p 我は愛す一枝の桂
2059 331p 我は愛す海棠花
2060 331p 我は愛す小松樹
2061 331p 我は愛す水仙花
2062 331p 我は愛す数竿の竹
2063 331p 我は愛す堂後の柳
2064 331p 我は愛す白牡丹
2065 331p 我は愛す半池の蓮
2066 331p 我は愛す盆中の蘭
2067 331p 我は愛す緑芭蕉
2068 331p 我は愛す老梅の樹
2069 331p 我は愛す籬下の菊
2070 331p 我は一盃を挙げん君試みに歌へ
2071 331p 吾が口は曲を唱はず
2072 331p 吾が手は琴を撫せず
2073 331p 吾が心徒らに悲酸す
2074 331p 吾が廬に夏日無きは
2075 331p 吾は愛す平門の相宴楽するを
2076 331p 吾は人の誉むるを歓ばず
2077 331p 笑ひて答へず起ちて山を看る
2078 331p 笑ふに堪へたり詩人の野服と称するは
2079 331p 笑ふ他の眠柳我より懶にして
2080 331p 笑ふ莫かれ衰翁門を出づるに懶きを
2081 331p 儂が形影をして相離れざらしむ
2082 331p 纔かに一升を盛るに堪ふ
2083 331p 纔かに一顆に逢へば便ち瞩を凝らし
2084 331p 纔かに三杯に到りて酔ひて泥の如きを


2086 332p 我も亦た推蔽倦み
2087 332p 我を呼ぶに錯りて逃俗の客と為し
2088 332p 我を招き時時来りて欄に倚る
2089 332p 我を睡郷侯に封ず
2090 332p 腕脚雲の如く巻舒に任す




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